2、鮭夫先生の漫画の作り方

文字数 5,285文字

2日目以降の質問、1日目の質問へのお礼などはこちらにお願いします。


13日の座談会のメイン会場もこちらになります。


20時からスタートです


開始時間までにもご質問の書き込みは大丈夫です。
また、時折20時前に質問に回答することもあります。よろしくお願い致します。

改めまして、鮭夫先生ご回答ありがとうございます!


>最初の持ち込みの後5年間は、仕事でWEB漫画なども描きつつ、コミティアに参加していました。

仕事での連載を経て、締め切りのある中で継続的に原稿を描くことで、発想力や話の展開の練習になったと思っています。

コミティアで創作仲間にダメ出しされたりしつつ、仲間が次々にデビューしたりしていったのもいい刺激にはなった気がします。



お仕事の漫画を描きつつ、コミティア参加でご自分の創作を平行してされていたのですね。

お仕事として、しかもだからこそ締め切りのある中で継続的に描く中で、実地で実力を鍛えられたということでしょうか。

やっぱり、実践していく中でご自分で力をつけていかれたのですね・・・!

また、刺激を受けられる仲間の存在も大事そうですね~!

>最初の持ち込みの後5年間は、仕事でWEB漫画なども描きつつ、コミティアに参加していました。仕事での連載を経て、締め切りのある中で継続的に原稿を描くことで、発想力や話の展開の練習になったと思っています。


私もコミティアは連載前、連載中、連載後もずっと出ております。

あの場で自分の描きたいものと描けるもの、皆が望んでいるものを肌で感じるのがとても良いのではないかと思っていて、連載中には次の構想を練る場にもしておりました。
出張編集部もありますし、漫画編集さんが新たな作家さんを探している場でもあります。チャンスもあれば、自分の中の意欲の発散場としても有用ですので、まだ一度も行った事がない方は、年4回機会はありますし、是非、覗きに行ってみるといいかもしれません。

他の作家さんの作品から、ものすごい創作意欲ももらえますよ。

さて、20時になりました、本日も鮭夫先生よろしくお願い致します。
こんばんは鯖夫です!よろしくお願いします!


名前は別の魚でもよく間違えられるのでみなさん気にしないで下さい!(むしろおいしい)


作者は別にいいので作品の名前だけでも覚えて帰って下さいね!

(自虐的すぎる……)

さて、キャラクターの創作についてはお聞きしましたが、次はネームについてお聞きしてもよろしいですか?

ハァイ!
ありがとうございます。
鮭夫先生とスカイプしていたり、「ヒトミ先生の保健室」を読ませていただいていたりすると良く思うのですが、ほんとにしっかりネーム練っていらっしゃいますよね。
そのあたり、どのようにお話を作り出されているのでしょう?

読んでいただきありがとうございます…!


秘訣というか…むしろネームを描く秘訣は自分も知りたいくらいなんですけど!!


周りの漫画家内で「鮭夫先生ってなんであんなにネーム時間かかるの…?」とか言われてるという噂が…


それくらいネームに時間かかるし、かなり苦手意識ありますからね…!

ネームにお時間かかるという、お話は聞いてましたが、そうなんですね。でも、その分、非常に凝ったつくりのお話が展開されていると思います。

発想のネタもととかはどこからくるんでしょう? 映画がお好きというお話はよくお聞きするので、それも関係あります?

映画は割と好きな方だと思いますが、そういうところからはパロディやオマージュとしてのネタを引っ張ってくるくらいですかね…


ゾンビ回を描くときはかなり引用しましたが。

ああ、確かに最新刊のキャンプ場とかもパロディ満載でしたw

パロディは伝わると作者として嬉しいです!!


で。


「ヒトミ先生の保健室」は、毎回主役が異なる1話完結形式の作品なんですけど、話作りの根幹的な部分は、その回の主役になるキャラクターのアイデアから膨らませて作っていきます。

毎回その準備というか下調べに結構時間がかかるんですかね…

毎回、一話完結は本当に大変だと思います。
なるほど、そのキャラクターのアイデアの準備、下調べなどはどうされているんですか?

インターネット頼りですね。

wikipediaやキーワード検索で引っかかった参考になりそうな文献などを色々読みます。


そうやって調べてるうちに、このキャラクターに関する特徴・キーワードから色々イメージが広がっていくので、そこから使えそうなものを拾ってつなぎ合わせてエピソードを作っていたりします。


ああ、なるほど。今はインターネット活用していかないとですよね。


>そうやって調べてるうちに、このキャラクターに関する特徴・キーワードから色々イメージが広がっていくので、そこから使えそうなものを拾ってつなぎ合わせてエピソードを作っていたりします。


わかる気がします。自分も資料を調べていて「あ、これとこれ、繋がるんじゃない?」みたいな気持ち良さを感じて、それを物語につむいでいったりするので。
鮭夫先生、何か具体例はありますか?

