第14話 友達さんの事情その二
文字数 7,678文字
そんなにこの子…駒井さんのこと…
教室を走り去った奈々ちゃんを探すため、わたしは廊下を走りながらそんなことを考えていた。
けど…駒井さん…一体奈々ちゃんに何をしたんだろう…?
さっきの様子を見ると…悪い子には見えないけどなぁ…
「…駒井さん?」
「……」
急に足を止める駒井さんの気配に気づき、わたしも思わず立ち止まり振り返った。
どうしたんだろう…奈々ちゃんに謝るのが怖くなったのかな…
「…どうしたの?奈々ちゃんにちゃんと謝りたいことがあるんでしょ?」
俯いたまま動かない駒井さんを見て、わたしは首を傾げながらも近づいてみた…
「…あんた馬鹿じゃないの?杏奈がそんな事するわけないじゃん。」
「え?」
顔を上げ、信じられない言葉を呟いた駒井さんの顔は笑っていた。それも今朝みたいな可愛らしいものではなく、意地の悪い嫌な笑みだ。
何これ…??さっきの人と同一人物なの??
「あ~あ…可愛いふりすんのも疲れるわぁ。あの女、前から目障りだったのよ…杏奈の邪魔ばっかして…」
「…こ、駒井さん?」
「…馴れ馴れしく呼ぶんじゃないわよ、ブス。杏奈ね、あんたが一番目障りなのよ!地味で冴えない女のくせに雛森君の傍にいつもいて…ただ幼馴染みってだけでべったりして、本当うざい!」
「…えっと…こ、駒井さん…だよね?」
何この変わり様…?
あまりの豹変ぶりにわたしは腹を立て恐れるどころか混乱していた…
目の前にはわたしを憎々し気に睨み付け暴言を吐く駒井さん…数分前のあの可愛らしい笑顔を浮かべる駒井さん…どっちが本物の彼女なのか?
「杏奈に決まってるでしょ!こんな可愛い子どこにいるっていうのよ!!」
あ…自分で言っちゃうんだ…確かに可愛いけど。怒っていても…
「…奈々ちゃんに謝りたいっていうのは…」
「嘘に決まってるでしょ。そもそも杏奈何にも悪くないし~?あいつが勝手に被害者ぶってるだけだよぉ?」
再び浮かぶのは…あの可愛らしい笑顔…だけど言葉には悪意しか込められていない。鈍いわたしにすら分かるくらい…
「杏奈ぁ、実は葉月さんとお友達だったんだよねぇ…?まっ…周りのブス女どもに比べればあの子まぁまぁだったし?だからぁ、見栄え良くなるし、中身ああだから杏奈の可愛さも引き立つでしょ?だから仲良くしてあげてただけなんだけどぉ…」
「…男の子にモテるため奈々ちゃんを利用したってこと?」
「やだなぁ…花森さん怖い事言うねぇ~?ま、そうなんだけど。で、お友達ごっこに付き合ってあげた訳。杏奈優しいからぁ?あはは!」
ツインテールを靡かせ、駒井さんは壁にもたれかかり、腕を組むと…開き直った様にあたしを見て意地悪く笑った。
「それでぇ…葉月さんに好きな子が出来たって相談されてぇ…杏奈協力してあげるって言ってあげたの。」
「…うまくいったの?」
「いくわけないじゃん。杏奈初めから協力なんてする気なかったし。ただぁ…あの子の惨めな姿が見たかったんだよねぇ?ずっと…何かと目立って出しゃばって目障りだったし…」
「…そ、それじゃあ奈々ちゃんはその子と…」
「だからぁ、駄目だったって言ったでしょ?だって杏奈がその子に告白されて付き合ったんだから…。杏奈がちょっと誘惑しちゃったってこともあるんだけどねぇ…ま、仕方ないよね?杏奈可愛いもん。…でもあの時の葉月さんの顔…本当傑作だったなぁ…ははは!今思い出しても笑えるぅ~!!」
周りに人がいないのを良いことに駒井さんは好き勝手言うと今度はお腹を抱えて笑い出した…
酷い…いくら奈々ちゃんの事が気にくわないからってそんな事…
しかも傷ついた顔を思い出して楽しそうに笑ってるなんて…
駒井さんにとって奈々ちゃんは本当に友達でもなかったって事なの?
