非日常
文字数 8,099文字
おれは主人公。大学に行くために奨学金を貰って上京して今は一人暮らしをしている。生活費を稼ぐためにバイトをして日々カツカツの苦学生である。両親は高校の時交通事故で亡くなってそれ以来ずっと1人である。
ある日そんなおれにこんなものが送られていた。「嫌われ度スイッチ?」
説明、これはあなたがどれくらい嫌われているかを測定します。1人嫌われるごとに1万円となります。ただしこの測定機で測定された人があなたの事を嫌ってると判定した場合、その人はあなたのことを永遠に嫌い続けます。機械は縦10センチ横10センチ奥行き15センチぐらいある直方体で上面にはスイッチとモニターらしきものがある。そしておれから見て正面の側面には多分説明通りにいけばお金が出てくるところらしきものがある。
説明書を読んでも機械の説明だけであり、誰がどのような目的で僕に送ってきたのかは不明であった。「何でこんな機械がおれに?てか気持ち悪!」気持ち悪くて捨てたかったのだが捨てたら捨てたで何か後々嫌なことが起こりそうなのでとりあえず持っておくことにした。
次の日、
「はぁ…嫌われ度スイッチ?」
こいつは同級生で一番仲の良いAだ。Aは去年大学で知り合って何かと一緒にいる。
「そうなんだよ。どうすればいいと思う?」
「まず病院に行くことをお勧めする」
「違う。おれは頭はおかしくなってない。まじのやつだって」
「わかった。とりあえず帰って寝ろ。そしたらその機械は消えてなくなってるからさ」
「別におれの妄想じゃないって。相談くらい乗ってくれよ」
「なら捨てろよ。それで解決。はい終わり」
「適当だなー。もうちょっと真剣に考えてくれたっていいじゃないか」
「なら使ってみろよ。そんで金入ったら後でおれに奢ってくれ」
「…相談相手をミスったよ」
「はぁもう押しちまえよ。な、もうこれでこの話終わり!」
そういうとAは話を切り別の話題に切り替えた。まぁ流石にこんなこと言われたら頭おかしいと思われるからただネタでやってるやつぐらいしかないしな。けどAの言ってみた感じ押してみたい気もする。あぁまじでどうしようかなぁぁ。
帰宅後
やはり機械のことが気になってしまう。押してしまうか押してしまわないか。あぁ悩む。この機械の事は半信半疑だけどもしと考えてしまう。もうこの悩みを解消するには押すしかない。押します。えい!
ポチッ
ピッピッピ 2人
え?まじ?おれ2人から嫌われてるの?うっそまじ。「割とショックでかいわ。」
嘘か本当かわからない結果に落ち込んでいると真偽が判定するものが機械から出てきていた。
「え?2万円?…2万円か。まじ本物?」
本当に出てきた2万円に驚きを隠せないおれ。自分が持っている1万円と比較してもなんら変わりない。もしかしたら巧妙な偽札かもしれないが本物だった場合この機械は説明通りになっているとほぼ断定してもよい。ただ気になる点は偽札なのか?本当に嫌われているのかという2点である。前者は銀行なりに行けば確かめられるが後者は実際やってみなければどうしようもない。
「偽札かどうか確かめてそれからどうするか決めるか」
後日確かめてみると本物のお金であった。となればあと一つの嫌われているという点。嫌われるのは嫌だが苦学生の身である主人公にとっては喉から手が出るほど欲しいものであった。
「うーん、嫌われるのは嫌だけど。まぁ明日やってみるか」
不安を抱える主人公であるが覚悟を決めた。
「おはよA」
「おはよ主人公。あれ?お前この講義とってたっけ?」
「いやとってないけどさ、どんな感じなのか気になって。もしよかったら来年にでも単位稼ぎでとろうかなって」
「なんだお前、昨日といい今日といい。お前やばい薬でもやってんじゃねえのか?」
「やってないよ!てかまぁあれだ、昨日のことは忘れてくれ。あれは今のおれでも思うように頭がおかしかった。」
「いや忘れられるわけないだろ。まぁいいや、この講義グループワークあって先生が勝手にグループ決めるから」
「お、そうなんだ。めんどくさそうだな」
「案外そんなこともないぜ。課題のレポートがめんどくさいだけで」
こんな会話をしていると先生が入ってきた。
ガラガラ
「それでは講義を始めます。このプリントを回すので一枚取ってください。今回の講義は自分のキャリアを今後どうしていくかについてグループを作って話し合ってもらいます。それじゃあ今からグループを決めるんですが…
えっと、んじゃそことそと2人でそれから…」
各グループが決められていきおれは通路を挟んで隣のやつとグループを組まされた。
「それではキャリアについて話し合ってもらいます。自分は将来どんな職業に就きたいか。なぜその職業に就きたいのか理由をプリントに書いてください」
なんか高校にもこんな授業あったような気がする。自分のキャリアなんか考えたことはないけど今の目的は…
「書けた?おれはBよろしく」
「主人公だ。よろしく書けたよ」
「主人公君だね、よろしく。主人公君はどんな職業についてーー」
「B君のから聞きたいな、先に発表してくれよ」
「え?あ、おれから?あぁいいよ。といっても別に夢があるわけでもないから大学出て普通の会社に就職って感じしか思いつかないかなぁ」
