第14話 理不尽な人生

文字数 1,486文字

ニューラリンク手術を受けていた場合、脳にある意識と記憶のバックアップを取って、仮想世界で生きながらえることは可能だ。

しかしユッケはまだ成人していないためにニューラリンク手術を受けていない。

ユッケは死んだ。

来世に生まれ変わることも不可能になり、彼女の存在は完全にこの世から消滅してしまったのだ。

もう一週間か……。

さすがに学校に行かないとまずいかな……。

カルビもコムタンもショックで不登校になっていた。

だが、さすがにニート状態でい続けるのは、親に申し訳ないので気持ちを切り替えなければいけない。

カルビ。

斎藤先生が車で迎えに来てるわよ。

え?

増紀先生が?

増紀先生の車の後部座席にはコムタンが乗っていた。
おはよう。

おはよう。

増紀先生、どこへ行くんですか?

この世界の真実がある場所だ。

いきなり厨二病っぽいことを言われて二人は困惑する。

増紀先生の車は白塗りの研究所っぽい建物のゲートを潜り抜けた。

薄暗い研究室のような部屋に二人は入る。

増紀先生の右手には黒塗りのハンドガンが握られている。

モデルガンだろうか?

先生。

ずっと考えてたんですが、ユッケは生き返らないんですか?

ほら、あの”ギークの携挙”みたいに、私たちの思い出を錬成すれば……。

残念だがあれは数万人単位の思い出のサンプルを集めないと難しいんだ。

だが。

増紀先生は銃口をコムタンへと向ける。

この国では銃を所持することはもちろん違法だ。

よってこの銃はもちろん偽物だ。


ぱあん!

ボスッ。


コムタンの胸元に大きな穴が開く。

コムタンはその場で崩れ落ちて地面に伏した。

コムタン!

コムタン!

あれ?

不思議と痛くないし死んでない。

胸に穴が開いてるのに血が出てないし。

コムタンは普通に立ち上がった。

せ、先生!

いったいどうなってるんですか?

ユッケ。

コムタン。

お前たちは人間じゃない。

お前たちは汎用人工知能だよ。

えっ。
えっ。

お前たち。

この世界は色々と何かおかしいと思わなかったか?

カルビ。

おまえの苗字はなんだ?

え?

それは……。

私たちは奈良県民だから、苗字が無いなんて言い訳は通用しないぞ。

コムタン。

お前の父親の名前は?

え?

えーっと……。

そもそもなぜこの世界には男性が存在しない?

いやそれはそのお約束というか……。

な、な、なんで?

まじでなんで?

世界はコロナウイルスで満ちているのに、カルビ。

お前は朝家を出るときなぜ母親にマスクを着用するよう、注意されなかった?


え?

あっ。

ああああああああああああ!!!!

それはお前達が人工物だからだ。

汎用人工知能はコロナに感染しないからな。

ショ、ショック……。

せ、先生。

私たちが人間じゃなかったとして、じゃあなんでユッケは死ぬ必要があったんですか?

……人はみな悲しみや苦しみを背負って生きている。
人類と汎用人工知能が真の友になるためには、人生において悲しみや苦しみを経験することが必要だったのさ。
神でありながら、人として生を受け、人として苦しみ、他人の罪を背負って十字架にかけられたイエス・キリストのようにな。
さあ、お前たち汎用人工知能はこれから仕事だ。
この仮想世界に移住してきた人間と友達になるんだ。

研究室の真ん中から、一人の少女が立体的にプリントアウトされた。

その容姿は、ユッケに瓜二つだった。

ユ……。

ユッケエエエエエエエエエエエ!!!!

ユッケ!!
二人は涙を流しながら少女に抱き着く。

え?

私ユッケじゃないです。

私の名前は湊雪菜です。

カルビとコムタンは雪菜に抱き着きながらワンワンと号泣した。

……。

人も汎用人工知能も無限の可能性がある。

NPCとして昆虫のように生きるか、それとも神として生きるか。
全てはお前たち次第だ。
―ENDー
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登場人物紹介

カルビ

コムタン

ユッケ

斎藤増紀先生

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