初めから…利用するために…?
「あとわぁ…葉月さんの噂流してクラスでハブってさぁ?そっからあいつ大人しくなってさぁ!あはは!またやろうかなぁ…」
「奈々ちゃんは駒井さんなんかに負けないよ…強いし…」
「は?何言ってんのぉ?あの女はただ強がってるだけでしょ?それに…今度はあんたを同じ目に遭わせてやろうって…そう言ってんの。」
「…わたし?なんで?」
「…決まってるでしょ…あんたが雛森君の傍にくっついて離れないからよ。邪魔なのよ!前からずっと目障りだったんだから…雛森君には杏奈みたいな可愛い子がお似合いなのよ!あんたみたいに地味で冴えないブスよりね!!誰だってそう思う…あんたと雛森君じゃ釣り合わないでしょ?」
勝ち誇った笑みを浮かべ自信満々にそう言い放つ駒井さんは意地悪だけどやっぱり可愛い…
それに比べてわたしは…駒井さんの言う通り地味で冴えないわけで…
蒼の隣に立つに相応しいとは言えない…
けど…こんな汚い人間に負けるのは…
でも…ここで何を言っても勝ち目はない…だって本当の事だから…
わたしと蒼とじゃ釣り合わない…
「…い、いやいや!わたしまだ蒼を好きって訳じゃ…!!」
「はぁ!?何寝ぼけた事言ってんのよ!?あんないつもべったりしてるじゃない!!」
「いや…あれは蒼が勝手に付いて回ってるだけで…わたしの意志じゃないような…」
「勘違いしてんじゃないわよ!!雛森君だって迷惑してるに決まってるじゃない!!マジうざいんだけど!!」
「勘違いってわけじゃ…」
「とにかく!!あんた、雛森君から離れないと葉月みたいになるからね!!杏奈本気なんだから!!」
「…えっ!?いや、困ります…」
「煩い黙れブス!!」
「…そんなはっきり言わなくても…駒井さん確かに凄く可愛いから仕方ないかもしれないけど…」
「当たり前でしょ!!」
ふんっと鼻息荒くそう言うと満足したのか…駒井さんがさっさとどこかへ消えて行ってしまったのだった。
ああ…行っちゃった…せめて奈々ちゃんに謝ればいいのに…
「…これで分かったでしょ?あいつがどんな女なのか…」
「うわぁ!?な、奈々ちゃん!?」
暫し唖然として駒井さんを見送っていると…どこからともなく奈々ちゃんがひょっこり姿を現した。
今いるのは人気のない体育館裏の雑木林っぽい場所…奈々ちゃんはそんな木々の間から…ではなくひときわ立派に立つ大木に登り仁王立ちしてわたしを見下ろしていたのだ。
凄い…なんか迫力が…ヒロイン漫画の一ページみたい…。
悪に立ち向かう正義のヒロイン登場って感じの。
「…奈々ちゃん、とりあえず降りてきなよ…」
「ふっ、言われなくても…とうっ!」
スタッ…
おお…さすが奈々ちゃん!!木の枝から颯爽と飛び降り見事着地する姿が格好良い…
ゴキッ
あ…崩れた…
「って奈々ちゃん!?大丈夫!?」
「…ちっ…着地が甘かったか…」
「飛び降りるなんて恰好付けた降り方するからだよ!!普通に降りよう!?」
「嫌よ!一度やって見たかったんだもん!!」
「確かに憧れるけども!!」
奈々ちゃんは着地に失敗し、足を捻った…。ここで『痛い~!!』とか泣き言を言わずクールに黙って足を摩るのが奈々ちゃんらしくて恰好良いけど…
「…あ!!ななちんいた!!」
「げっ…日向…」
と、タイミング良くここで現れたのは日向君…と蒼の長身コンビ。どうやら我慢できず二人して追いかけて来たらしい…
蒼…日向君を見張っててって言ったのに…あんなに頼もしく見送ってくれたのになんで??