「普通の会社の普通って何?」
「なんだろ。みんなと一緒な感じかな。笑」
「ねぇそれって大学行ってる意味あるの?」
「え?いや、みんな行ってるし就職するときに何かと必要だし。」
Bは若干不思議そうな顔で言った。
「みんな入ってるから入るの?何も考えずに入ってたんだねB君は。それに知ってる?君は普通に大学に行ってるみたいだけど世の中君の年齢で働いてる子もいっぱいいるんだよ?そりゃあ大学行って一流企業に就職できればいいけとさ、高卒の人でも一流企業に入って稼いでる人もいるんだよ。何も考えずに大学に入って就職するなんて呑気な考えしてるんだね君は。」
おれはわざとらしく嫌な感じで言ってみた。
「そこまでいう必要なくない?」
「おれはただ思ったことを言っただけなんだけど何かおかしい?」
「……」
Bは黙りこくった。さすがにこれだけ言われればそうだろう。おれだってそうなる。
「まぁそんな感じかな、これから君の人生の参考にしてほしいけど。次は僕の番だね」
こうして授業は進んでいき
「時間になったのでこれで終了します」
Bは無言で立ち去ろうとした。
「さよならの挨拶ぐらいしないの?」
「あぁ、じゃあな」
「うん、またね」
嫌われる方法はいろいろあったが実験として行いたかったので人数は1人にとどめた。悪口ではないがうっとうしいキャラを演じてみた。悪口をずっと言い続けるよりこういう人の方が喧嘩にならずかつ嫌われると思ったからだ。結果は多分成功したと思う。帰ってから確認してみよ。
「主人公、この講義どうだった?」
「あぁまぁそれなりに楽しかったよ。この講義簡単だな」
「レポート点が高いからそっちが大変だけどな。んじゃまぁ次の教室に移動するか」
こうして今日の講義が全ておわり少し緊張しながら帰路に着く。Aと会話をしていたが内容はほとんど覚えていない。あの機械のことで頭がいっぱいで興奮気味かつ不安な感情であった。
家に着き機械のスイッチを押す。
…ピッピッピ
3人
嫌われた事に成功したようだ。そして1万円が出てきた。この機械は今嫌われている人数を表示しているようだ。これでこの機械は本物のようだ。これで苦しい生活から抜け出せて楽することができる。しかし、今回で改めて嫌われるのは嫌だと思った。やはり気持ち良いものではない。だからこの機械は使うのはやめようと思った。
昨日、Bに嫌われて合計3万円を手にしたわけだが気持ち良いものではない。気分が良くない。だけどほんの少し、ほんの少しだけお金が入って嬉しい気持ちももちろんある。まぁあれだな、もう使わないって決めたから捨てるか。
そう決心したおれは朝、粗大ゴミにこの機械を出して登校した。それからは人の気持ちについてより考えるようになった。おれはこの機械を通じて良い経験になったと。
それから数週間後、大学から帰ると
「え?なにこれ、、」
部屋が荒らされていた。部屋を調べると通帳と金目のものがなくなっていた。警察に連絡して詳しく調べてもらうとどうやら泥棒に入られたらしい。
「なんでおれなんだ、、、学生のおれなんかなんで入られたんだ」とりあえずパニックになっている頭を一旦落ち着かせた。今通帳やら何やらない状態で生活するのはまず無理である。この間バイト代をもらったばかりであるが貯金したばかり。所持金は1658円。このままじゃ家賃が払えなくなって追い出される。最悪だ。これからどう生きていこうかと途方に暮れていた。
「そうだ、とりあえずAに電話しよう。」
携帯を取り出してAに電話をかけた。
プルルルル、プルルルル、
「ぁい、もしもしぃ…」
「あぁ、Aかおれだ。実は大変なんだよ、おれ泥棒にあってさ、おれパニックで、、。悪いんだけどさ、今日お前の家に泊まらしてくれないか?」
「あぁ、ごめん。おれ今日病院行ってさ、、インフルだったんだ。ゴホッゴホッ
力になってやりたいんだけどさぁ、インフル移ったらたいへぇんだろ?それにゴホッ治療費もかかるし。悪いが別のところあたってくれ」
「まじかよ大丈夫なのか?だから今日お前学校来てなかったのか」
「ほんとにごめんよ。力になれなくて」
「いいよ。ありがとう。おれもごめんな?こんな時に頼んじまって。早く良くなる事を祈るよ。お大事に。じゃあな」
「あぁ、、じゃあ」
プツ
まじかあいつインフルなのか。今日はもう仕方ないからネカフェに泊まるってさっさと寝るか。
その日は近くのネカフェに泊まって夜を明かした。
次の日警察から軽く聴取みたいなことをされた。そして部屋を今日中に入れるようにしてくれた。さすがに泥棒に入られたので大家さんに頼んで部屋の鍵を替えてもらった。今月の家賃は事情を説明したら待ってくれるが、高校から貯めてたお金が全てなくなった今、バイト代ではやっていけない。このままだと大学を中退して働かなければならない。おれは将来のことを考えただけで絶望した。
「だめだ、人生終わった」
もう人生を諦めているとこの家にダンボールが届いた。
「こ、これは…!?」
中を開けるとあの機械が入っていた。なぜ今?このタイミングで?もしかしてこいつを送ったやつが全部やったことじゃないのか?
