前世譚8 ❀ 子どもの声

文字数 687文字

年が明けてすぐ、寒い日のお昼頃だった。


聖堂で祈りを捧げていたアリエッタは、建物が急に騒々しくなったことに気付いた。

焦げ臭い……
火事よ!
台所から通路へ、広間へと炎は広がる。


修道院は、さながら地獄と化した。

早く! 外へ逃げるのよ!
子どもたちの避難が先よ!

修道院で育てていた孤児たちが、出口へ優先された。


子どもたちの中には恐怖で足がすくみ、泣き出す子もいた。

なにもたもたしているの!

どいて!

修道女の中には、我先にと押し合い、子どもを突き飛ばして外へ出る者もいた。
助けて……!!
今、子どもの声が…
誰か助けて!
アリエッタは、逃げ出す人たちと逆方向に走り出した。

あなた、どこへ!?

そっちは火の方角ですよ!

子どもが、助けを呼んでいるのです!
止める院長を振り切り、アリエッタは駆けた。
怖い……怖いよう! 誰か……誰か!!
(どうしてこの悲鳴が、誰にも聞こえていないの!? 私にだけ聞こえるの……?)

悲鳴を頼りにたどり着いたのは、聖堂だった。

怖い……怖い……みんなはどこ? ひっ…ひっく

砕けたステンドグラスの上で、少年は泣いていた。

ヨハン!
ま……マリー先生……?
怪我は!? どうして、こんなところに1人で……
1人で本を読んでいて……そうしたら火事が……こほっ、けほっ!!
彼はあちこちに火傷が見当たり、煙で喉を痛めたようだ。
(なんとしても、この子を外へ……)
ごめんなさい……先生、ごめんなさい……

大丈夫よ。一人でよく頑張ったわね。


すぐにお外へ出ましょう

その時、頭上でバキバキと音がした。


燃える柱とが降ってくる。

危ない!

アリエッタ少年の手が引かれ、落下物をさける。

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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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