プロット

文字数 2,285文字


意識を電脳世界のアバターに転送して参加するオープンワールド「ソムニウム」を通じて世界中の人々が交流を持つようになった時代。RPGとしてのクエストや依頼だけでなく現実世界「レム」の物品の取引や国境を超えた議論・情報交換の場としても利用されるこの世界を、夏休み真っ只中の高校生の佐橋千尋と赤城千翔は今日も楽しんでいた。
ある日、千尋と千翔は近所で亡霊が何度か目撃されているという噂を聞く。気になって調べたところ、まさに亡霊が出現する瞬間に出くわす。死んだことすら記憶していなかった亡霊だが、ソムニウムに強い関心を抱いていた。ソムニウムこそ亡霊の未練だと判断した千尋・千翔・亡霊の三人は、亡霊の記憶を戻すことと同時にどうすれば無事成仏できるかと様々な知恵を巡らせる。
同じ頃、ソムニウムでは不可思議な怪異やクエスト難度の設定ミス・伝達系統の不調など様々な場面でバグのような現象が生じていた。ソムニウム内でも屈指の実力を持つ千尋と千翔はその原因の調査と解消を命じられる。


試行錯誤の末、千尋と千翔は亡霊をソムニウムに連れて行く必要があると結論づけた。しかし実体のない存在をレムからソムニウムに簡単に送り込む方法などあるはずもなく、なんの成果も得られない日々が続くことになる。同時並行で行っていたソムニウム内のバグの調査も、多少の進展こそあれど根本的な解決には至ってはいなかった。
ある日、ひょんなことからソムニウムへ意識を転送する装置が亡霊を認識することに気づく。そこで三人は大急ぎで新しいアカウントとアバターを取得し、見事亡霊をソムニウムに招くことに成功する。
ソムニウムを案内して回る中、千尋と千翔は亡霊が険しい顔つきをしていることに気づく。理由を聞いてもはぐらかされてしまう。一通り案内を終えてレムに戻ったのち、二人が調査しているバグについて話したところ、亡霊にはその原因に心当たりがあるという。その詳細についてははぐらかされてしまうものの、明日以降は生じなくなると告げられる。そして意味深な言葉を告げて亡霊は消えてしまった。
それから二人は亡霊と出会うことがなくなり、同時にソムニウムでのバグもほとんど生じなくなった。


夏休みも終わりが近づいた頃。登校日で学校を訪れた二人は屋上で消えたはずの亡霊と出会う。亡霊は学校、ひいてはレムそのものを侵蝕し、二人に本当の目的とこの世界の真実を語る。
オープンワールドと認識していたソムニウムは実は月面に作られた現実世界の実験施設であり、20年ほど前から仮想空間での生活が人間の精神に与える影響についての実験「ソムニウム計画」が行われていた。千尋と千翔が現実世界と認識していたレムこそが仮想空間であり、高校生である千尋と千翔は仮想空間で誕生したデータ状の擬似生命である。二人がソムニウムで使用していたアバターは人格を潰して鋳造されたホムンクルスであり、ソムニウムで使用したスキル・魔術等は月面の環境と(千尋と千翔にとって)未来の技術を用いて再現されたものであった。ソムニウム計画は随所で倫理や人道に反した行為が平然となされており、そのことを知った亡霊こと板垣行雄らはサイバー攻撃を仕掛け実験を中断させようと目論んでいた。亡霊とは板垣がハッキングに成功して仮想空間レムに侵入した際のアバターであり、ソムニウムで発生したバグは板垣らのハッキングによって生み出された不具合であった。
準備を整えた板垣はレムのシステムを侵蝕・掌握し、二度とこのような実験が行われないようレムそのものを破壊しようとしていた。千尋と千翔はレムが破壊される前にレムの住人全員をソムニウムに非難させようと行動するが、板垣の侵蝕によってソムニウムの各地でバグが発生し安全ではないこと・そもそもレムの住人全員が同時にソムニウムに避難できるほどアバターが存在していないことから、生き延びるためには板垣を止めないといけないことに気づく。また、真実を知った住人たちの中で差別や対立・暴動が生まれ、ソムニウム内は大混乱に陥る。



千翔が「肉体を持った人間だろうとデータ上の擬似生命だろうと命・意識に貴賎はない。このままではレムとソムニウム両方が破壊されて全員が死んでしまうから力を貸して欲しい」と説得することで混乱を収めることに成功する。その間に千尋らがソムニウム職員らと協力してカウンターとなるシステムを構築し、千翔をレムへと送り込む。最大限のバフとシステムの補助を得た千翔とシステムの一部を掌握した板垣との激戦が繰り広げられた末に千翔が勝利し、システムへの侵蝕をとめることに成功する。しかし、すでにレムへの侵蝕とサーバーへの負荷は相当進んでおり、外部からのアクセスがある以上いずれ崩壊する運命にあった。また、千翔自信がシステムと一部同化してしまったためにソムニウムへ帰還させることが困難となっていた。千尋が親友をどうにかして救えないか足掻いているところ、板垣がレムをサーバーから切り離してインターネットに放流させる。レムに外部からアクセスする手段はすでに失われており、結果的にレムおよび住人全員の死の回避とソムニウム実験の中断の両方が達成されることになった。

数年後。千尋は定期的なカウンセリングと精神検査を受けながらプログラマーとして現実世界で活躍していた。ある日、突然届いた差出人不明のメールを開くとそれはオープンワールド「レム」への招待状であった。手を振るわせながらアクセスすると、そこには崩壊寸前の幻想的な世界、そして千翔をはじめとしたかつて取り残された住人たち全員が待っていた。

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