そんな事が頭に浮かんでいたが今はどうでもいい。今この機械を使わなければ確実に人生が終わる。
「これは必要なことだ。生きていく上で必要なことなんだ」
自分に言い聞かせるように言い訳するように言った。その後………
「大家さんこれ今月分の家賃です」
「主人公君、どうしたんだいこれ。金がなくなってるんだろ?」
「あぁ、親戚の方が援助してくれて。ある程度は生活できるようになりました。」
「そうか、そりゃよかったね。ご両親が亡くなって大変だろうに」
「いえ、交通事故なんで仕方ないことですよ。ではこれで」
次の日おれはあの機械を使って来月までの家賃代を稼いだ。仕方ない、仕方ないんだ。生きていくために必要だったんだ。
あれから約1週間嫌われ稼いだ。初めは前のBにやったようにしていたが、一回に嫌われる人数を増やして効率よく稼いだ。その結果バイトは少なめだが大学の人数合わせ計数十人に嫌われた。だが、今おれの手元には60万ほどある。貯金額の半分をたったこの日数で集めた。バイトより楽でなおかつ簡単である。前より嫌われることに対して抵抗がなくなっていった。多分慣れだろう。まぁどうでもいいや。
「よ、主人公。久しぶりだな」
「おぉAか。インフルはもう大丈夫なのか?」
「大丈夫治った。そんなことよりお前の方が大変だったろ。大丈夫なのか?今の生活は」
「あぁ、なんとかやれてる。たまたま通帳持ってたから助かったよ。」
「あれ?そうなのか…ならよかった。あ、それと…これなんだけど」
Aが見せてきたのはどうやらマンションやらアパートの物件のようだ。
「お前まだあの家住んでんだろ?一応さおれなりに何か力になれないかと思って探してみたんだけど。」
「お前ほんといいやつだな、ありがと。けど鍵替えたし大丈夫だ。」
「けどまた入られるかもよ。一回入られた家ってやじゃない?まぁけどやっぱ金かかるからそう簡単には引越せねーよな、わりぃ先走って」
確かにAの言う通りまた入られるかもしれない。しかもあれを盗まれたら今度こそ終わりだ。
「ちょっと見せてくれよ。確かにお前の言う通り引っ越した方がいいかもな。」
「え?まじ?けどおれ金のこと考えずに選んじまったよ。」
「いや、金は大丈夫だ。貯金した分と新しいバイト始めようと思ってるからそっちの心配はしなくていい。」
「そうなのか、ならこの物件なんだけど…」
勿論新しいバイトというのは嘘である。嘘というかあの機械を使うんだけどな。あの機械さえあればもう金に困ることはない。ここからおれの人生を薔薇色にさせるんだ!
新しい住居に引っ越して新しい家具、新しい家電製品、新しいゲーム全て買い揃えた。今とても清々しい気持ちになっている。両親が死に絶望、そして泥棒に入られ無一文になり絶望。この絶望を乗り越えたから今の自分がある。苦しみからだいぶ解放された気分だ。だが結果として多くの人から嫌われた。けどまぁ仕方がない、代償は必要だ。だが生憎もう嫌われることに関して何も感じなくなった。感覚が狂ってしまっているようだけれどもまぁいい。最近は嫌なやつという噂が流れて関わってもいない人が悪印象をもってくれるため何もしないでお金が入ることがある。まさに夢のようだ。別に嫌ってるからといって何か害を与えてくるわけではないようだ。腫れ物を扱うように誰も何も話してこない。あいつ以外は…
「なぁ主人公。お前どうしちまったんだよ」
「何が?」
大学の食堂で開口一番言われた。
「お前今どんな噂が流れてるのか知ってるのか?めっちゃ嫌われてるぞ」
「あぁそれが?」
「それがって…まぁ何人かには主人公がそんなやつじゃないって誤解を解いてるんだけど、いろんな噂がたっちまってるからな。どうにかしねぇと」
チッ、余計なことしやがって
「なんでた?」
「え?」
「噂は全部事実だぜ。おれがやったことだよ。だから誤解を解く必要はない。誤解してるのはお前だからな」
Aは驚いた顔をしていた。
