第3話
文字数 15,061文字
その男の名は
理
信念は、真実にとって
嘘よりも危険な敵である。
ニーチェ
第参窩【 理 】
平伊城が落とされた日、その城は燃えていた。
轟々と鳴り響く炎は城を包み込むほどの勢いではあったものの、降りだした雨によって鎮火された。
誰も近づかずにいた城の中で、蠢くものがひとつだけあった。
もぞもぞと、黒い影の山が動いたかと思うと、そこから出て来たのは、紛れもなく1人の人間だった。
目の前にいる男たちを見た後、その中にいた顔に包帯を巻いた男に触れてみるが、ピクリとも動かなかった。
そして辺りを見渡すと、城は徐々に炎が消えているところで、まるでこの世界に自分しかいないかのような感覚に包まれた。
男はそこから這い出ると、門を壊して城の外へ出る。
それからしばらく、男はただ呼吸をするだけの機能を持った、人間ではない何かのまま、目的もなく歩き続けた。
普通の街を歩くには目立つ格好だったため、着ていた黒装束を裏返して着ると、雨が降り注ぐ中、足を動かす。
ここは何処なのか、今何時頃なのか、何も分からない。
雨のせいで外は暗いため、人が歩いているから昼間なのだろうが、正直、男にとって、昼だとしても夜だとしても、もうどうでも良かった。
身体が冷たくなっていくことも感じない。
気がつけば、男は以前自分がいた村に辿りついていた。
どのくらいの時間をかけて辿りついたのかも分からないが、とにかく着いて、そこにはもう焼け焦げた建物しかなかった。
すっかり人の気配はなくなって、自分が住んでいた家や、耕していた畑も、全て、荒れ果てた野へと変わっていた。
再び建物に戻ると、その中にはまだ小さな身体もあって、きっと周防に訓練されていた子供たちだろう。
みんなで酒を飲んでいた場所も、喧嘩をしていた場所も、その仲間の声も姿も、もう何処にもない。
男の中で知らぬ間に溢れていた何かが、その時零れ出した。
「 」
誰にも届かない叫びは、雨に掻き消される。
地面に叩きつけた拳は、力無く吸い込まれる。
こんなこと、今まではなかった。
どれだけ仲間が死のうとも、胸に閊えるものなど何もなかったというのに、一体何が起こっているのか、男にも分からない。
苦しみなのか怒りなのか、憤りなのか猜疑なのか、このなんともいえないもやもやとしたような、何も考えなくとも出来ていた呼吸が出来なくなる。
今日までどうやって生きていたのか。
どうやって呼吸をし、どうやって歩いてきたのか、頭の中は真っ白どころか、まるで沢山の映像を一度に見せられているかのようで、吐き気がする。
そのまま男は、眠りについた。
「・・・・・・」
身体を起こせば、そこにはやはり自分以外誰もいない場所。
男は立ちあがると、急にお腹が空いてきて、何か食べようと街へ向かって歩き出した。
はて、小銭があったかと探してみると、懐には汚いままの連なった小銭があった。
適当に歩いていると蕎麦屋があったため、暖簾をくぐって店の中に入ると、もりそばを注文した。
「ふう・・・」
目元に手を置いて揉んでいると、後ろの席から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「また来て下さったんですか?」
「可愛い子がいるからね。それより、今晩は?そろそろ俺と一杯どう?」
「やだー、またそうやって。またお店に来て下さいね?」
「はははは」
「はい、お待ち」
ふいに蕎麦が運ばれてきて、男はそれを啜り始める。
一体どこで聞いたかと、自分の中にある記憶を辿ってみるが、なかなか答えには辿りつかなかった。
蕎麦を食べ終えて勘定を終えると、店の外に隠れ、その声の主が出てくるのを待った。
しばらくしてその主が店から出てくると、男は後をつけた。
「猪助・・・」
声の主は、村にいた猪助だった。
猪助は男に気付いていなかったため、こちらを見ることもなく、ある場所に行き着いた。
「ここは?」
そこは古びた家で、ここが家だろうかと思ってこっそり忍びこむと、猪助は客人として案内されていた。
どうやら家というわけではなさそうだが、猪助が案内された部屋には、猪助とは別の武士の格好をした男が1人、座っていた。
男は周りに人がいないことを確認すると、2人が話をしている床下へと移動する。
「いやいや、それにしても、実に上手くいきましたな」
「まさか私も、ここまで上手く進むとは思っておりませんでしたが、奴らはみな金のこととなると我を忘れてしまう愚族でして」