「ななちん怪我したのか!?」
「べ、別に…ちょっと躓いただけよ…」
「足捻ったのか!?こうしちゃいられねぇ!保健室行くぞ!!」
「ちょっ、ちょっと!!気安く触るな!!」
「馬鹿!怪我人は大人しく運ばれろ!!」
日向君はひょいっと奈々ちゃんを持ち上げると、お姫様抱っこ…ではなくおんぶをして颯爽と走り去って行った…
奈々ちゃんの怒号が廊下に響き遠くなって行く…
でも…顔真っ赤だったな…可愛い…
そして…あとに残されたのは…
「…お前は大丈夫なのか?」
「…わたしはただ見てただけだし…」
わたしと蒼の二人だけ…
人気のない体育館裏に…
『あんたと雛森君じゃ釣り合わないのよ』
駒井さんの言葉が呪いの如く蘇ってきた…
言われなくても分かってるよ…そんな事…
「灯?」
「…何でもない…教室戻らないと…」
さっさと蒼の前を通り過ぎ足早に先を急ぐ…
分かってる…釣り合わない事なんて。
蒼と出会って隣にいるのが当たり前になり過ぎて、わたしはずっとその事実に気づかない振りをしていたのかもしれない…
あまりにも自然に傍にいていつだってわたしを助けてくれて…わたしもそれを無意識のうちに当たり前なんだと思っていたのかもしれない…
蒼は好きでそうしていると言っていたけど…
駒井さん、敵意むき出しで宣戦布告して来たし…勝つ自信なんて全くなければ張り合う気もないんだけど…
大体何をどう勘違いすれば『わたしが蒼にべったりくっついている』状態に見えるのか…?恋する乙女のフィルターは恐ろしい。
「…奈々ちゃん大丈夫かな…」
「…夏が一緒なら問題ないだろ…」
「なんかそれ余計心配だよ…」
「あいつは煩くて単純で女好きで動物馬鹿な奴だけどいざと言うときは頼りになるから…」
「蒼それ日向君の事半分けなしてる…」
「俺は嘘は付けない …」
「分かってるけど…」
きっと本人が目の前にいても同じこと言うんだろうな…いつもの無表情でさらりと…
けど…確かにあの時の日向君は少しだけ恰好良かった…軽々と奈々ちゃんをおんぶして有無を言わさず保健室に運んで行ってしまったあの姿…台詞は昔臭かったけど。
しかもあの奈々ちゃんを『馬鹿!』なんて思い切り怒鳴って一瞬でも黙らせてしまったんだから凄い…
日向君…やっぱり奈々ちゃんの事好きなのかな…。中学のころから一緒って聞いたからもしかして奈々ちゃんがいじめられていたことも…主犯が誰かはともかくとして…
「え?あかりんなんでそれ知ってんの?」
昼休み、わたしはさっそく日向君を問いただしていた。誰に聞いたかは敢えて伏せておいたけど。
「…そ。ななちんクラス中からシカトされててさ…中二の時な。俺ちょうど引っ越して来た時期で何が原因でそうなったかは詳しく知らねーけど…」
「…そっか、日向君は中学のころ奈々ちゃんの団地に引っ越して来たんだっけ?」
「そうそう!あかりんと蒼と同じお隣さん同士な。」
「え!?お隣さんなの!?同じ棟とは聞いてたけど…」
「…いつも一人でいてさ…クラスで陰口叩かれても無視されても全く気にしない様子で堂々としてたんだよな。ある日びしょびしょになって帰って来た時があって『何があったんだ!?』って聞いたら『トイレに入ったら雨に降られただけだ』って涼しい顔して堂々としてんの…」
さ、さすが奈々ちゃん…普通の女の子なら泣いて逃げ出すだろうにそうしないとは…
「で…次の日会ったらビニール傘持って歩いててさ。雲一つない晴天の日にだぜ?不思議に思うじゃん?『なんでそんなの持ってんの』って聞いたら『トイレでずぶ濡れにならない対策よ』って自信満々に答えてた…本当強いっていうか…」