「なんで、そんなことしたんだよ」
「なんでってお前に関係ないだろ」
「関係なくないだろ、友達だろ?…なぁもしかしてなんか悩んでんのか?おれがいつでも相談にのるぞ」
Aは本当にいいやつだと思う。こんなおれに友達と言ってくれるのだから。けれど、今は単に目障りなやつ。
「勘違いすんな、別に相談事なんてない。そういうお節介が嫌いなんだよ。ちっとは考えろよ。」
「あ、わりぃ…」
「てかほんとおれに関わんなよ、目障りだから。」
「はぁ?目障り?」
「あぁ目障りで鬱陶しい。」
Aは呆れた顔をしていた。
「はぁ…主人公。一体お前がどんな気持ちで言ってんのかわかんないけど、とりあえずそんな幼稚な煽りはやめろ。ほら、さっさと次の教室行くぞ」
本当になんなんだ?こいつは。普通ならもう関わろうとしないだろ、俺みたいなやつに。
俺は若干呆れながら教室には行かずに帰ることにした。
「おい、主人公!どこ行くんだ」
後ろから声が聞こえるが無視して歩く。周りからブツブツと噂されるのが聞こえるがどうでもいい。とりあえずまた何人かに嫌われて稼ぐか。そう考えて大学から出て帰路に着いた。
家に帰って少しした後Aが来た。なぜこんなにこいつはしつこいのだろうか全くわからない。おれは居留守を使って無視を決め込んだ。そして10分ぐらい経つとAは帰って行ったようだ。これでAにも嫌われておれの前から去ってくれた。とりあえず貯金100万目指して明日からもどんどん稼いでいくか。
「なんでだ、なんなんだあいつ…!」
おれはいつものように嫌われて金を稼ぐ事に励んだ。ただなぜかその場から少し離れた辺りにAが居る。別に話しかけてくるわけでもなくただじっとこちらをみてくる。来る日も来る日もこんなことをしてこられたらたまったもんじゃない。おれはAと話すことを決心して大学終わりに誰もいない教室に呼び出した。
「なんだ?主人公。急に呼び出して」
「とぼけるなよ。いつもいつもおれのこと見てきて、気持ち悪いんだよ。」
「あぁなんだそのことか。なんだろ、主人公変わったなーって思ってさ、なんでこんなになったのか分からなくてな。」
「別に、対して変わってねぇよ。ただ自分に正直に生きてるだけだ」
そう、おれは正直に生きている。その結果がこれだ。今まで苦しい思いをしてきたんだ。きっとこれは神様の贈り物なんだ。おれはもうこれから苦しい思いをせず生きていくんだ。
「そうなのか…あと金はどうした?前まで節約してたのになんでいきなりふんだんに使うようになったんだ。」
「金があるから使ってるだけだ。悪いか?てかもう何も質問してくるな。おれからのお願いはもうこっち見るな。視線を感じて気持ちわるいからな。」
「なんでそんなこと言うんだよ。俺たち友達だろ?」
Aはそんなことを平然と言う。なんでこんな扱い受けてんのにここまで言えるかなぁ
「友達?とぼけるなよ。友達に対してこんなことを言う奴いるか?考えろよバカか。」
「おれは…」
「もう黙ってくれよ!話しかけるな!いいな」
なんでこいつはここまでおれに構う?イカれてるのかこいつは。普通なら今頃みんなと同じようにおれのことを嫌ってるはずなのになぜなんだ。わからない。理解できない。
「頼むからおれに構わないでくれ!」
「…」
Aは黙ったままこちらを見て近づいてくる。やばい。おれは恐怖を感じた。なんでこんなに関わってくる。やめろ近づくな!
「や、やめてくれ、頼む。ウエッ」
吐き気すら感じた。拒絶反応が起こっている。
「主人公…どうしちまったんだよ一体」
「黙れ。嫌だもう嫌だ…おれに優しくしないでれぇぇ!」おれは無我夢中で教室を出て一目散に走った。走って走ってやっと家にたどり着いた。だがまだ吐き気や恐怖があり、全身が震えている。
「はぁ…はぁ…怖い、苦しい…」
なんだか苦しい。なぜだ。おれは幸せなはずなのに。金があるのに。これからなんでも自由に思いのまま生きていけるのに!なのになんでこんなに絶望してるんだ!