武士の男が羽織っていたものには、こちらも見覚えのある印があった。
確かあれは・・・。
「風魔さえ利用なさるとは、さすがですな。ですが、このことがバレてしまった暁には、大変なことになりますな」
「バレるわけがない。誰よりも信頼を勝ち取るために、私はここまで這い上がってきたのだ。誰も私の言う事を疑わない」
「頭が下がります」
「これが、お約束のものです」
「おお、こんなにいただけるので」
がしゃん、と小判同士がぶつかる音が聞こえたため、きっと武士から猪助に褒美の小判が渡されたのだろう。
猪助が小判を確かめるようにして触っているためか、しばらくその音は鳴りやまなかった。
「本来であれば、最初の計画で奴等は全滅していたはずなのですが」
「戦をする双方からの依頼か。どちらも受けて、奴等、戦っている忍がまさか同じ村の奴だと知りもせずに戦っていたのだろう?実に滑稽だ」
「軒猿を使って惑わした甲斐はありましたな。結果として、邪魔だった柩も殺すことが出来ました」
「しかしあ奴、忍狩りが得意と言っておきながら、あまり役には立たなんだな」
「2度目の襲撃で雑賀が死んだのも幸いでした。段蔵に関しては、平伊と手を組んで、忍の生き死にを賭けしていたことは知っておりましたので。最初から忍狩りであることも知らず、ぬけぬけと金を目当てに城に行くなど、馬鹿な奴でございました」
「さて、これで我々の関係も解消、ということでよろしいかな?」
「もちろんでございます。私とて、危ない橋を渡るのはもう・・・」
卑下た笑いが小さくなると、猪助は小判を持ってまた何処かへと向かった。
そこは長屋で、猪助はその中の1つの扉を開けて中に入って行った。
どうやって中を探ろうかと思っていると、隣の長屋に住んでいる住人がそこから出て来て出かけていったため、男はこっそりと中に入り、隣の様子を窺った。
すると少しして、綺麗な身なりとは言えない男が猪助の部屋に入ってきた。
「来たか、軒猿」
まだ手を組んでいたのかと思っていると、軒猿は猪助の家だというのに遠慮もなく、笑いながらその辺に腰を下ろした。
「で、なんだい?また俺に用か?」
「ああ。実は、風魔を潰してほしいのだ」
「風魔を?別に構わないが、どうして?」
「黙ってやるんだ」
そう言いながら、猪助は軒猿に向けて小判を数枚放り投げた。
投げられた小判を拾って枚数を数えると、軒猿は笑ってはいるが不満そうに口を開く。
「風魔っていやぁ、かなり面倒な奴がいるって聞いてるぜ?それでこれだけか?」
「文句があるのか」
「あんた、どっかの城と手を組んでるって聞いたぜ?それと関係してんのか?」
「・・・・・・」
猪助は再び黙って小判を投げると、面倒臭そうに話した。
「確かに俺はとある城と手を組んでる。そこは風魔を毛嫌いしているんだ。お前は忍狩りが得意なんだろう?その実力を発揮するには、良い機会だと思うが」
「へえ・・・。まあ、潰せねえことはないんだが、あそこには信楽とかいう面倒な男がいるんだろ?俺だって危ういぜ」
「心配するな。信楽とかいう忍のことは調べてある。決行日にはそいつがいない日を選んだ。まだ何か文句があるのか」
「わざわざ忍組頭がいないときを狙って城を落とすのか。まあ、俺はいいが。捕まったとしても、あんたの名前は口に出さねえ約束だもんな」
「当たり前だ。そんなことをするくらいなら、潔く舌でも噛むんだな」
「おっかねぇなぁ」
「用は済んだ。さっさと出て行け」
「へいへい」
軒猿は猫背のまま扉を開けようとするが、その時、猪助の方を見た。
「それよりその春画、俺にくれねぇのかい」
「なんだ、欲しいのか。こんなものが売れるなんて、よくわからん世の中だ」
「別嬪さんのくれよ。この調子じゃ、俺ぁ一生独り身だからよぉ」
「ほら、持って行け」
「ありがてぇ」
猪助は絵描きとしてこの長屋に住んでいるようで、軒猿は気味の悪い笑い声を出しながら、去って行った。
それから猪助は絵描きを始めてしまったため、住人が戻らないうちにと、男はそこから消えた。
「じゃあ、俺が留守の間、頼むぞ」
「任せてください。お気をつけて」
「ああ」
信楽は偵察のため、城を離れることになった。
本来であれば、他の者が行く予定だったのだが、その男が少し前に怪我をしてしまったため、急遽、信楽が行くことになった。
早くても今日明日の2日間は留守にしてしまうだろうからと、何かあったときの為にと備えはさせておいた。
信楽がいなくなった城内では、普段通りの生活が送られるはずだった。