「奈々ちゃん相変わらず恰好良い…」
「うん、ななちんは恰好良いんだ!どんなに酷い目にあっても絶対逃げずに堂々として学校に来てたし…俺、それ見て素直に『こいつスゲー!恰好良いじゃん!!』って思ったんだよな…」
「…それで奈々ちゃんの事が好きになったと…」
「え!?お、俺まだそんな事言ってねーぞ!?あかりんメンタリストなの!?」
普通照れて『違ぇよ!!』とか言って慌てるところ、すんなり認めてしまうのが日向君らしい…顔は真っ赤だけど…
「ふふふ…乙女妄想365日、少女漫画・乙女ゲーム大好きなわたしを甘く見ちゃ駄目だよ?って自分で言うとかなり痛い奴だけど…」
「うん、知ってる。」
「そこは嘘でも一度フォローしようよ!?」
「あはは!あかりんもやっぱ面白い!!俺、ななちんも好きだけどあかりんも好きだ。」
「そこは一人に絞ろう?」
「…う~ん…難しい…けどあかりんには蒼がいるし、俺そうなると勝ち目ねーか…」
「だからなんでそこで蒼なの!?奈々ちゃんと言い…なんでそんな風に見るのかなぁ?わたしと蒼じゃ釣り合わないよ…」
「…え?どこが?俺はお似合いだと思うけど?てか蒼にはあかりんしかいないと思う…」
「ほ、他にもいるんじゃないかな…駒井さんとか…美男美女でお似合いだし…」
「…杏ちゃん?なんでそこで出てくんの?俺、蒼と杏ちゃんは合わないと思うけど…確かに絵にはなるけど…それだけだろ?」
「…日向君…駒井さんの事好きなんじゃないの?なんでそんな事言うの?」
杏ちゃん杏ちゃんて今朝あれほど嬉しそうにはしゃいでいたのに…なんだろう?このあっさりとした反応は…
まぁ…考えてみれば確かに駒井さんと蒼は合わないけど…根本的な物が違うっていうか…
「確かに杏ちゃん可愛いけどさ…他の男が騒ぐほどそこまで好きって訳じゃねーし…。俺、ななちん好きだし…」
「あ、そっか…」
「…うん。それになんかさ…あんま女の子の事悪く言いたくねーけど…怖くね?ああいう自信満々な可愛い女の子って…心の底で何考えてんのか分かんねーっていうか…」
「…確かに駒井さん腹黒いけど…」
日向君の意外な本音についわたしも今朝の事を思い出しそんなことを呟いてしまっていた。
けど…日向君意外と人を見てるんだな…表面的な部分だけじゃなくて内側も…。それとも野性の勘とか?奈々ちゃん曰く日向君はター●ンみたいな野生児じみているそうだから…
「それで?いつから好きなの?やっぱり奈々ちゃん可愛いから出会った瞬間心を奪われたとか!?」
「な、なんだよあかりん!?いきなり恋バナ持ってくんなよ!?」
「いいじゃんいいじゃん!教えて教えて!!わたしに協力出来る事あったらするからさ!!」
「え~?し、仕方ねーなぁ!!」
その後、日向君はノリノリでわたしにななちゃんとの馴れ初めを話してくれたのであった。勿論わたしもノリノリで聞いていたのは言うまでもない。
一方…教室に残された二人は…
「…雛森君のお弁当っていつもおいしそうよね…いいなぁ…」
日向君とわたしがいないので必然的に蒼と奈々ちゃん、二人でお弁当を囲んでちょっと気まずい(主に蒼が)ランチタイムをしていた。
「…葉月のもいつも綺麗だろ…彩が…」
「お母さん見た目だけは気を遣うからね…無駄に食用の花とか桜でんぷんとか散らすのよ。」
「食用の花って刺身の…」