「あぁそうか…。おれめっちゃ嫌われてたわ」
Aに優しくされて嫌われてた悲しみが一気きた。初めの方は実験みたいに感じで嫌われて、それから次はどうしてもお金が必要になって、そのまた次は自分の欲が出て。嫌われる事に対してもう慣れてると思ってたけどそうじゃなかったんだな…
「なんか…もういいや…」
おれはもうこんな人生を送りたかったのだろうか。大学出て奨学金返すために働いてその中で素敵な人と出会って結婚して…。もう心が壊れてしまってる以上多分もう普通の接し方はできない。もう元には戻れない。残るのは罪悪感と苦しみだけ。この苦しみから解放されたくてある一つの選択をした。
「ねぇ聞いた?あそこのマンションに住んでる学生自殺したらしいわよ。」
「えぇほんとに?かわいそうに。なんで自殺したのかしら…」
マンションに警察や救急車がきてその周りの野次馬がそんな噂をしていた。
「ほんと観察しがいがあっなぁ主人公は。いつまでもずっとそばにいる友達役は大変だったぜ。まぁけどああまで金を稼ぐとは思わなかったぜ。いいもの見させてもらったよ主人公」
Aはあの機械を持ちながらうっすら笑みを浮かべた。
ある日そんなおれにこんなものが送られていた。「嫌われ度スイッチ?」
説明、これはあなたがどれくらい嫌われているかを測定します。1人嫌われるごとに1万円となります。ただしこの測定機で測定された人があなたの事を嫌ってると判定した場合、その人はあなたのことを永遠に嫌い続けます。機械は縦10センチ横10センチ奥行き15センチぐらいある直方体で上面にはスイッチとモニターらしきものがある。そしておれから見て正面の側面には多分説明通りにいけばお金が出てくるところらしきものがある。
説明書を読んでも機械の説明だけであり、誰がどのような目的で僕に送ってきたのかは不明であった。「何でこんな機械がおれに?てか気持ち悪!」気持ち悪くて捨てたかったのだが捨てたら捨てたで何か後々嫌なことが起こりそうなのでとりあえず持っておくことにした。
次の日、
「はぁ…嫌われ度スイッチ?」
こいつは同級生で一番仲の良いAだ。Aは去年大学で知り合って何かと一緒にいる。
「そうなんだよ。どうすればいいと思う?」
「まず病院に行くことをお勧めする」
「違う。おれは頭はおかしくなってない。まじのやつだって」
「わかった。とりあえず帰って寝ろ。そしたらその機械は消えてなくなってるからさ」
「別におれの妄想じゃないって。相談くらい乗ってくれよ」
「なら捨てろよ。それで解決。はい終わり」
「適当だなー。もうちょっと真剣に考えてくれたっていいじゃないか」
「なら使ってみろよ。そんで金入ったら後でおれに奢ってくれ」
「…相談相手をミスったよ」
「はぁもう押しちまえよ。な、もうこれでこの話終わり!」
そういうとAは話を切り別の話題に切り替えた。まぁ流石にこんなこと言われたら頭おかしいと思われるからただネタでやってるやつぐらいしかないしな。けどAの言ってみた感じ押してみたい気もする。あぁまじでどうしようかなぁぁ。
帰宅後
やはり機械のことが気になってしまう。押してしまうか押してしまわないか。あぁ悩む。この機械の事は半信半疑だけどもしと考えてしまう。もうこの悩みを解消するには押すしかない。押します。えい!
ポチッ
ピッピッピ 2人
え?まじ?おれ2人から嫌われてるの?うっそまじ。「割とショックでかいわ。」
嘘か本当かわからない結果に落ち込んでいると真偽が判定するものが機械から出てきていた。
「え?2万円?…2万円か。まじ本物?」
本当に出てきた2万円に驚きを隠せないおれ。自分が持っている1万円と比較してもなんら変わりない。もしかしたら巧妙な偽札かもしれないが本物だった場合この機械は説明通りになっているとほぼ断定してもよい。ただ気になる点は偽札なのか?本当に嫌われているのかという2点である。前者は銀行なりに行けば確かめられるが後者は実際やってみなければどうしようもない。
「偽札かどうか確かめてそれからどうするか決めるか」
後日確かめてみると本物のお金であった。となればあと一つの嫌われているという点。嫌われるのは嫌だが苦学生の身である主人公にとっては喉から手が出るほど欲しいものであった。
「うーん、嫌われるのは嫌だけど。まぁ明日やってみるか」
不安を抱える主人公であるが覚悟を決めた。
「おはよA」
「おはよ主人公。あれ?お前この講義とってたっけ?」
「いやとってないけどさ、どんな感じなのか気になって。もしよかったら来年にでも単位稼ぎでとろうかなって」
「なんだお前、昨日といい今日といい。お前やばい薬でもやってんじゃねえのか?」
「やってないよ!てかまぁあれだ、昨日のことは忘れてくれ。あれは今のおれでも思うように頭がおかしかった。」
「いや忘れられるわけないだろ。まぁいいや、この講義グループワークあって先生が勝手にグループ決めるから」
「お、そうなんだ。めんどくさそうだな」
「案外そんなこともないぜ。課題のレポートがめんどくさいだけで」
こんな会話をしていると先生が入ってきた。
ガラガラ
「それでは講義を始めます。このプリントを回すので一枚取ってください。今回の講義は自分のキャリアを今後どうしていくかについてグループを作って話し合ってもらいます。それじゃあ今からグループを決めるんですが…
えっと、んじゃそことそと2人でそれから…」
各グループが決められていきおれは通路を挟んで隣のやつとグループを組まされた。
「それではキャリアについて話し合ってもらいます。自分は将来どんな職業に就きたいか。なぜその職業に就きたいのか理由をプリントに書いてください」