空が暗くなり、人々は眠りにつく時間となる。
「殿は?」
「お休みになられました」
「そうか」
外で待機する者もいれば、城内で警戒を続ける者もいる中、家臣の1人が厠へ行こうとしていた。
家臣が厠に行くことくらい普通なのだが、近くにいた忍の男は、その家臣が不審な動きをしていることに気付き、不審に思った。
不審な動きとはいっても、辺りをキョロキョロとしているだけのものなのだが、何があるか分からないため、家臣が厠に入ったのを確認すると、天井裏から忍びこむ。
家臣の男は大欠伸をしながら厠で用を済ませており、軽く手を洗って部屋へ戻ろうとしていたため、思いすごしだったかと思ったその時、家臣がこちらを見たのだ。
そして腰に下げていた刀を天井裏にいる忍に向かって投げて来た。
「ぐっ・・・」
刀は綺麗に忍の腹に突き刺さり、そのまま倒れてしまった。
しかしそれに気付いている者は他には誰もおらず、家臣はそのまま城内を歩き回る。
そして、近くにいる忍を次々に手にかけていく。
家臣は物影に隠れると袴を脱ぎ棄て、天井裏に忍びこみ、そこから城主が眠っている部屋を目指した。
城内の見取り図は頭に入っているし、今はあの邪魔な男がいないため、すんなりと辿りつくことが出来た。
板を外して下を見れば、そこには間抜け面で寝ている城主の姿があった。
すとん、と軽やかに着地をすると、胸元から短剣を取り出し、穏やかな顔で寝ている城主に向かって、短剣を振り下ろした。
「・・・!?」
ぐさ、と突き刺さったのは、寝ていた城主ではなく、枕だった。
枕に刺さった短剣を引き抜くと、そこに立っている男を見る。
逆光になってはいるが、さっき確認した時には確かにここの城主のシワだらけの顔、それに城主の腹が出ている体型だったはずだ。
それがどうしたことか、今目の前で立っている男は、それよりも遥かに若く、体型も筋肉質で背が高い。
「誰だ?風魔の忍、というわけでもなさそうだな」
「ちょいと用心棒に雇われただけさ」
「本物の城主は何処だ?」
「教えると思うか?」
「お前、幻術でも使えるのか」
「幻術?そんなもん使えるなら使ってみたいもんだ」
ならば自分がさっき見た城主は何だったのかと聞くと、その男はニヒルに笑って言う。
「俺ぁただ、変装が得意なだけさ」
「変装だと?いや、あれはまるで別人だった。変装でそこまで出来る男なぞ、この世に1人しか・・・」
そこまで言ったところで、自分の目の前にいる男が何者なのか、気付いた。
嘘か真か分からないが、その男は確実に存在していると言われている。
自分の前にいるこの姿さえ、男の正体そのものなのか分からないが、男はあらゆる姿に変装することが出来る。
一体どうやっているのか、どうしてそんなことが出来るのか、男に関しては一切が謎で、分かっている事と言えば、会う人によって男が見せる姿が違うということ。
「空蝉とは、名ばかりかと思っていたが、まさかこんなところでお目にかかれるとはな。お前を用心棒に雇うとは思わなんだ」
「備えあれば憂いなしってな。とはいえ、組頭がいない時を狙ってきたってことは、やっぱり、城内に裏切り者がいるってことだな。誰だか話せば、今日のところは逃がしてやってもいいんだぞ」
「ふん、空蝉の伝説は所詮過去よ。腕は衰えているだろう」
「そうだな。最近、昔よりも動きが鈍くなってきたような気がする。若さには敵わねえもんがある。若さにとって無鉄砲は武器であり、老いにとっては経験が武器だ」
「経験なんぞ無駄だ。スピードも力も、経験をも凌ぐさ」
語尾を強めに言うと同時に、空蝉に飛びかかる。
確かな手応えがあり、これは死んだかと思って顔をあげてみると、そこにあった空蝉の顔は笑みを浮かべていた。
短剣を引きぬこうとしたが出来ず、どうしてかとそこを見てみると、手応えがあったと思っていたのは、空蝉の手に短剣が刺さっていたからで、そのまま短剣を握っていたのだ。
「くそっ!!」
どうやっても短剣は抜けなかったため、男はそれを諦めて後ろに下がり、毒のついた手裏剣を投げる。
空蝉は身を屈めて畳を叩くと、畳が空蝉の身体を隠すようにして足元から出てきて、そこに突き刺さった。
男は城主の部屋にあった刀を取り、それ畳を真っ二つに斬ると、もうそこに空蝉の姿はなかった。
「動くな」
ぴたり、と自分の首にあてがわれた刃の切っ先に、思わず冷や汗が出る。
「このまま殺されるか、情報を渡して逃げるか、好きにしろ」
「・・・!」
背後を取られ、男は硬直したまま思考を巡らせる。
その時、先程空蝉が腕を怪我していたことを思い出した。
