第10話:リーマンショックの原因と実情

文字数 2,026文字

 2007年、サブプライムローンは、もともと返済能力が低い人が利用していたため、債券が回収できなくなり資金繰りが悪化していた。2007年2月、アメリカ市場ではサブプライム融資関連株が、急落した。さらに影響は拡大しNYダウは前日比100ドルを超える下げ幅を記録するなど、関連銘柄も大きな影響を受けた。

 しかしそれでも、まだ、誰もが事の重大さに気付いてはいなかった。その後、2007年7月、アメリカの大投資会社「ベアー・スターンズ」が実質的に破たんした。危機に瀕する直前までベアースターンズは黒字見通しを発表していたにもかかわらず、わずか数日で資金繰りが悪化した。170億円あったはずの資金はあっという間に底をつき、破たんは急転直下の勢いでやってきました。

 原因は徐々に表面化してきたサブプライム損失を危うく思った顧客や貸し手がベアー・スターンズから資金を撤収し、さらに金融機関が一斉に返済を迫る「取り付け騒ぎ」が起きたためです。しかしベアー・スターンズは危機に瀕した直後、アメリカの銀行最大手、JPモルガン・チェースにタダ同然の破格値で買収され、なんとか一命をとりとめました。

 2007年8月、BNPバリパが、サブプライム問題を深刻に受け止め、パリバ傘下のミューチュアル・ファンドが投資家からの解約凍結を発表したことで大混乱になった。かねてから懸念材料のあったサブプライム関連商品が含まれた投資信託を解約したくても解約できない事態に陥った。2007年8月9日に解約の凍結が発表されたことで為替相場は急変、欧米株は急落、14日の日経平均は一時、600円安と深刻な事態になった。

 ローンの金利が高くなっても、この時期アメリカの地価や住宅価格がどんどん上昇しているので、利用者が損をすることはないだろうと楽観的に考えられていた。このようにサブプライムローンは「おいしい話」で塗り固められていたので、誰もが一斉に飛びついたとしても無理なかった。一方で、ローン会社は債券を銀行に売り銀行は債券を証券化して投資家が買えるようにした。

 それが、MBS「モーゲージ債」と呼ばれた金融商品。さらにMBSやほかのローン商品とごちゃまぜにしたCDO「債務担保証券」という怪しげな金融商品も発売されリスクが低くリターンの高いデリバティブ「金融派生商品」として大人気になった。ローンをただ転がしただけなのに大きなお金を生み出すことに成功した。しかしここで注目すべきはローン会社の怠慢。

 ローン会社は結局債券自体をほかの会社に売り飛ばしてしまうので、ローンを組む人がどんな支払い能力が低くても気にしませんでした。お金を回収できるかどうかは二の次で、契約させたもの勝ちの杜撰「ずさん」な審査だった。アメリカでは債券の発行元を分析し、信用度の格付けを行う格付け会社があります。

 当時ムーディーズやスタンダード・アンド&プアーズ、フィッチなどの格付け会社は、サブプライムローンの中身が空っぽなのにもかかわらず、この債券に「AAA」トリプル・エーという最高ランクを付けていた。投資家は債券を信用し、なんの疑いも持たず次々に債券を購入した。ムーディーズなどの格付け会社の信用度が高くアナリストや投資家に信用されていた。

 当然サブプライムローン債権を保有する多くの投資家や銀行はリーマンショックで大きな損失を出しました。なぜアメリカの代表的な格付け会社が、中身のない金融商品に「AAA」トリプルという最高ランクを付けたのか?それは会社の根底にある「売れればどんな手を使ってもいい」という無責任な考え方とアメリカを牛耳る大手企業の抜き差しならない利害関係があったためだった。

 大手銀行のゴールドマン・サックスやリーマン・ブラザーズ、メリル・リンチ、・ベアー・スターンズというサブプライム・ローンの立役者と、JPモルガンなどの金融複合企業、さらにムーディーズなどの格付け会社はサブプライム関連商品を売って大儲けするため、水面下で結託していた。そのため格付け会社が、サブプライム関連の商品に「AAA」トリプルという最高評価を付けていたのだ。

 この評価を信用した多くの人々がなんの疑問も持たずサブプライム・ローンを組み、多くの投資家がデリバティブの購入に誘導されました。そしてリーマンショックの傷はどんどん深くなっていくのです。住宅供給もすでに飽和状態に達し買い手がつかない家があふれた。頼みの綱の地価や不動産価格も暴落し多くのローン利用者が家を手離さざるを得ない状況になった。

 ローンが返済不可能になると債券はたちまち不良債権化し各地でサブプライム問題が一気に表面化するとともに、世界経済の不安材料となってしまった。投資家が自分の持っている証券にサブプライム関連債券が入っている事を知り損失を恐れ慌てて売りに転じ市場は大混乱。ローン引き受けの筆頭だったリーマン・ブラザーズは、もろにこの影響を受けた。
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