第84話  ドッヂボール  2

文字数 3,100文字

いいよいいよ。投げてね

 お姉ちゃんは名谷にボールを渡した。
 投げないのかなって思ったけど、本人がとっても上機嫌なので見ててあげよう。


 名谷のボールも野球部の連中にキャッチされてしまった。

 やっぱり僕達よりも年上で、野球してるくらいだから運動神経もいいんだろう。


 僕達だけじゃ絶対勝てない相手だけど、お姉ちゃんがいるのなら絶対勝つ。僕は確信していた。
 お姉ちゃんはドッジボールが無茶苦茶強いんだ。


 野球部の奴らが名谷の方にボールを投げ込む。回転してて凄く早い。あまりの速さに逃げようとする名谷だったけど、その前にお姉ちゃんが片手でキャッチしてしまったんだ。

【野球部部員】

うそ。片手?

ほんと!

 野球部の人たちも驚き。こっちもみんな驚いていた。


 今度はボールを赤木に渡すお姉ちゃん。

 あぁ多分……お姉ちゃんはめちゃくちゃ遊んでると思った。

頑張れ~~あいつらをやっつけろ!

【赤木】

よし!

 赤木もやる気を見せる。野球部の連中に投げ込んだ球は、逸れちゃいそうだったけど、キャッチしようと余計に手を出したのが悪かった。結局当たってしまい赤木が一人やっつけた。

【野球部部員】

うわっお前だっせー

 当たった野球部の人は散々言われてた。
 小学生に負けんじゃねーよって。だけど向こうも三人だし、まだまだ余裕っぽかった。


 今度は赤木を狙う野球部のニキビの人。うわっ! 凄い早いボールだ。


 今までの人よりももっと早かった球だけど、飛んできた球を蹴り上げたのはお姉ちゃんだった。
 上空に高く飛ぶ球は、一歩も動かない姉ちゃんの手に収まった。

【野球部部員。後輩】

マジかよ。ピッチャーの球だぞ?

マジ!
 うわぁ。凄い喜んでる。ずっとニヤニヤしてる。
 ちょっと腰がクネクネしちゃってて美優お姉ちゃんみたいだ。

【名谷】

ねぇ。今度はお姉さんが投げてよ

【赤木】

うんうん! 見せて。すっげー早そう

 名谷も赤木もお姉ちゃんが投げるのを見たいのだろう。
 これだけキャッチするんだもん。どんなのか見たくなるよね。

【魚住】

なぁ黒澤。ねーちゃんノーブラだろ?

そ、そうなのかな
 魚住はおっぱいの話ばかりで、平八おじさんみたいだね。
いきまーす!

 お姉ちゃんが投げる。


 だけどそんなに早くないと思ったら、野球部の人がキャッチする瞬間に手で思い切り弾いたんだ。そのまま当たった人は勿論アウトなんだけど、ボールがまたこちらに戻ってきた。

【野球部主将】

お前もかよ。罰で校庭十週回れよ~~

【野球部部員】

違うって! 何だよあれ! すっげー回転だぞ

 もうお姉ちゃんのニヤニヤが止まらないすごい上機嫌で、ドッジボールを人差し指でクルクル回してた。



 その時、僕の頭に三回目のサインがやってくる。
 あぁもうそろそろ限界だ。

 せっかく楽しいのに……時間だなんて。

お姉ちゃん。もう僕……
そっか。分かった

 お姉ちゃんはそう言うと、今度投げた球は剛速球だった。野球部の人よりも全然早くて、レーザービームみたいに一直線に向かっていく。


 当然取れない野球部の人もアウトになり、ボールがまたお姉ちゃんに戻ってくる。

 今度は助走もつけずにニキビの人に投げ込んだ。こちらも直球で顔面に当たってしまうと、後ろに倒れてしまうのだった。


 あっという間だった「分かった」って言ってから十秒も経ってない。
 勝負は決まった。僕達の勝ちだ!

【赤木】

すげぇお姉さん!

【名谷】

ドッジボール強すぎ!