なんか高校にもこんな授業あったような気がする。自分のキャリアなんか考えたことはないけど今の目的は…
「書けた?おれはBよろしく」
「主人公だ。よろしく書けたよ」
「主人公君だね、よろしく。主人公君はどんな職業についてーー」
「B君のから聞きたいな、先に発表してくれよ」
「え?あ、おれから?あぁいいよ。といっても別に夢があるわけでもないから大学出て普通の会社に就職って感じしか思いつかないかなぁ」
「普通の会社の普通って何?」
「なんだろ。みんなと一緒な感じかな。笑」
「ねぇそれって大学行ってる意味あるの?」
「え?いや、みんな行ってるし就職するときに何かと必要だし。」
Bは若干不思議そうな顔で言った。
「みんな入ってるから入るの?何も考えずに入ってたんだねB君は。それに知ってる?君は普通に大学に行ってるみたいだけど世の中君の年齢で働いてる子もいっぱいいるんだよ?そりゃあ大学行って一流企業に就職できればいいけとさ、高卒の人でも一流企業に入って稼いでる人もいるんだよ。何も考えずに大学に入って就職するなんて呑気な考えしてるんだね君は。」
おれはわざとらしく嫌な感じで言ってみた。
「そこまでいう必要なくない?」
「おれはただ思ったことを言っただけなんだけど何かおかしい?」
「……」
Bは黙りこくった。さすがにこれだけ言われればそうだろう。おれだってそうなる。
「まぁそんな感じかな、これから君の人生の参考にしてほしいけど。次は僕の番だね」
こうして授業は進んでいき
「時間になったのでこれで終了します」
Bは無言で立ち去ろうとした。
「さよならの挨拶ぐらいしないの?」
「あぁ、じゃあな」
「うん、またね」
嫌われる方法はいろいろあったが実験として行いたかったので人数は1人にとどめた。悪口ではないがうっとうしいキャラを演じてみた。悪口をずっと言い続けるよりこういう人の方が喧嘩にならずかつ嫌われると思ったからだ。結果は多分成功したと思う。帰ってから確認してみよ。
「主人公、この講義どうだった?」
「あぁまぁそれなりに楽しかったよ。この講義簡単だな」
「レポート点が高いからそっちが大変だけどな。んじゃまぁ次の教室に移動するか」
こうして今日の講義が全ておわり少し緊張しながら帰路に着く。Aと会話をしていたが内容はほとんど覚えていない。あの機械のことで頭がいっぱいで興奮気味かつ不安な感情であった。
家に着き機械のスイッチを押す。
…ピッピッピ
3人
嫌われた事に成功したようだ。そして1万円が出てきた。この機械は今嫌われている人数を表示しているようだ。これでこの機械は本物のようだ。これで苦しい生活から抜け出せて楽することができる。しかし、今回で改めて嫌われるのは嫌だと思った。やはり気持ち良いものではない。だからこの機械は使うのはやめようと思った。
昨日、Bに嫌われて合計3万円を手にしたわけだが気持ち良いものではない。気分が良くない。だけどほんの少し、ほんの少しだけお金が入って嬉しい気持ちももちろんある。まぁあれだな、もう使わないって決めたから捨てるか。
そう決心したおれは朝、粗大ゴミにこの機械を出して登校した。それからは人の気持ちについてより考えるようになった。おれはこの機械を通じて良い経験になったと。
それから数週間後、大学から帰ると
「え?なにこれ、、」
部屋が荒らされていた。部屋を調べると通帳と金目のものがなくなっていた。警察に連絡して詳しく調べてもらうとどうやら泥棒に入られたらしい。
「なんでおれなんだ、、、学生のおれなんかなんで入られたんだ」とりあえずパニックになっている頭を一旦落ち着かせた。今通帳やら何やらない状態で生活するのはまず無理である。この間バイト代をもらったばかりであるが貯金したばかり。所持金は1658円。このままじゃ家賃が払えなくなって追い出される。最悪だ。これからどう生きていこうかと途方に暮れていた。
「そうだ、とりあえずAに電話しよう。」
携帯を取り出してAに電話をかけた。
プルルルル、プルルルル、
「ぁい、もしもしぃ…」
「あぁ、Aかおれだ。実は大変なんだよ、おれ泥棒にあってさ、おれパニックで、、。悪いんだけどさ、今日お前の家に泊まらしてくれないか?」
「あぁ、ごめん。おれ今日病院行ってさ、、インフルだったんだ。ゴホッゴホッ
力になってやりたいんだけどさぁ、インフル移ったらたいへぇんだろ?それにゴホッ治療費もかかるし。悪いが別のところあたってくれ」
「まじかよ大丈夫なのか?だから今日お前学校来てなかったのか」
「ほんとにごめんよ。力になれなくて」
「いいよ。ありがとう。おれもごめんな?こんな時に頼んじまって。早く良くなる事を祈るよ。お大事に。じゃあな」
「あぁ、、じゃあ」
プツ
まじかあいつインフルなのか。今日はもう仕方ないからネカフェに泊まるってさっさと寝るか。
その日は近くのネカフェに泊まって夜を明かした。
次の日警察から軽く聴取みたいなことをされた。そして部屋を今日中に入れるようにしてくれた。さすがに泥棒に入られたので大家さんに頼んで部屋の鍵を替えてもらった。今月の家賃は事情を説明したら待ってくれるが、高校から貯めてたお金が全てなくなった今、バイト代ではやっていけない。このままだと大学を中退して働かなければならない。おれは将来のことを考えただけで絶望した。
「だめだ、人生終わった」
もう人生を諦めているとこの家にダンボールが届いた。
「こ、これは…!?」
中を開けるとあの機械が入っていた。なぜ今?このタイミングで?もしかしてこいつを送ったやつが全部やったことじゃないのか?
