第6話 親元離れて
文字数 1,999文字
学校では午後は遠足があるということもあり、朝から問題を解いたり小テストをしたり、そんな授業が多かった。紙に向き合う授業はフリースタイルの授業よりも孤立しないので気が楽だ。みんなが紙とにらめっこして静まり返っている。
2時間の授業を終えると、憂鬱なランチの時間だ。またもやペンやノートを片付けているとクラスメートは教室からいなくなっていた。先生もランチへ出て行ったようだ。とにかくみんな動きが速い。
わたしは昨日行ったカフェ街までの道を思い出して、同じ道を辿った。今日は学校の近くのカフェに強面の男性はいなかったので、入ってみようかと考えたが、カウンターからわたしのことが見えそうにないほど高い位置にカウンターがあったので諦めた。諦める理由なんていくらでも作れるのだ。
昨日と同じ道を引き続き歩き、昨日サンドイッチを食べたカフェまでたどり着いた。慣れた道なので昨日の半分の時間で着いた気がする。
今日は余裕を持って立ち並ぶ食べ物を眺めて歩いた。ヨーグルトの店、エスニック系の店、インド料理店、パン屋、ケーキ屋、小さな店所狭しと配置されていて、各店に人が群がっている。皆お昼時なのだ。
わたしは比較的空いていたエスニック系の店の前まで行って、カウンターの下のケースに置いてあるやきそばのようなものが欲しいと指差しで伝えてみた。サイズなどは言う必要がないらしく、すぐにタッパーに装われたやきそばが手渡された。きっとやきそばではないだろう。
お金を払って近くの空いている比較的綺麗なテーブルに座る。かばんを自分の方に引き寄せて、ほぼ抱きかかえた状態でタッパーを開ける。
やきそばのようなものを食べながら周りを見渡した。首から名札を下げた銀行員のような人もいれば、工事現場で働いていそうな装いの人もいる。お店の店員さんも賄いを食べる時間のようだった。
わたしはやきそばを食べ終わると、周りのみんながしているようにタッパーをテーブルの上に置いて、建物を出た。まだだいぶ時間はあるが学校へ戻っておいた方が良い。今日は遠足だと言われているのだ。
教室へ戻ると、ほとんどの生徒は戻ってきていなかった。わたしは携帯電話に実装されている、蛇のゲームをしてみた。多少なりともハラハラするし、少し続くと嬉しい。蛇が長くなると蛇の動きも速くなるので焦りも強くなる。
蛇が死んでしまったところで、生徒が徐々に戻ってきた。先生も授業開始時間の前に教室に入ってきた。
“Ok, so are we all here? Are we ready to go?”
どうやらもう遠足にでかけるようだ。隣に立っていた台湾人のAngelaがわたしに目配せしてにっこりと笑った。わたしも笑い返してみた。
“Where do you eat lunch?”
「ん?」
“Lunch? Do you go out?”
“Yes… food court.”
“Where? The station?”
“Yes.”
わたしがだいぶ前に教室に戻ってきていたから教室でご飯を食べていると思ったのだろうか。
“Where do you eat?”
わたしも聞き返してみた。Angelaは隣に座っていた台湾人のJackieの肩に手を置いて
“We - go to foodcourt downstairs, we eat sushi, too. Did you eat the sushi?”
“No.”
“It’s good! Let’s eat sushi together.”