「わ、わかった・・・。俺が知ってることなら話す。だから・・・」
少しだけ殺気が消えたところで、男は空蝉が怪我をしている方の腕を掴み、そのまま壁に向かって行く。
壁と自分の身体で腕を挟めると、思った通り、あてがわれていた短剣がするりと床に落ちた。
それを拾って空蝉の喉仏に突きつける。
「形勢逆転だな、空蝉」
「参ったな」
「今更後悔するなよ?城主の居場所を吐け」
「尻尾振って逃げりゃ良かったのに」
「空蝉ともあろう男がなぁ。生きた伝説も、ここまでってことだな」
目を細めて笑った男に、空蝉は続ける。
「いや、お前がな」
「なに?」
すると、油断していたのが悪いのだが、急に足を外側から蹴られてしまい、バランスを崩してしまった。
倒れまいと、空蝉の怪我をした腕を掴んでみるが、どういうことか、空蝉は逆に掴まれた腕を下に動かして、もう一方の手で男の首を掴み、さらには足で男の身体を床に張りつけた。
思わず持っていた短剣も落としてしまうと、空蝉は不敵に笑った。
「お前の攻撃を受け止めるためだけに、自分の腕をおじゃんにするわけないだろ」
ことん、と音がした方に必死に目だけを動かしてみると、そこには作り物の腕の部分だけがあった。
「・・・!!」
「読みが浅い、調子に乗る、楽観的、それすなわち、若さ故の経験の無さが生み出す悲劇だ」
「あっ・・・」
「ああ、あと、『絶望からの脱出法を見出せない』ってのもかな」
ぐぐ、と更に手に力を込める。
「教えてやろう。起死回生の方法は、相手を知り、相手の心を読み解き、操ることだ」
「・・・・・・っ」
静かになった男に、空蝉は男から離れた。
「さてと」
「まったく、軒猿は何をしておるのだ。まだ仕留めておらんのか」
猪助はイライラした様子で歩いていた。
もうそろそろ何かあっても良い頃だというのに、どこで道草を食っているのかと、つい先ほどまで酒を飲んでいた。
身体はぽかぽかして温かいのだが、こうも冷え込む夜は、どれだけ温かくしていても寒くなる一方だ。
柳がかかっている橋を渡ろうとしたとき、柳の隙間から人影が見え、猪助は思わず身構えた。
「だ、誰だ!?」
「わ、私・・・です・・・」
「軒猿か!?一体どうしたのだ!?城主は殺したのか!」
苦しそうにしている軒猿を連れて、猪助は橋のたもとに向かう。
そこで何があったのか聞いてみると、確かに信楽はいなかったのだが、城主は影武者で、城主がどこにいるか分からなかったこと。
そして、その影武者が異様に強く、殺されかかったこと。
「影武者なんぞ使いおって・・・!!」
信楽が戻ってきてしまったら、城内に忍びこむことさえ難しくなってしまう。
猪助はこれからどうしようかと考えていると、隣で苦しんでいる軒猿をゆっくり見ながら、橋の下に流れている川を眺める。
こんなに大怪我をしているのだから、川に落ちれば助からないだろう。
「軒猿、うちに行こう」
「わ、悪い、な・・・」
軒猿の腕を自分の肩に回し、そのまま家がある長屋に向かおうとする。
しかし橋の真ん中に来たとき、猪助は軒猿を橋の手すりに寄りかからせ、足を掴んで落とした。
そのまま軒猿の身体は宙を舞い、川に。
だが、川に落ちた音が一向に聞こえてこなくて、猪助は思わず覗きこむが、暗くて落ちたのかさえ確認出来ない。
「どこだ・・・?」
月灯りに照らされながら幾ら探しても、やはり川には何もなかった。
もしやどこかに引っかかってしまったのかとも思った猪助は、一度橋を渡りきって少し離れたところから見てみるが、橋にひっかかっている様子もない。
「どうなってるんだ?まあ、あのまま死んでくれれば良いが」
どうせ身よりもない男だと、猪助はくるりと踵を返す。
だが、正面には黒い影があった。
なんだろうと思って顔をあげれば、そこには先程川に突き落としたはずの軒猿がいた。
「のっ、軒猿!?一体、どうやって・・・いや、それより、は、早く俺の家に行って治療しないとな」
「俺を殺そうとしたな」
「何を言ってるんだ。お前が勝手に落ちただけだろ。俺は助けようとしたんだぞ」
猪助は舌打ちをしながら軒猿に背を向けると、ふいに風が吹いた。
その瞬間、猪助はすぐに振り返りながら、懐に持っているクナイを出す。
「・・・・・・」
「お前、私を裏切るのか・・・!!」
軒猿は、猪助の首にクナイを突きつけていた。
猪助もクナイを取りだしたまでは良かったが、出したすぐのところで首にクナイをあてられたため、それ以上動かせなかった。
