第2話 裕子と勉強

文字数 365文字

夕食の支度を終えた母と宿題をしている小学生の娘。
裕子、宿題をしているの?
うん。もうちょっとで終わるよ
そう、えらいわね。今日は何の宿題が出たの?
算数のドリルと漢字のドリル。全部答え分かったよ
あらあら。じゃあ、今度のテストは百点間違いなしね
ええ、そうかもしれないわ
でも……
でも?
百点をとることは、勉強の目的じゃない

いくらいい点をとったからといって、それが優れた人間であることの証明にはならないわ

ゆ、裕子……?
勉強は、物事の考え方や論理性を学び、自分を高めるためのひとつの方法に過ぎない
勉強することそれ自体が目的になって、点数だけを追うのは、本来の意味を見失っているわ
勉強は大人になってからの自分の生活をより豊かにするためにあるということを、私たちはもっと理解するべきだと思うのよ
あなた! 裕子がまた変なことを言い出したのよ! あなた!
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登場人物紹介

母親

ほら裕子。自己紹介しなさい

裕子

裕子です! 十歳です! 小学四年生です!

好きな教科は国語と社会で、苦手な教科は体育です!

でも友だちも先生も優しいし、学校はとても楽しいでーす!


――なんてね。フフ。

自己紹介で私の全てを知ろうだなんて、虫がよすぎると思わない?

所詮自己紹介なんて自分の中の良い部分、自慢したい能力を披露するだけのものよ。

本当の人間性はこんなことじゃ到底理解し得ないことに、この欄を読む側もそろそろ気づくべきじゃないかしら。


母親「ど、どうしたの裕子!」

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