訓練会
文字数 1,078文字
冒険者ギルドでは定期的に訓練会を開いている。
これは一般にも開放されており、ギルドカードを所持していない場合は参加費用が必要だ。
一方、ギルドカードを持つ冒険者は無料だが参加は強制ではない。
だが冒険者になったばかりの者はなるべく参加するように指導されている。
この訓練会では冒険者として知っておくべきことを教えてくれる。
いくつもの難関クエストをクリアして成長していった冒険者たちは口をそろえて「訓練会での経験があったから今がある」と言うほど内容は充実していた。
あこがれの冒険者たちもこの訓練会に参加していたと聞けば、よほど頭のネジが緩んでいる者でなければ参加しようと思う。
結果として冒険者たちの生存率が上がり、クエストの達成率も向上し、みんなが幸せになれるわけだ。
訓練会の内容は大きく分けると二つある。
一つは屋外で生き抜く方法だ。ケモノに襲われないように眠る方法や、火種や飲料水を確保する方法。湿地、森林地帯などでの狩りに狩った獲物を食べるための処理などなどを教えてもらえる。サバイバル技術全般の訓練といえばわかりやすいだろう。
これは旅をする一般人にとっても知っておくとよいことが多いため、旅商人を志す者が受けたりもする。
もう一つは戦い方だ。
冒険者となれば戦いは避けられない。人が暮らす地域を外れればそこはモンスターたちのテリトリーだ。自分の命を守るためにも戦う能力は必須と言える。
この訓練はレベルが上がっても参加することができる。
ある程度慣れてきた頃の方が危険だという考えもあるので、中級者を抜けるまで訓練会に参加するのは好意的に受け入れられていた。
フルプレートを身に着けた若い冒険者の姿を見て、今日の訓練を担当するパルメが声をかける。
ジョルジュは裕福な商家の息子だった。まだ駆け出しの冒険者なのにこれだけ立派な装備を整えられたのは親の援助のおかげだ。両親は商人としてかなりの成功を収めていたのだから。
稼業は長男が継ぐことになっていたので、ジョルジュは早いうちから独立するつもりだった。そして小さい頃から憧れだった冒険者になった。
訓練会で講師を担当するのは冒険者を引退した者が多いが、戦闘訓練については現役の者がギルドからの依頼で請け負うこともある。
パルメのようにソロでファイターをやっている場合は、時間があるときにこうして講師役を引き受けている。