軒猿は猪助が悔しそうにしている顔を見て、少しだけ笑った。
「裏切る・・・?もともと、俺とあんたの間には、主従関係もなければ信頼関係もない。それに、俺ぁどうも、あんたみたいな奴は反吐が出るほど嫌いでね」
「何を言ってるんだ・・・!?」
「10秒だけ時間をやる」
「10秒!?何のことだ!?」
ぐっ、と首にあてたクナイに力を込めると、軒猿は猪助の耳元に口を近づける。
「俺から逃げきれたら、そのまま逃がしてやる」
「貴様・・・!!」
「行くぜ」
そう言うと、軒猿は持っていたクナイで猪助の脇腹を刺した。
突然の衝撃と激痛に、猪助は一瞬息を止めてしまうが、ふ、と弱められた拘束に身体は動き出す。
「拾」
必死に、荒くなる呼吸で酸素を取り込みながら、誰かに助けを求めようとする。
「九」
猪助が逃げている間、後ろでその姿を見ているだけの軒猿は、まるで脱皮をするかのように顔を剥がす。
「八」
そこから出て来た顔は、軒猿のものではなく、身体も声色も、気付けば全てが異なる人物になっていた。
「七」
そんなことに気付きもしないまま、猪助はふらつく足に力を入れる。
「六」
ふと、何処かの酒飲み場からだろうか、人の楽しそうな声が聞こえてきて、手を伸ばしながら一歩ずつ近づく。
「伍」
そこの角を曲がろうとしたそのとき、誰かが猪助の前に立ちはだかった。
「四」
それは、猪助が以前いた村にいた男で、猪助はその男の胸元を強く掴む。
「参」
「い、伊勢!!助けてくれ!!こ、殺される!!あいつを・・・あいつを、殺せ!」
荒い呼吸の間に言葉を噤み、男、伊勢に乞う。
「弐」
「か、金なら幾らでもやる!!幾らでも!だ、だから・・・!!」
しかし、伊勢は猪助を見下ろすばかりで、一向に助けようとはしなかった。
「壱」
「伊勢!!!!俺を助けろ!!」
虚しく響くその声に、ようやく伊勢は静かに目を瞑った。
「零」
10秒待った男は、猪助の方に向かって歩いて行こうとしたが、途中で足を止める。
なぜなら、猪助はその場に崩れて行ったからだ。
猪助で全身見えていなかった、伊勢と呼ばれた男が見えると、その手には血で真っ赤に染まった短剣が握られていた。
伊勢はゆっくりと視線をあげて、目の前にいるその男をみる。
「!」
瞬間、すぐそこまで迫ってきていた伊勢の攻撃を、男はなんとか止めた。
刃物同士が交わっている僅かな音だけがそこに聞こえる中、伊勢は一度男から離れて距離を取るが、すぐさま襲いかかってきた。
カキン、カキン、と何度目かの音のぶつかり合いがあった後、短剣をクナイで受け止めていた男は、伊勢に言う。
「喧嘩売るってことは、理由があるんだろうな?」
「・・・・・・」
「獲物を取られたのは、俺の方だぜ?」
「・・・お前、軒猿じゃないのか」
「軒猿?ああ、確かに変装はしてたがな。あいつなら俺が消した。何か用だったのか」
「・・・・・・」
ぐぐ、と力を込めて男のクナイを弾くと、伊勢は後ろに下がった。
大人しくそのまま帰るのかと思っていたが、そうではないようで、伊勢は短剣を握りしめながら男に向かって言った。
「勝負しろ」
「なんでお前と」
「いいからしろ」
一体どういう理由があって勝負をしろと言われているのか、男からしてみればわけが分からなかったが、伊勢が冗談で言っているわけではないことも分かっていたため、仕方なく承諾した。
互いに武器を構えて、一瞬の勝負。
ひらり、と葉っぱが落ちて来たところで、伊勢が動き出した。
男に向かって短剣を投げつけたかと思うと、そのまま男に覆いかぶさるように飛んできた。
一方、男は投げられた短剣を弾き飛ばすと、同じようにジャンプしようとした。
しかし、いつの間にか太ももに何かの針が刺さっており、思う様に動けなくなってしまった。
伊勢は弾き返された短剣を掴むと、男の心臓目掛けて飛びかかる。
地面に着地した伊勢は、ゆっくりと男の方を見る。
男は針が刺さっていた自らの太ももの部分にクナイを刺したようで、そこからはじんわりと血が滲んでいる。
「良い動きだな。だが、惜しい」
「・・・・・・」
伊勢は男に短剣を突き刺すが、男は平然としていた。
ゆっくりと手に持っている短剣を見てみると、柄の根元の方からぽっきりと刃先が無くなっていた。
じっと、もはや剣とは呼べないその短剣を見ている間に、男は足の根元付近に布を巻き付けていた。
「お前、あの軒猿とかいう男よりずっと腕が良いな。そこで転がってる男とはどういう関係だ?」
「・・・昔の知り合いだ」