えーっと、例えば「ヒトミ先生の保健室」には「富士見さん」というゾンビっ子が出てくるんですけども。


(正確には不死身な体質なだけの人間です)


最初はまず「体がバラバラになっちゃうゾンビっ子の話を描こう」くらいの「思いつき」が出発点なんですね。

ふむふむ。
調べていったりする中で、「ゾンビ」や「不死」から連想されるものとかキーワードを書き出していって、「痛みを感じない、恐れない」といった要素から出た「無痛症」といったものを調べていきました。


その中で「痛みを感じないことが人間性にどう影響するか」というようなことがこのキャラクターを描くエピソードのテーマの話になるんじゃないかな、という風にぼんやりと輪郭を掴みます。

おお、すごい。そういう感じで連想から、イメージができていくのは面白いですね。
テーマが見えたらあとのエピソードは肉づけですね。

そのキャラクターが、そのキャラクターだからこそ起こす言動で、どうしたら面白くなるのか…という。


こっちの肉づけのエピソードのほうが読んで「楽しめる」ものではあるかもしれませんが、テーマがしっかり見えると、エピソードが引き締まるし、読者に「得るものがあった」という、読後の満足感を提供できるんじゃないかと思います。


と、いうのが自分流というか1話読み切り形式の「ヒトミ先生の保健室」での話の作り方です。


キャラクターのアイデアありきで、だいたいいつもテーマは後付けですね!

ははぁー(感心) そりゃ、ネームの物語を作る段階で大分時間を費やされるのもわかる感じですね。
…と、いうゾンビっ娘エピソードは「ヒトミ先生の保健室」第1巻(第2話)に収録されています☆


(唐突な宣伝)

すみません、 某WEBコミックで2話まで見れたはずと思ってリンクを貼ろうとしたのですが、今確認したら1話しか見れなくなってました…


1話は無料で読めるので、興味が出た方はよろしくお願いします☆

(ほんとに唐突なダイレクトマーケティング!)

そして、どんまいです。みなさん、未読な方は「読もう! ヒトミ先生の保健室!」w

ここまでで、物語の骨格を作るお話はお聞きできたわけですけれど、ここからどのようにネームの形に落とし込んでいかれるんでしょう?
ネームの作り方って人それぞれなので、他の漫画家さんがどうやって作ってるか自分も興味あります!

もういっそ毎回出演漫画家さんのネーム見せてもらって欲しいくらいです!


…で。


自分流のやり方はこの段階を踏んでいます。


・アイデア出し

・下調べ

・プロット

・シナリオ

・ネーム

今回はこちらにできあがった参考画像をご用意しております。

(電子レンジを開ける)



まずはこれが担当さんに送ったアイデアスケッチですね


「顔に穴の開いた女の子に蛸の脚の女の子が脚を入れるというネタを描きたいです」とだけ言いました。


この段階ではやりたいアイデアだけでテーマが決まってません。

わぁお、わかりやすいです。そして、そこはかとないエロティックさw

下調べなどを経てテーマが決まったら、物語全体の大まかな流れ(プロット)を書き出します。


(このプロットは途中までです)
これがシナリオ(セリフだけ書き出したもの)と、ネーム(兼ラフ)ですね。


このネームは1ページ目なのでキャラの外見を担当さんにも伝わりやすくするため、割としっかり描いてますが、他のページはもっと適当な絵です。


自分のネーム作りはこんな感じでしょうか!

こうして、説明していただけるとすごく流れがよくわかりますね。これはご覧になっている皆様にもすごく参考になるのではないでしょうか。貴重な資料のご提供ありがとうございます!
ちなみに、この二人の女子中学生が保健室のベッドの上で絡み合う、青く瑞々しく情熱的なエピソードは、「ヒトミ先生の保健室」第6巻(徳間書店/リュウコミックス)に収録されております。


チェケラ!!

(これできっと担当さんもにっこり)


(のはず)

(この人、ごりごりに宣伝いれてきおるで。……のっておこう)

チェケラ!!

シャケラ!!
(シャケラってなんだ?)
では、ネームに関してはこんなところでしょうか。
話は少し戻るのですが、鮭夫先生といえば、独特な画面作りも特徴だと思います。そうした画面の構成やコマワリについて気をつけていらっしゃることなどありますか?

