第5話 長寿の秘訣?

文字数 1,406文字

 90歳になる友達がいる。銭湯で知り合って、銭湯以外でも交際させて頂いている。
 この方は、ほんとうにお元気で、毎日1万歩歩いて、いつも朗らかで、ニコニコと人の顔を真っ直ぐ見て、冗談のような、真面目なような、面白い話をよくしてくれる。
 とにかくしっかりなさっている。ぼくの方が、よっぽどヘナチョコだなぁ、と会う度に感じる。
 いや、ほんとに「トシは、こう取るものだ」といった、見本のようなお方である。
 出逢って、もう6、7年経つ。少しモノ忘れが、ほんの少しあるけれど、全然大丈夫。
 
 よく一緒にいて、僕が感じること。たぶんこれは、そのまま、健康法、というか、うん、善い生き方=健康、といった図式に当てはまりそうなので、書かせて頂く。
 といっても、ご本人は、それを当たり前にしていらっしゃる。ぼくが勝手に感服しているだけで、もしかしたら一般的にも、たいしたことではないのかもしれない。でも、ぼくには、とてもたいしたことに思える。この人と交流できるだけで、奈良に引っ越してきて良かったと思う。
 この方にとっての当たり前のことを、当たり前のように思えないぼくが書くのだから、ひとりで感心して書くことになる。

 ・不平不満を、本気で言わない。(モンクのようなことは、すべて冗談にしてしまう。こちらとしては、共感しながら笑うことになる)
 ・「足りていることを知っている」。ドストエフスキーも「人間は自分が幸福であることを知らない」(だから不幸だと思えるのだ)、みたいなことを云っていたと思うが、この方は、常に「今」を生きていて、今あるもので、自分を楽しませようとすることが、全く自然にできているように見える。
 カレンダーの紙で、立派な紙ヒコーキを作ったり、いろんな形になるパズルを作ったりして、ぼくにくれる。頭を使って、「あるもの」を「楽しいもの」につくる名人のようだ。

 そして、人に、細やかな気遣いをしてくれる。ぼくとふたりだけでなく、他にも何人か一緒にいる時、ひとりだけに気を遣うのでなく、その場にいるみんなのことを、考えている。そういった気遣いは、しかし押しつけがましくなく、やはり自然に、みんなが話し易いような空気にしてくれる。

 憂鬱なところを、まったく見せない。とにかく朗らかで、マイペース。人が好きで、人の気持ちを察して、人を悪い気分にさせない。

 毎日、バナナを1本、必ず食べているそうだ。そして1日1万歩歩くことを、日々の目標にしている。お家へ伺った時、茶の間のカレンダーは予定でびっしりだった。詩吟をやったり(奥さんが教室の先生であるそうだ)、ウォーキングをする会とか、何だかんだと、やることが一杯あるようだった。

 だが、何といっても、心が健康なのだと思った。ネガティブとかポジティブとか、そんなことさえ意識しないように見える。どこまでも広く、これが自分のペース、と、確固たるものが感じられる。といってガンコでなく、とても柔らかい。

 どうしたら、このような素敵なトシの取り方ができるんだろう。ぼくはいつも畏敬の念をもって、交流させて頂いている。
 自分にマネができることは、毎日バナナを1本食べることと、1万歩歩くことだが、それさえ続けることが難しい。
 物事を、あまり深刻に考えないようにする、というのも、会っていて、よく感じる。
 きっと、こんなことをぐだぐだ書いていたり、本なんか読んだりするのは、不健康なのだ。
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