セッション(2)
文字数 1,162文字
古葉村さんの名前はマサミチさんといった。
話してみると、マサミチさんはおしゃべり好きの楽しい人だった。
苗字でなく名前で呼んでくれると嬉しいと、初対面のわたしにも気さくに接してくれた。
だけどそんなマサミチさんに、わたしはここへ鑑定に来たことがあると伝えられずにいる。
──あの美少女は、本当に古葉村邸の子だったの……?
──もしかしたら……違う……?
さっきから続く疑問と違和感。
そのどちらもが、わたしを慎重にさせていた。
「流風くんと美雨ちゃん、まだもどってきませんね」
本当に訊きたいことの代わりに、さっきから無難な言葉ばかり口にしている。
「まだあちこち探してるようですね。行き違いになっちゃったな」
「家の中で行き違いになるなんて、広いお屋敷ですね」
「ええ。わたしたちだけで暮らすには広すぎますよ」
──わたしたちって、いったい何人なんだろう。
心に引っかかるけれど、それをたずねることはできない。
「ところで、海翔ともお会いになりましたか?」
「あ、はい」
「変わったヤツでしょう?」
「変わった……え、えっと……」
「19にもなって、常識知らずでマイペースなヤツなんです」
「19歳……ですか」
──まだ19だったんだ。
──年下だとは思ったけど、そんなに若かったなんて……。
「確かに、話してみると子どもっぽ……じゃなくて、マイペース……
あ、いえ、自由な感じはしますけど、わたし、海翔くんは20代かなと…………。
最初お会いした瞬間、とても偉そう……っていうか、しっかりした印象でしたし……」
わたしの歯切れの悪い言葉に、マサミチさんが笑いだす。
「ははっ、かなり的確な表現ですね」
「す、すみません、変なこといっぱい言いました……」
「いえ、いいんです。でも……」
マサミチさんは、ふと顔をくもらせる。
「それは……両親がいないせいかな」
「えっ……」
「ここの子どもは、みんなそうなんですけどね」
マサミチさんが少し寂しげに微笑む。
──みんな、お父さんとお母さんが……。
「どの子も必要以上にしっかりしないといけないと思ってるところがあるんです。
まあ、それが海翔の場合は変な方向にいってしまって……。
周りに合わせないことがしっかりすることだと、誤解したまま大きくなったようなんです」
不器用すぎて困ったものです、と言いながらも、マサミチさんの表情はどこまでも優しい。
──事情はわからないけれど……ご両親のいない子どもたちをマサミチさんはずっと見守ってきたんだ。
──いろいろ大変だったんだろうな……。
そのとき、部屋のドアが開く。
話してみると、マサミチさんはおしゃべり好きの楽しい人だった。
苗字でなく名前で呼んでくれると嬉しいと、初対面のわたしにも気さくに接してくれた。
だけどそんなマサミチさんに、わたしはここへ鑑定に来たことがあると伝えられずにいる。
──あの美少女は、本当に古葉村邸の子だったの……?
──もしかしたら……違う……?
さっきから続く疑問と違和感。
そのどちらもが、わたしを慎重にさせていた。
「流風くんと美雨ちゃん、まだもどってきませんね」
本当に訊きたいことの代わりに、さっきから無難な言葉ばかり口にしている。
「まだあちこち探してるようですね。行き違いになっちゃったな」
「家の中で行き違いになるなんて、広いお屋敷ですね」
「ええ。わたしたちだけで暮らすには広すぎますよ」
──わたしたちって、いったい何人なんだろう。
心に引っかかるけれど、それをたずねることはできない。
「ところで、海翔ともお会いになりましたか?」
「あ、はい」
「変わったヤツでしょう?」
「変わった……え、えっと……」
「19にもなって、常識知らずでマイペースなヤツなんです」
「19歳……ですか」
──まだ19だったんだ。
──年下だとは思ったけど、そんなに若かったなんて……。
「確かに、話してみると子どもっぽ……じゃなくて、マイペース……
あ、いえ、自由な感じはしますけど、わたし、海翔くんは20代かなと…………。
最初お会いした瞬間、とても偉そう……っていうか、しっかりした印象でしたし……」
わたしの歯切れの悪い言葉に、マサミチさんが笑いだす。
「ははっ、かなり的確な表現ですね」
「す、すみません、変なこといっぱい言いました……」
「いえ、いいんです。でも……」
マサミチさんは、ふと顔をくもらせる。
「それは……両親がいないせいかな」
「えっ……」
「ここの子どもは、みんなそうなんですけどね」
マサミチさんが少し寂しげに微笑む。
──みんな、お父さんとお母さんが……。
「どの子も必要以上にしっかりしないといけないと思ってるところがあるんです。
まあ、それが海翔の場合は変な方向にいってしまって……。
周りに合わせないことがしっかりすることだと、誤解したまま大きくなったようなんです」
不器用すぎて困ったものです、と言いながらも、マサミチさんの表情はどこまでも優しい。
──事情はわからないけれど……ご両親のいない子どもたちをマサミチさんはずっと見守ってきたんだ。
──いろいろ大変だったんだろうな……。
そのとき、部屋のドアが開く。