「昔の知り合いを自分の手で殺めるってことは、相当な恨みか。慕われてねぇ奴だったってことだな。で?その動きから察するに、お前はどこぞの忍か?そこの男は雇い主か何かか」
「・・・雇われの身であった方が、まだ良かった」
「あ?」
伊勢は折れてしまった短剣の柄を腰にそのまま戻すと、その場に胡坐をかいて座った。
「俺の負けだ」
「・・・・・・」
男は髪の毛を無造作にかき乱すと、顎鬚を摩って困ったようにはにかんだ。
「何の真似だ?」
「負けることは忍として死ぬも同然。腹を切るにも刃が無い」
「お前は武士か。負けたくらいで死ぬなんざ、今時流行らねえよ。なんなら、浮浪者の俺と一緒に来ても」
「断る」
「なんでだよ」
男ははあ、と息を吐くと、未だ胡坐をかいたままの伊勢に近づくと、すう、と手を差し伸べた。
その手を一瞬見た伊勢だが、すぐに視線を地面に戻すと、強制的に腕を掴まれてしまい、そのまま立ちあがることになった。
気付くと、男の耳にはきらりと光るものがついていた。
「どうしても死にたいなら止めねえが、死にたきゃ俺のいないところで死んでくれ。じゃねえと、胸糞悪ぃ」
男は大きな欠伸をすると、伊勢に背を向けて歩き出した。
「死ぬなんて、いつでも出来んだからよ」
途中まで歩いた男は、ふと何かを思い出したのか、くるりと身体を伊勢の方に向けて来た。
「お前、名前は」
「・・・・・・」
「寡黙な奴だな。俺は・・・今は銀魔ってんだ。お前よりも穢れた人間だ」
「・・・伊勢だ」
「伊勢、な。だからか」
「?」
一体何が「だからか」なのか分からないが、それを聞こうとしたときにはすでに、男は伊勢に背中を向けていた。
そのまま去って行ってしまった男に、伊勢はただ黙っていた。
残された伊勢もまた、動くことのない見知った男を一瞥してから、歩きだした。
それは何処に行くかなんて決めていない、自分の足に頼るしかないことだった。
見上げれば漂っている月が、今日ほど綺麗だと思ったことはないと感じながら。
それからしばらく経ったある日のこと。
「おい、聞いたか?」
「ああ、本当なのか?」
「病死なのか?それとも誰かに?」
「さあ?死んだっていう噂しか聞いてないからな」
「それにしても、あの信楽が死んだなんて、信じられないよな。もし殺されたんだとしたら、相当な手練だよな」
「いつだっけ、死んだの」
「いつだ?最近見かけないなと思ってたら、急に死んだって聞いた」
「誰が?」
「誰って、信楽と同じ忍の奴が殿に報告したんだよ」
「本当に死んだのか?」
「信楽と思われる死体が見つかったって言うし、本当なんじゃないか?」
「思われるって、どういうことだよ」
「そんなこと言ったって、丸焦げになってたらしい。顔で判別出来なかったって」
「じゃあどうやって?」
「誰がいないかを確認したら、忍組頭の信楽だけいなかったから、その焦げた死体は信楽じゃないかって話だ」
「信楽の代わりは見つかったのか?」
「今探してるとこ。なんでも軒猿っていう野蛮な奴だけど腕は確かな奴がいるから、そいつに声をかけようかって話になってるみたいだけど、そいつがまだ見つかってないって」
「正直、忍なんていなくても良いと思うけどな」
「諜報に力を入れるには、どうしてもいるだろ。それに、俺達の盾になる必要もある」
「確かにな」
その頃、忍たちも同じような話をしていた。
「信楽さんが死んだなんて信じられないな」
「それにしても、信楽さんってもうちょっと背が高かった気がするんだが、気のせいか?」
「じゃあ、あれが別人だって言うのか?信楽さん以外は生存してること確認出来たんだろ?」
「そうだけど。なんとなく違うような気がしたんだ」
「気のせいだよ。それより、今後のことを考えていかないとな」
城内では勿論あっという間に噂が広まったのだが、どこから噂が漏れたのか、他の城の忍の間にもこの噂は広まり、信楽という忍はこの世からいなくなったことが確認された。
河原にかかっている、人通りがある程度ある橋の上に、1人の男が手すりに肘を着いてのんびりしていた。
そこへ編み笠を被った男が近づいてきて、肘をついて川を眺めている男の隣に行くと、手すりに背中をつける。
「信楽って奴が、死んだらしい」
「そうか。それは残念だ」
「そこまでして、あの城を抜けたかったのか。それならそもそも、忍なんぞにならなければ良かっただろ」
「お前には関係ないことだ」
「まあそうだが。で、これからどうするんだ?もし生きてると分かれば、どこまでも追っかけてくるだろうよ」
「俺は一度死んだ。死んだ人間を追う輩などいない」