寿司が話題として使えるとは、こういったとき、時々日本人でよかったとつくづく思う。ネタになることが多いのだ、寿司だけに。
教室の外で誰かと話していた先生が扉の付近に座っていた生徒に合図をかけると、生徒が立ち上がる。次々に生徒が部屋から出ていき、AngelaとJackieもわたしに合図して教室から出て行った。わたしとCynthiaもあとに続く。
遠足とは言っても、乗り物には乗らず歩いて行く遠足だった。30時間ほどAngela、Jackie、Cynthiaの三人とたどたどしいながらも話しながら歩いていると、大きな建物が立ち並ぶ空間に入り込んだ。
先生は先頭を切って歩いているのでもう何メートルも先を歩いている。どこに向かっているのかも目的地はどこなのかも聞こえる距離ではない。
みんなについて歩いて建物の中に入り、階段で地下まで降りて行くとついにみんなに追いついたようだった。
今から見る映画の巨大なポスターが4階分ほどの高さがある天井から垂れ下がっている。
親元離れてオーストラリアに引っ越してきた二日目にこんな大きな映画館で映画を見ることになるとは、忙しいのかこれが通常なのか。
先ほどまで一緒に話していたAngelaとJackieはすでに中に入っていっていたので、わたしはクラス全員の後に続いて暗いシアターにゆっくりと入っていった。
2時間の授業を終えると、憂鬱なランチの時間だ。またもやペンやノートを片付けているとクラスメートは教室からいなくなっていた。先生もランチへ出て行ったようだ。とにかくみんな動きが速い。
わたしは昨日行ったカフェ街までの道を思い出して、同じ道を辿った。今日は学校の近くのカフェに強面の男性はいなかったので、入ってみようかと考えたが、カウンターからわたしのことが見えそうにないほど高い位置にカウンターがあったので諦めた。諦める理由なんていくらでも作れるのだ。
昨日と同じ道を引き続き歩き、昨日サンドイッチを食べたカフェまでたどり着いた。慣れた道なので昨日の半分の時間で着いた気がする。
今日は余裕を持って立ち並ぶ食べ物を眺めて歩いた。ヨーグルトの店、エスニック系の店、インド料理店、パン屋、ケーキ屋、小さな店所狭しと配置されていて、各店に人が群がっている。皆お昼時なのだ。
わたしは比較的空いていたエスニック系の店の前まで行って、カウンターの下のケースに置いてあるやきそばのようなものが欲しいと指差しで伝えてみた。サイズなどは言う必要がないらしく、すぐにタッパーに装われたやきそばが手渡された。きっとやきそばではないだろう。
お金を払って近くの空いている比較的綺麗なテーブルに座る。かばんを自分の方に引き寄せて、ほぼ抱きかかえた状態でタッパーを開ける。
やきそばのようなものを食べながら周りを見渡した。首から名札を下げた銀行員のような人もいれば、工事現場で働いていそうな装いの人もいる。お店の店員さんも賄いを食べる時間のようだった。
わたしはやきそばを食べ終わると、周りのみんながしているようにタッパーをテーブルの上に置いて、建物を出た。まだだいぶ時間はあるが学校へ戻っておいた方が良い。今日は遠足だと言われているのだ。
教室へ戻ると、ほとんどの生徒は戻ってきていなかった。わたしは携帯電話に実装されている、蛇のゲームをしてみた。多少なりともハラハラするし、少し続くと嬉しい。蛇が長くなると蛇の動きも速くなるので焦りも強くなる。
蛇が死んでしまったところで、生徒が徐々に戻ってきた。先生も授業開始時間の前に教室に入ってきた。
“Ok, so are we all here? Are we ready to go?”
どうやらもう遠足にでかけるようだ。隣に立っていた台湾人のAngelaがわたしに目配せしてにっこりと笑った。わたしも笑い返してみた。
“Where do you eat lunch?”
「ん?」
“Lunch? Do you go out?”
“Yes… food court.”
“Where? The station?”
“Yes.”
わたしがだいぶ前に教室に戻ってきていたから教室でご飯を食べていると思ったのだろうか。
“Where do you eat?”
わたしも聞き返してみた。Angelaは隣に座っていた台湾人のJackieの肩に手を置いて
“We - go to foodcourt downstairs, we eat sushi, too. Did you eat the sushi?”
“No.”
“It’s good! Let’s eat sushi together.”
寿司が話題として使えるとは、こういったとき、時々日本人でよかったとつくづく思う。ネタになることが多いのだ、寿司だけに。
教室の外で誰かと話していた先生が扉の付近に座っていた生徒に合図をかけると、生徒が立ち上がる。次々に生徒が部屋から出ていき、AngelaとJackieもわたしに合図して教室から出て行った。わたしとCynthiaもあとに続く。
遠足とは言っても、乗り物には乗らず歩いて行く遠足だった。30時間ほどAngela、Jackie、Cynthiaの三人とたどたどしいながらも話しながら歩いていると、大きな建物が立ち並ぶ空間に入り込んだ。
先生は先頭を切って歩いているのでもう何メートルも先を歩いている。どこに向かっているのかも目的地はどこなのかも聞こえる距離ではない。
みんなについて歩いて建物の中に入り、階段で地下まで降りて行くとついにみんなに追いついたようだった。
今から見る映画の巨大なポスターが4階分ほどの高さがある天井から垂れ下がっている。
親元離れてオーストラリアに引っ越してきた二日目にこんな大きな映画館で映画を見ることになるとは、忙しいのかこれが通常なのか。
先ほどまで一緒に話していたAngelaとJackieはすでに中に入っていっていたので、わたしはクラス全員の後に続いて暗いシアターにゆっくりと入っていった。