そんな事が頭に浮かんでいたが今はどうでもいい。今この機械を使わなければ確実に人生が終わる。
「これは必要なことだ。生きていく上で必要なことなんだ」
自分に言い聞かせるように言い訳するように言った。その後………
「大家さんこれ今月分の家賃です」
「主人公君、どうしたんだいこれ。金がなくなってるんだろ?」
「あぁ、親戚の方が援助してくれて。ある程度は生活できるようになりました。」
「そうか、そりゃよかったね。ご両親が亡くなって大変だろうに」
「いえ、交通事故なんで仕方ないことですよ。ではこれで」
次の日おれはあの機械を使って来月までの家賃代を稼いだ。仕方ない、仕方ないんだ。生きていくために必要だったんだ。
あれから約1週間嫌われ稼いだ。初めは前のBにやったようにしていたが、一回に嫌われる人数を増やして効率よく稼いだ。その結果バイトは少なめだが大学の人数合わせ計数十人に嫌われた。だが、今おれの手元には60万ほどある。貯金額の半分をたったこの日数で集めた。バイトより楽でなおかつ簡単である。前より嫌われることに対して抵抗がなくなっていった。多分慣れだろう。まぁどうでもいいや。
「よ、主人公。久しぶりだな」
「おぉAか。インフルはもう大丈夫なのか?」
「大丈夫治った。そんなことよりお前の方が大変だったろ。大丈夫なのか?今の生活は」
「あぁ、なんとかやれてる。たまたま通帳持ってたから助かったよ。」
「あれ?そうなのか…ならよかった。あ、それと…これなんだけど」
Aが見せてきたのはどうやらマンションやらアパートの物件のようだ。
「お前まだあの家住んでんだろ?一応さおれなりに何か力になれないかと思って探してみたんだけど。」
「お前ほんといいやつだな、ありがと。けど鍵替えたし大丈夫だ。」
「けどまた入られるかもよ。一回入られた家ってやじゃない?まぁけどやっぱ金かかるからそう簡単には引越せねーよな、わりぃ先走って」
確かにAの言う通りまた入られるかもしれない。しかもあれを盗まれたら今度こそ終わりだ。
「ちょっと見せてくれよ。確かにお前の言う通り引っ越した方がいいかもな。」
「え?まじ?けどおれ金のこと考えずに選んじまったよ。」
「いや、金は大丈夫だ。貯金した分と新しいバイト始めようと思ってるからそっちの心配はしなくていい。」
「そうなのか、ならこの物件なんだけど…」
勿論新しいバイトというのは嘘である。嘘というかあの機械を使うんだけどな。あの機械さえあればもう金に困ることはない。ここからおれの人生を薔薇色にさせるんだ!
新しい住居に引っ越して新しい家具、新しい家電製品、新しいゲーム全て買い揃えた。今とても清々しい気持ちになっている。両親が死に絶望、そして泥棒に入られ無一文になり絶望。この絶望を乗り越えたから今の自分がある。苦しみからだいぶ解放された気分だ。だが結果として多くの人から嫌われた。けどまぁ仕方がない、代償は必要だ。だが生憎もう嫌われることに関して何も感じなくなった。感覚が狂ってしまっているようだけれどもまぁいい。最近は嫌なやつという噂が流れて関わってもいない人が悪印象をもってくれるため何もしないでお金が入ることがある。まさに夢のようだ。別に嫌ってるからといって何か害を与えてくるわけではないようだ。腫れ物を扱うように誰も何も話してこない。あいつ以外は…
「なぁ主人公。お前どうしちまったんだよ」
「何が?」
大学の食堂で開口一番言われた。
「お前今どんな噂が流れてるのか知ってるのか?めっちゃ嫌われてるぞ」
「あぁそれが?」
「それがって…まぁ何人かには主人公がそんなやつじゃないって誤解を解いてるんだけど、いろんな噂がたっちまってるからな。どうにかしねぇと」
チッ、余計なことしやがって
「なんでた?」
「え?」
「噂は全部事実だぜ。おれがやったことだよ。だから誤解を解く必要はない。誤解してるのはお前だからな」
Aは驚いた顔をしていた。
「なんで、そんなことしたんだよ」
「なんでってお前に関係ないだろ」
「関係なくないだろ、友達だろ?…なぁもしかしてなんか悩んでんのか?おれがいつでも相談にのるぞ」
Aは本当にいいやつだと思う。こんなおれに友達と言ってくれるのだから。けれど、今は単に目障りなやつ。
「勘違いすんな、別に相談事なんてない。そういうお節介が嫌いなんだよ。ちっとは考えろよ。」
「あ、わりぃ…」
「てかほんとおれに関わんなよ、目障りだから。」
「はぁ?目障り?」
「あぁ目障りで鬱陶しい。」
Aは呆れた顔をしていた。