「分かってねぇなぁ。味方にすれば頼もしい奴ほど、敵に回すと厄介ってことだ。利用するのはお上の十八番、消すために男のケツでも追いかけまわすのがあいつらだ」
「その言い方、どうにかならないのか」
「腕が良いってのは、良いことばかりじゃねえなぁ。結局は利用されるだけ利用されて、危害を加えてなくても、危険と判断されりゃあ殺される。陽の光を浴びること無く死んでいく奴が、どれだけいると思う?」
「そんな話をしに来たわけじゃない」
「ああ、そうだったな。武士としてお前を受け入れてくれそうなとこは、幾つか見つかった。まあ、俺のお勧めは定妙炎かな」
「定妙炎?」
「お前なら、見抜けると思うんだ」
「何をだ?」
「行ってみりゃわかるさ。あー、これで面白くなりそうだ」
「・・・・・・」
「なんだよ、編み笠越しにも分かるその冷やかな目は。最後に決めるのはお前なんだから、お前の好きにしろよ。俺はこれからしばらくまたのんびりと放浪する心算なんだ。お前ともこれで最後かもな」
「またか。いい加減、どこかに腰を下ろしたらどうだ」
「腰を下ろす場が決まったらそん時ぁ、そこが死に場所になるな」
「俺は別の人間として生きて行く。もう名前も決めてある」
「気の早いこと。なんてんだ?」
「龍海だ」
「タツミ?お前ウサギ年だろ」
「そういうことじゃない。お前は名前を変えてどのくらい経つ?」
「あー、結構経つな。けどまあ、そっちはまだ浸透してねぇから、つい最近も、昔の名前で呼ばれたよ」
それから、編み笠を被った男は小さく笑ったかと思うと、川を眺めている男の後ろを通って何処かへと消えていった。
少ししてから、川を眺めていた男も何処かへ姿を消す。
その頃別の巷では、別の噂が広まっていた。
「おい、知ってるか?紅頭っていう、物凄く強ぇ奴」
「聞いた聞いた!でもまだ若いんだろ?」
「なんでも顔に少し火傷の痕があるらしい」
「なんで紅頭ってんだ?」
「だからよ、顔が真っ赤に染まっちまうくらい、相手のこといたぶって殺すからだろ?」
「俺が聞いた話しじゃあ、返り血を沢山浴びて、そいつの頭が赤くなるからって聞いたぜ?」
「似たようなもんだろ。それにしても、おっかねぇよなぁ。そんな奴に狙われたら、ひとたまりもないぜ」
「お前、狙われるほどのことするほど、度胸ねぇだろうが」
「へへ、まあな」
何処にいるのかも分からない、本当にいるのかも分からない、名ばかりが蔓延るその世界に、新たな英雄が生まれるのだが、その男が本当の意味で英雄になるのは、まだ先の話である。
時代の移り変わりは早いもので、あっという間に月日は経ち、歴史に置いて行かれた過去の残骸たちは、ただただ、移り変わる景色を眺めるだけ。
生き急ぐばかりの他人は、そこに立ちつくしているだけの自分を追い越して行く。
それを眺めていれば、いつかはまた時代が此処に戻ってくるような気がしたから。
そんな人々の中には、移ろうことしか出来ない時代の影に、嘆く者もいた。
時代という大きなうねりに飲みこまれ、泳ぐことも出来ずにただ流され、気付けば大きな海原に独り漂っている。
助けを求める声さえ届かない、孤独。
孤独な者ほど笑うとは言ったものだが、笑った分だけ、泣いている。
だからこそ、空虚の中で生きるための唄が作られた。
ひとひらの花、散りゆくさだめ。
ひとかけの砂、掴めぬさだめ。
ひとびとは皆、消えゆくさだめ。
ひとさし指に、紡ぐはさだめ。
灯掲げ、祈るは誰ぞ。
拙い詞、唄うは誰ぞ。
尊い願い、紡ぐは誰ぞ。
契れぬ愛を、望むは誰ぞ。
舞い散る花びら、掬う掌。
揺らめく水面、零す夕暮れ。
たなびく夜空、秘めた唇。
永遠を知らずに、滅ぶも定め。
人々はこの歌を次の世代に繋げる。
だからこそ、未だに彼らの中に残っている。
「伊勢、という奴を知っておるか」
「存じませんが」
「そうか」
「何か」
「いやなに、ただ、その伊勢とかいう男、なかなかの手練だったそうじゃ。だが、ほれ、昔あったじゃろう。なんとかっていう城。そこで仲間の忍たちと共に殺されたそうじゃ」
「殺された忍にご興味でも」
「そうではないが、その忍、生きているという噂を聞いたのじゃ」
「生きていたら、探しだす、と仰るお心算ですか」
「わかっておるのう」
「もし生きていたとしても、探し出すのは至難の業でしょう」
「気に入ったのじゃ。噂ではその伊勢、腕が良いだけではなく酷く冷酷だったとか。その男が裏切ったせいで、忍の村が1つ滅びたとも言われておるそうじゃ。お前と互角にやり合えるほど強いかもしれん」
