第4話 ずっと一緒
文字数 869文字
「今日も来てくれてありがとう」
部活で忙しいはずの和真は、毎日かかさず見舞いに来てくれる。
「調子はどう?」
彼はベッドのそばに立ち、やさしい顔を私に向けた。
「悪くないよ、この足以外は」
私は動かない右足をさする。
リハビリを続けてはいるけれど、この足は一生このままみたいだ。
バレリーナへ続いていたはずの道には、もう戻れない。
「でも私のケガは自業自得だし」
和真は表情を硬くした。
「死んだチカのことを思えば、耐えるしかないよね」
あの日、チカから殺したいほど憎まれていると知った私は、七階の窓から飛び降りたにも関わらず命をとりとめた。
反対にチカは、毒入りのアップルパイを残さず食べて死んでしまった。
こんな事件を起こし、双方の家族に申し訳ないと悔やんだけれど、チカのママは私を責めず、毎日のように励ましに来てくれる。
私の親はバレエが出来なくなった娘にがっかりしたらしく、一度も会いに来ないので、チカのママが面倒をみてくれるのはとてもありがたいことだった。
「あなたの中にチカはいる」
彼女はそう言って、泣きながら私を抱きしめる。
不思議なことに、和真も同じようなことを言うのだ。
チカが大好きだった私達は、そんなふうに思い込み、傷を癒し合うように寄り添って生きていくしかないのかもしれない。
「キスして」
ねだれば和真は断らない。
「ぎゅっとして」
強く抱きしめられると安心する。
「チカ」
切なそうに呼ぶ声が耳をかすめた。
「違うよ、璃子だよ」
和真は私から離れ、両手で顔を覆 う。
チカの死が悲しいんだね。
わかるよ、私だって悲しい。
「チカが好きだった……璃子と競争するように甘やかしてきたのに、こんなに傷付けてごめん。息抜きなんて誘いに乗った俺が悪い。本当にごめん……頼むから戻って来てよ」
「死んだ人は戻らないよ」
和真の顔に、絶望の色が広がっていく。
「チカの分まで私が愛してあげる」
想いをこめてキスしたのに、和真の唇はただただ震えるばかりだった。
(終)
部活で忙しいはずの和真は、毎日かかさず見舞いに来てくれる。
「調子はどう?」
彼はベッドのそばに立ち、やさしい顔を私に向けた。
「悪くないよ、この足以外は」
私は動かない右足をさする。
リハビリを続けてはいるけれど、この足は一生このままみたいだ。
バレリーナへ続いていたはずの道には、もう戻れない。
「でも私のケガは自業自得だし」
和真は表情を硬くした。
「死んだチカのことを思えば、耐えるしかないよね」
あの日、チカから殺したいほど憎まれていると知った私は、七階の窓から飛び降りたにも関わらず命をとりとめた。
反対にチカは、毒入りのアップルパイを残さず食べて死んでしまった。
こんな事件を起こし、双方の家族に申し訳ないと悔やんだけれど、チカのママは私を責めず、毎日のように励ましに来てくれる。
私の親はバレエが出来なくなった娘にがっかりしたらしく、一度も会いに来ないので、チカのママが面倒をみてくれるのはとてもありがたいことだった。
「あなたの中にチカはいる」
彼女はそう言って、泣きながら私を抱きしめる。
不思議なことに、和真も同じようなことを言うのだ。
チカが大好きだった私達は、そんなふうに思い込み、傷を癒し合うように寄り添って生きていくしかないのかもしれない。
「キスして」
ねだれば和真は断らない。
「ぎゅっとして」
強く抱きしめられると安心する。
「チカ」
切なそうに呼ぶ声が耳をかすめた。
「違うよ、璃子だよ」
和真は私から離れ、両手で顔を
チカの死が悲しいんだね。
わかるよ、私だって悲しい。
「チカが好きだった……璃子と競争するように甘やかしてきたのに、こんなに傷付けてごめん。息抜きなんて誘いに乗った俺が悪い。本当にごめん……頼むから戻って来てよ」
「死んだ人は戻らないよ」
和真の顔に、絶望の色が広がっていく。
「チカの分まで私が愛してあげる」
想いをこめてキスしたのに、和真の唇はただただ震えるばかりだった。
(終)