「はぁ…主人公。一体お前がどんな気持ちで言ってんのかわかんないけど、とりあえずそんな幼稚な煽りはやめろ。ほら、さっさと次の教室行くぞ」
本当になんなんだ?こいつは。普通ならもう関わろうとしないだろ、俺みたいなやつに。
俺は若干呆れながら教室には行かずに帰ることにした。
「おい、主人公!どこ行くんだ」
後ろから声が聞こえるが無視して歩く。周りからブツブツと噂されるのが聞こえるがどうでもいい。とりあえずまた何人かに嫌われて稼ぐか。そう考えて大学から出て帰路に着いた。
家に帰って少しした後Aが来た。なぜこんなにこいつはしつこいのだろうか全くわからない。おれは居留守を使って無視を決め込んだ。そして10分ぐらい経つとAは帰って行ったようだ。これでAにも嫌われておれの前から去ってくれた。とりあえず貯金100万目指して明日からもどんどん稼いでいくか。
「なんでだ、なんなんだあいつ…!」
おれはいつものように嫌われて金を稼ぐ事に励んだ。ただなぜかその場から少し離れた辺りにAが居る。別に話しかけてくるわけでもなくただじっとこちらをみてくる。来る日も来る日もこんなことをしてこられたらたまったもんじゃない。おれはAと話すことを決心して大学終わりに誰もいない教室に呼び出した。
「なんだ?主人公。急に呼び出して」
「とぼけるなよ。いつもいつもおれのこと見てきて、気持ち悪いんだよ。」
「あぁなんだそのことか。なんだろ、主人公変わったなーって思ってさ、なんでこんなになったのか分からなくてな。」
「別に、対して変わってねぇよ。ただ自分に正直に生きてるだけだ」
そう、おれは正直に生きている。その結果がこれだ。今まで苦しい思いをしてきたんだ。きっとこれは神様の贈り物なんだ。おれはもうこれから苦しい思いをせず生きていくんだ。
「そうなのか…あと金はどうした?前まで節約してたのになんでいきなりふんだんに使うようになったんだ。」
「金があるから使ってるだけだ。悪いか?てかもう何も質問してくるな。おれからのお願いはもうこっち見るな。視線を感じて気持ちわるいからな。」
「なんでそんなこと言うんだよ。俺たち友達だろ?」
Aはそんなことを平然と言う。なんでこんな扱い受けてんのにここまで言えるかなぁ
「友達?とぼけるなよ。友達に対してこんなことを言う奴いるか?考えろよバカか。」
「おれは…」
「もう黙ってくれよ!話しかけるな!いいな」
なんでこいつはここまでおれに構う?イカれてるのかこいつは。普通なら今頃みんなと同じようにおれのことを嫌ってるはずなのになぜなんだ。わからない。理解できない。
「頼むからおれに構わないでくれ!」
「…」
Aは黙ったままこちらを見て近づいてくる。やばい。おれは恐怖を感じた。なんでこんなに関わってくる。やめろ近づくな!
「や、やめてくれ、頼む。ウエッ」
吐き気すら感じた。拒絶反応が起こっている。
「主人公…どうしちまったんだよ一体」
「黙れ。嫌だもう嫌だ…おれに優しくしないでれぇぇ!」おれは無我夢中で教室を出て一目散に走った。走って走ってやっと家にたどり着いた。だがまだ吐き気や恐怖があり、全身が震えている。
「はぁ…はぁ…怖い、苦しい…」
なんだか苦しい。なぜだ。おれは幸せなはずなのに。金があるのに。これからなんでも自由に思いのまま生きていけるのに!なのになんでこんなに絶望してるんだ!
「あぁそうか…。おれめっちゃ嫌われてたわ」
Aに優しくされて嫌われてた悲しみが一気きた。初めの方は実験みたいに感じで嫌われて、それから次はどうしてもお金が必要になって、そのまた次は自分の欲が出て。嫌われる事に対してもう慣れてると思ってたけどそうじゃなかったんだな…
「なんか…もういいや…」
おれはもうこんな人生を送りたかったのだろうか。大学出て奨学金返すために働いてその中で素敵な人と出会って結婚して…。もう心が壊れてしまってる以上多分もう普通の接し方はできない。もう元には戻れない。残るのは罪悪感と苦しみだけ。この苦しみから解放されたくてある一つの選択をした。
「ねぇ聞いた?あそこのマンションに住んでる学生自殺したらしいわよ。」
「えぇほんとに?かわいそうに。なんで自殺したのかしら…」
マンションに警察や救急車がきてその周りの野次馬がそんな噂をしていた。
「ほんと観察しがいがあっなぁ主人公は。いつまでもずっとそばにいる友達役は大変だったぜ。まぁけどああまで金を稼ぐとは思わなかったぜ。いいもの見させてもらったよ主人公」
Aはあの機械を持ちながらうっすら笑みを浮かべた。