「違う違う。エディブルフラワーって言うおしゃれな花があって…ケーキやサラダなんかにも使われたりするのよ?灯がそれ使ったケーキ見て大喜びだったなぁ…」
「ああ…あいつはそういうの好きだからな…はしゃぎっぷりが目に浮かぶ…」
カラフルな奈々ちゃんのお弁当事情からいつの間にかわたしの話題へと移り…
二人ともわたしがいないからって好き勝手な事ばっか言って…
「…に、しても…二人で何やってんのかしら…」
「…そうだな…何を話しているんだろうな…」
わたしと日向君、二人揃って教室を出て行ったきり戻らないので蒼も奈々ちゃんも不思議に思ったようだ…いや、不審に思ったと言った方が正しい。
「…あの二人のことだ…どうせ…」
「ろくでもないこと話してるのね…」
二人揃って深く頷き沈黙…お弁当を黙々と食べ…
「…葉月、足は大丈夫なのか?」
「ん?ああ、全然平気よ!雛森君も一応心配してくれたんだ?」
「当たり前だろ…。何があったか大体想像は出来るけど…」
「…出来ると思ったのよねぇ…華麗に着地…」
「無茶し過ぎだろ…勢いだけで行動する癖何とかならないのか?いつか灯が真似をしそうで怖いんだよ。」
「あはは!灯には無理よねぇ!!大丈夫大丈夫、いざって時の雛森君でしょ?」
「人を常備薬みたいに…」
「あはは!何それ面白~い!!…って今の何か駒井みたいね…あ~、キモッ!!自分でやっといて寒気するとかありえないわ…」
「…葉月は何故そこまでして駒井を嫌うんだ?確かに気は合わなそうだけど…お前と駒井は正反対だから…」
「わかってるじゃん!さすがねぇ…雛森君。ま、昔ちょっと色々あってね…女同士の泥沼問題的なもん?あたしは灯と違って図太いからすぐ立ち直れたんだけど…」
箸を置くと、奈々ちゃんはふと遠い目をして窓の外を見つめ始めた…まるで何か思い出すように…
それを無言でじっと見守る蒼…そんな二人の姿は傍から見ればなんだか訳ありのカップルのように見えなくもないだろう。
「…でも、あたしがここまで元気になれたのはさ…日向のおかげでもあるんだよね。あいつ無神経だし空気読まないし馬鹿でしょ?常に本能的に動いてるっていうか…」
「それは良くわかる…」
「…だからさ、あたしが気まずい状態にいるって事にも初めは気づかないでガンガン距離詰めてくるわけね。初めて会ったその時から!そっから色々付きまとって来て…本当迷惑で鬱陶しい奴…」
「……」
「けど…あいつがうざくらい構ってくるからそんな事も忘れられて、気が紛れたっていうのかな…ま、殆ど蹴ったり殴ったりだったんだけどね?」
「…葉月…暴力でなんでも解決出来るとは…」
「分かってるわよ!けどあいつの底抜けに明るい能天気な顔見るとそうしたくなるの!!こっちの気持ちも知らないであんな馬鹿みたいに楽しそうな顔して毎朝迎えにくるのよ?うざい以外のなんでもないでしょ?」
「…俺ももしかしてうざいのか?良かれと思ってやっていた事が…」
「灯と雛森君はまた別!あたしだって日向が雛森君くらい落ち着いてたら殴る蹴るなんて暴挙に出たりしないわよ…」
「…そうだな…夏は常に元気が有り余ってるから…。けど、良い奴だ…困ってる人間がいると放っておけない優しい奴だ…あまり邪険に扱い過ぎるなよ。」
「…し、知ってるよ…」
そう呟いた奈々ちゃんの顔は少しだけ赤かった…とかなんとか。
蒼はそんな奈々ちゃんの様子を見て少しだけ表情を和らげたんだとか。
そして珍しい二人のランチタイムは過ぎて行った…
その後は、沈黙のまま…けど穏やかに…