 
 赤木も名谷も大喜び。両手を上げながらも恥ずかしそうなお姉ちゃんの近くに来ると、僕の頭をなでなでしてくれた。
野球部さん。もうちょい遊ばせてやってよ

 野球部の人達はお姉ちゃんの言うことを聞いてくれた。どうせ僕達は夕方には帰っちゃうし、ちょっとだけ遊ばせて欲しい。


 だけど……僕はもうダメだ。
 頭がふらふらになってきてる。

凛。帰ろうか
……うん
 もっと遊びたい。だけど僕は……

【魚住】

え? 何で? まだ一緒に遊ぼうぜ

 魚住が言ってくれた。すると名谷も赤木まで頷いてくれる。
 僕はそれだけで凄く嬉しかった。

 今までそんな風に、言われた事がないから。

ごめんね。凛はちょっと……夕方からはあまり遊べないの

【名谷】

そうなの? そういえばお前っていつも家に帰るの早いし、何かやってんの?

そ、そうなんだ
 こういい訳するしかない。本当の事なんて言えやしない。
じゃあ帰ろう。凛。ももまろも帰ろうね
うん……
 その時、赤木が待ってと言う。僕もお姉ちゃんも振り返って赤木の顔を見ていると、すごくつらそうな顔になったんだ。

【赤木】

あの、お姉さん。俺……俺……

 何を言おうとするのか分からない。
 僕もお姉ちゃんもお互いを一目見て、赤木に向き直ると、小さい声だったけど喋り出した。

【赤木】

黒澤。黒澤をいじめたのは……俺です



 ※



【赤木】

ごめんなさい。俺その……すみませんでした

 急に赤木が謝り出したんだ。

 だから僕はすぐに「もういいよ」って言ったけど、その時お姉ちゃんの顔から笑顔がすっと消えてしまった。

え?

【魚住】

すいません。お、俺も……黒澤、いじめてました

【名谷】

僕も。お、お姉さん! すいませんでした

 名谷や魚住まで謝り出すと、お姉ちゃんは完全に固まってしまっていた。

 しかも赤木は「スマホを壊したのも俺です」って白状したんだ。

お、お前。お前らが……凛を?
待ってお姉ちゃん! もう、もう終わったんだ。お、怒らないで!

 僕は急に恐怖を感じた。すぐにお姉ちゃんの手を引っ張ろうとしたけど、全然動いてくれない。

 逆に赤木達に「逃げて」と言ったけど、誰もいう事を聞かず、お姉ちゃんに対してずっとごめんなさいって謝ってた。

【名谷】

べ、弁償します。ごめんなさい!

もういいって名谷! もう……

 その時、お姉ちゃんと目が合うと、僕は必死に怒らないでって叫んだ。

 僕の声が聞こえたのか、怒った表情が消えていく。

べ、別に弁償とかしなくていい。高額なもんだし、小学生が払えないだろ? 

それはいい。それは……だけど……

一つ。お願いを聞いて欲しい……
 お姉ちゃんは僕の肩に手を乗せながら、

凛と……友達に……

この子と……友達になって欲しい

 すると赤木達も凄い大きな声で「はい!」って言ってくれた。
 僕はそれを聞いたとき、すぐに泣きそうになった。
う、嬉しい……
 ちょっと! お姉ちゃん。
 お姉ちゃんが泣きそうになっちゃってる。
も、もう帰ろうお姉ちゃん
凛と遊んであげてね。お願い。おっ、お願いします。本当は優しくてとっても良いヤツで……だから
お姉ちゃん……

 ああっ……本当に泣いちゃった。
 ほら野球部の人も見てるよ~~


 僕はお姉ちゃんの手を取ると、赤木達に挨拶してから、公園の外まで引っ張っていった。




 ※




凛。良かったな……お姉ちゃんは凄く嬉しいんだ

 もういいよ。
 何で僕が友達できただけで……


 だけ、じゃないけどさ。何も泣かなくてもいいじゃん。

 僕の方が泣きそうなのに……

ねえお姉ちゃん! 早く帰って、着替えて……か、華凛でも遊びたいんだ

 僕はもっと遊びたかった。


 この前も一緒に遊んだし、早く行かないと赤木達が帰っちゃう。するとお姉ちゃんは涙を拭うと、一言こういった。

……それはダメだ
え? 何で? べ、別人として上手くやるから!
絶対。ダメだ。
なんで? せっかく友達になったんだし……華凛でも仲良くしたいよ

 お姉ちゃんは何も言わず、そのまま階段を登って家に入った。

 先に華凛になって来いと言うので、僕は女の子に入れ替わる。

華凛。ちょっとお姉ちゃんとお話しようか
……うん

 何だろう。妙に真剣な話っぽい。だって正座だったから。
ちょとした昔話さ。そろそろお前に話した方が良さそうだなからな
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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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