第14話

文字数 271文字

 千里は、もう一度生まれた子供の顔を見て微笑んだ。
「そうよね……、嬉しいわよね」
「ああ、嬉しいよ。俺も、おふくろも、親父も喜んでるよ」
 忠雄の泣きそうになっている顔のパーツの一つ一つを丁寧に撫でていく。
「そうよね……、久しぶりの家族ですものね」
「うん……大事にするよ」
「そうよね……でもアナタ、大丈夫?」
 ああ、本当に良かった。
 こんなに幸せなことはない。
 忠雄のこの笑顔が、絶望に染まるのを想像するだけで、顔に出来た笑顔の為の皺が深さを増していく。
「何がだい?」
「こんな歳の離れた腹違いの弟が出来て」
 その瞬間に、赤ん坊が微かな声で笑った。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み