「それは愉しみではありますが、そのような噂を鵜呑みにするのはいかがなものかと」
「今や巷で聞く名は紅頭だの空蝉だの、名ばかり有名になっておって、本当にいるか分かりもしない輩ばかりじゃ」
「空蝉・・・?」
「空蝉とて、ずっと昔に死んだと言われておったが、ここ最近、名を変えて生きていると言われておるわ。まったく、何が本当なんだか分からん世の中じゃ」
女性は扇子を口元にあてながら続ける。
「だが、伊勢という男は、親のいない子供や、金に困っている親から子供を買う輩が集めたと言われている村で育った、確かに存在した男じゃ。生きておるのなら、絶対に見つけ出して我が手中に収めてみせる」
「その際は、力を尽くさせていただきます」
「ああ、それから、定妙炎家にいる・・・ええと、なんて言ったか、とにかくその男、剣の腕も良いが頭もキレるらしい。今後どう動くか、警戒しておけ」
「承知しました」
女性は用意されたワインを口に持っていくと、一度扇子を閉じて肩にぽんぽんと叩く。
それを味わうことなく一気に飲み干すと、グラスを放り投げた。
「お前を採用したのは、利益になると思うたからじゃ。わかっておるな」
「勿論でございます」
女性の前にいる男は、下げていた頭をあげる。
顔のほとんどを布で隠しているため、男の顔は目しか見えない状態だ。
しかし、そこから覗く眼光は鋭く感情が見えないからか、仲間の忍たちにも恐れられている。
敵には容赦などしない一方で、仲間が危機に晒されていると助けるところがある。
素顔を見た者は1人もいないため、実は女なんじゃないかという噂もされていた時期があるが、声色と体つきからして男だろうと言われている。
その実力は、かつて存在していた忍狩りの男よりも上と言われているが、本気を出したところを見たことがないため、今のところ、強いとしか言いようがない。
やり合った者が言うには、その男は気配を感じさせず近づいてきて、知らぬ間に敵を倒し、知らぬ間に消えているという。
大勢でかかっていったとしても、傷ひとつさえつけることもままならないほど、その男の実力は計り知れないらしい。
とはいえ、男が一番強いかと思うと、男はそうではないと、きっぱりと言う。
どうしてかと聞くと、それに関して答えることは無いのだが、それでも男は、自分は一番ではないと断言する。
明確な答えを言わないため、周りの男たちは勝手に話しを盛り上げて、過去に名を馳せた忍の声から有名な武士、しまいには女のことではないかという話にまでなってしまった。
それでも男は気にすることはなかった。
だからなのか、この城の女城主に気に入られ、今いる忍の中では最近入ってきたにも関わらず、その実力も認められ、忍組頭にまでなっている。
女性は再び扇子を広げると、長い足を組み換え、男に向かって微笑みながら言う。
「その汚れた命で守ってみよ。金なら、幾らでも出すぞ」
女性のその綺麗な瞳が細められる。
そして、扇子によって隠された口から、続いて言葉が発せられる。
「黒夜叉」
吐き気がする。とてつもなく激しく。
夜な夜な繰り返される悪夢は、いつだったか、遠い昔の現実。
生きて行くために強くなり、強くなれば金がもらえて、金を貰えば生きていけた。
だからこそ、近くにいる誰かが自分に向かって助けを求めていたとしても、自分が生きるために目を背けることが出来た。
それでも、自分の中に芽生えてしまった不思議な感情には、どれだけ時間を置いても抗う事が出来ず、むしろ、時間が経てば経つほど、深く、濃く、骨の髄にまで浸透してしまった。
きっとそのことを、当時の自分が口にしていたら、他の奴らには馬鹿にされ、笑われたことだろう。
金の為なら、同じ釜の飯を食った仲間でさえ、手にかけてしまうような連中だったが、それでも、そこが居場所だった。
他の奴から見れば、人情の欠片もない、ならず者たちの集まりに見えたのだろうが、そこにいる本人たちだって、生まれながらにそんな人間ではなかったはずだ。
ただ、親がいなかっただけ。
ただ、親に売られただけ。
ただ、独りで生きて行く力が必要だっただけ。
忘れることなど出来ない、そういうもの。
そこにいたことを覚えている者がいれば、それだけで、救われること。
歴史からも時代からも抹消されてしまった彼らのことを、世の中がどう言おうとも、決して、記されたことだけが真実ではないことを。
君が心から愛すのは、誰か。
あなたが出会う最悪の敵は、いつもあなた自身であるだろう。
ニーチェ