「なんか書く? それとも描く?」

文字数 2,284文字

うーん……。
どうしたの、愛?

唸ってるけど、便秘?


違うよ! 

もういい加減うんこから離れようよ!

それは無理ね。わたしはうんこネタが大好きだから。
小学生か!
まぁ、体は大人で心は子どもと言えなくもないけど。

なにこれエロい。

いくらでも騙せそう。

そして凄いこと出来そう。

おお、確かに。

て、いやいや。すぐそういうこと考えるのやめよう。

わたしもクラリスちゃんみたいに

頭が腐ってきてるかも……。

思うんだけど、愛ってわたしへの当たりキツくない?

キツいのはあそこだけにして欲しいんですけどー。

口を開けば下ネタかっ!

もーやめてよー。

わたし、今、真剣に考えてたとこなのにー。

あらそう?

ふふふ、それならちょうどいいじゃない。

わたしで良ければ話を聞くくらいは出来るわよ?

ありがとう。

気持ちだけ受け取っとくねっ。

おい。いきなり却下てどういうことよ?

やんわりと失礼ね、愛。

なに、迷惑? 迷惑なの?

愛は明日、近所の相撲部屋に米一俵担いで運び入れる予定でしょ?

その時「手伝おうか?」って声をかけたわたしにも、

同じことが言えるのかしら? 言えるのか貴様!

誰が決めたのそれ!? そんな予定ないよ! 米一俵担げないし!

なんでわたしが相撲部屋に出入りしてんの!?

そして貴様呼ばわりされてるし!

例えよ、例え。

まぁ冗談はここまでにしといて、

わたしが愛の力になりたいってのはホント。

特に便秘なら、是非浣腸してあげたいって思ってる。

――ホントよ?

そんないい顔して変態発言すんなあ!

便秘じゃねぇって言ってんだろおおおおお!

じゃあ何?
う……。

はー。もう、分かったよ。

話すよ、話す。

実はね、今日、お知り合いの絵師さんがね。

エロ絵師?
違うし!

……まあ、巨乳好きだから、そういうイラストは

描いたりしてるみたいだけど。

ちっ。

ロリの敵か。

舌打ち!?

巨乳ってロリの敵なの!?

巨乳ロリってキャラもアリはアリだけど。

やっぱりロリキャラは胸がぺたんこじゃないと。

小学生のくせにFカップとかムカつかない?

あー……。

クラリスちゃん、結構コンプレックスあったんだねー。

うん、納得。

納得するの、やめてもらっていいっすか?

わたし、元キャラでは超巨乳だったのに……。

ま、いいけど。

ラノベのメインヒロインって、たいてい貧乳だしね。

そう言われるとそうかも!

不思議だねー!

でも、それなら良かったね、クラリスちゃん!

……あんたのそういう悪意の無いとこ、

たまにすげー殺意が湧く。

なんでっ!?
もうその話いいから。

で、なにを悩んでたん?

その絵師さんがどうしたの?

ヌードモデルでも頼まれたの?

違うし。

え、っとね。ほら、ニコニコ動画ってあるじゃない?

あれのさ、とあるボカロPさんの新曲に、

その絵師さんのイラストが抜擢されたのね。

凄いじゃない!

そんな絵師さんと知り合いだなんて、

めっちゃ自慢出来るじゃない!

そうなの!

……でもね。

ん?
そういう事があると、なんか

焦っちゃうって言うか……。

わたしも、頑張らなくちゃなーって。

ああ、小説?

愛は小説書いてるのよね?

いいじゃない、頑張れば?

軽いな!

いや、そーなんだけど。

そーなんだけどー!

書けないの?
うん……。

書き始めた頃は、書くのが楽しくて。

自分の考えた物語が、形になって、

この世の中に、というか、主にウェブに残るのが嬉しかった。

でも……。

楽しくないのね?
そう、なの、かなぁ。

書いてるうちに欲が出ちゃって。

どうせなら、どうせなら、って。

受賞して、デビューして、って。

でも、うまくいかなくて。

だんだん、なにが面白いのか、

なにが書きたいのかすら、わかんなくなってきて……。

欲が出るのはいいことだと思うけど。

向上心の顕れでしょ、それ?

愛はそうなっても無理ないしね。

凄い賞の難関一次審査通過したり、小さい短編賞獲ったりもしたし。

最終選考まで残った時もあったわよね?

うん。

楽しかったな、あの頃。

自分に力がついてくるのが、

凄く実感出来てたから。

なるほど、そこでお知り合いの動画、か。

ジャンルは違えど、焦る気持ちは分からないでもないわね。

ありがとう、クラリスちゃん。

わたし、しばらく書くのお休みしてたから、余計に。

時間を無駄にしたなー、とか、

もっと頑張ってたら今頃はなー、とか。

いろいろ考えちゃってたの。

そんなの、考えても仕方がないことなのにね。あはは。

考えても仕方がないことなんてないと思うわ。

こと、小説書きとか、絵描きとか。

創作するクリエイターにとってはね。


え?
だってそうでしょう?

小説の登場人物たちは、みんなちゃんと生きているのよ?

楽しい、悲しい、嬉しい、苦しい。そう感じて生きているはずだわ。

でも、彼らの気持ちが分からなければそれを書く事は出来ないはずよ。

今、愛は、夢への壁にぶち当たって挫折しかけている人の気持ちを知ったのよ。

これほど大事なことがあるかしら?

これほど貴重な体験があるかしら?

あ!
だからあとは、その壁を乗り越えて、

夢を掴んだ時の気持ちを知らなくちゃ。

どうする、愛?

これが小説なら、ここから

最高のクライマックスに突入するはずなんだけど?

そうか。そうだよね!

わたし、すっごくいい経験してたんだ!

こんなの、頑張るしかないもんね!

そういうことね。

努力に勝る才能なし、ってね。

成長する時には、骨が軋むし歯も抜ける。

そして、一回り大きくなるの。

格好悪い時もあるものよ。

悩んだ時は、耐えて耐えて、頑張る。たまに休む。それだけ。

頑張りなさい、愛。

わたしは、いつも応援してるわよ。


ありがとう、クラリスちゃん!

わたし、頑張る!

凄いね、クラリスちゃん!

うんこ以外のお話も出来るなんて、見直しちゃった!

台無しか!

あー、殺意湧くわぁー。

ちゃんちゃんっ☆
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登場人物紹介

東条愛(とうじょうあい)。16歳。A型。158センチ 46キロ。右投げ右打ち。

普通の人キャラ。焼肉に行くと内臓系ばかり注文する。

クラリス・ベルリオーズ。16歳。O型。161センチ 43キロ。クォーターバック。

オタク。BL愛好家でありガチ百合。愛の自転車のサドルを舐めるのが日課。

ひぷのしす。つまり作者。

おっさん。マヨラーでミソラー。

血糖値上昇中。

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