そうですね。話とともに真面目な顔に戻りますね。シャケラッチョ!


自分が漫画作りでこだわってるもののうちの一つが画面作りで、

ネームよりも作画のほうが楽しいですね。


単眼キャラや異形キャラ自体もそうなんですが、画面の見た目で「おっ?」と思わせられるような効果を出したいなと、自分なりに工夫はしています。

(いまさら感漂う真面目顔ですなぁ)

ほうほう、その工夫といいますと?

例えばベタの多い画面や描き文字や変形コマですね。


でも「視覚的に変わった演出をすると刺激的ではあるが読むストレスが少なからずかかる」ということなので、変わった演出をする分、基本的な読みやすさ自体も気をつけてはいます。

ストレスがあるのは確かにわかります。画面が特殊だと、うまくやらないと読んでもらえない、とっつきにくさみたいなものが生まれてしまいますよね。
・視線の流れを意識した吹き出しの配置


・ベタが多い分タチキリを少なくしてコマ外の白場を増やす


・タチキリや変形コマはここぞというときだけに使う


といったあたりでしょうか。

あくまで自分流の画面作りにおいて、個人的に気をつけていることになりますが。

吹き出しの配置などもとても気を使ってらっしゃるように思うのですけれど、いかがでしょうか?
そうですね。 日本の縦書き文字の漫画は、文字の読み方と同じように、全体としては右上から左下に向かって視線が流れると思うんです。


コマの中でも同様だと思いますので、吹き出しが読む順序が右上→左下になっていると、ストレスなく読めるのではないかと個人的には思っています。

↑例えば一つのコマに吹き出しがある場合、


左上


   右下


というふうに並んでいると、どっちを先に読むのか若干迷います。


これはツイッターでどういうふうに読んだかというアンケートを取ってみたところ、


26%右→左 「内心では… …というのは冗談として」

74%左上→右下 「…というのは冗談として内心では…」
という結果になりました。


おおー、そう言う実験をやられていたんですね。探究心がすごい!
あくまでこれは実験のためわざとどっちでも読めるような文にしたので、

文脈で捉えられる場合必ずしもこういう配置にしてはいけないという話ではなく、


「読みやすくする工夫」くらいに頭に入れておくといいかもしれませんね。

↑あとは、これも「やってはいけない」という話ではなく「読みやすくする工夫」として、キャラと吹き出しの位置関係を考えて、できるだけ読むストレスを減らせればいいな、と個人的には気をつけています。


もちろん他に優先するべきことがあれば必ずこれを守ってる訳でもありませんし。

この吹き出しをのどに寄せすぎないとかは、学んだり、意識していないと、やってしまいがちですね。プロでもたまにぎりぎりになってる方とかいらっしゃって、ちょっとはらはらしますw

Web媒体が増えてきて、あまりのどとかタチキリとか気にしなくなっているのかもしれないですね。

のど側に文字がはみ出してると、雑誌では特に読みにくくなりますからねー。


それでも読めるので大きな問題ではないですが、自分の漫画はただでさえ目が疲れるかもしれないので、できるところで、読むストレスを和らげたいと考えています。

様々な工夫を絵でわかりやすく説明してくださってありがとうございました。とても勉強になるお話でした。
では、今日はこの辺りで。続きはまた明日の午前中にいたしましょう。
明日の座談会終了は昼12時になります。
ご質問などございましたら、それまでに書き込みよろしくお願い致します。
このエピソードはここで閉じて最終日はつぎのエピソードで行います。
質問等もそちらでお願い致します。

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登場人物紹介

森脇かみん


漫画家。『東京ネームタンク』ネーム相談講師。


web、アプリ漫画「サイコミ」にて医療漫画「サブカルメディカル」でデビュー、連載。

連載終了後は企業案件漫画など。その他、漫画連載を企画中。

某医大医学部を中退し、漫画家になるため上京した過去を持つ。

医療知識があるので、その方面の質問に応えることもある程度可能。

日本シャーロック・ホームズ・クラブに所属する程度にミステリ好き。

鮭夫(しゃけお)


漫画家・イラストレーター。


富山県出身。

脱サラ後横浜に移住し、2008年よりイラストレーターとして活動。

ファミリー・児童向けのほのぼのイラストの他、WEB・携帯配信漫画などを手掛けている。


第12回龍神賞【銅龍賞】をゾンビ漫画『ジェネレーション・オブ・ザ・(リビング)デッド』で受賞。

同作品が「COMICリュウ」2013年2月号に掲載されて本格的デビューを飾る。

同誌2013年11月号より『ヒトミ先生の保健室』連載開始。

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