15 ダークエルフの村
文字数 3,734文字
ダークエルフの村 は、月光 の輝 く森 の小径 を抜 けた先 にあった。
途中 に一対 の石碑 が道 のわきに置 いてあり、そこを通過 したとたんに空気 が変 わったのがわかった。
まるで神殿 のような清 らかな空気 に満 ちている。
夜中 にもかかわらず、何人 ものダークエルフが並 んで私 たちを出迎 えてくれた。
どのダークエルフも美 しい姿 をしていて若々 しい。
けれど身にまとった雰囲気 からは充分 に年 をとった大人 の魂 を感 じる。
前 の世界 だとエルフとかダークエルフは寿命 が長 く、いくら年 をとっても若 いときの姿 のままだけれど、それはこの世界 でも同じようだ。
正面 に、銀色 の糸 で ししゅうのほどこされた 白 いローブを着 た女性 がいる。
この人が神官 なのだろうか。
「二人 ともご苦労 さま」
ローブの女性 がそういうと、案内 してくれた二人のダークエルフが、
「いえ。神官 さま。ご命令 のとおりにお客人 をお連 れしました。が、この二人の子供 はいかがしましょうか?」
ああ。やっぱりこの女性 が神官 なのね。
神官 の女性 はうなづくと、
「そうねぇ。今日 はゆっくり休 ませておいた方がいいわね」
というと、私 の前 でひざをついた。
えっ? どうしてひざをつくの? みんなが驚 いているじゃない!
神官 はうっとりとした表情 で、私 をなでると、
「あなたもそれでいい?
小屋 を用意 するので案内 をさせるわ。今日 はそちらで休んでね」
あのう、神官 さん?
お言葉 はありがたいですが、だんだん私をなでる手つきが激 しくなっていくんですが?
すっと神官 さんの手 の中 から逃 げ出 すと、ちいさく「あっ」と声 をもらした。
そのまま、案内 してくれた二人のダークエルフについていくと、後 ろから神官 さんの、
「なんと、なめらかで つややかな毛並 みなんでしょう」
とうっとりするような声 がして、背 すじがぞぞっとなった。
……うん。あの人にも気 をつけよう。
二人のダークエルフの女性 は、ヒロユキとコハルを抱 きかかえたままで、一軒 の小屋 に運 んでくれた。
小屋 の中 には かんたんな木のベッドが二つ並 んでいた。そこへヒロユキとコハルを寝 かせると、
「明日 、また呼 びに来 るわ。……私 はファミーユ。こっちはプリマよ。よろしくね」
と言 って、二人 が出 て行く。
いやいや、私、ふつうのキツネ、のふりをしているはずなんだけど?
……まあ、いいか。
きっと詳 しいことは 明日 話 してくれるのでしょう。……ヒロユキもコハルも起 きたらびっくりするでしょうね。
私はひそかに小屋 に守 りの結界 をはってから、目 をつぶって眠 りについた。
――――
朝 が来 た。
外 から鳥 の鳴 き声 が聞 こえる。
そよそよと風 にゆれ、木 の枝 がそよぐ音 がする。
ん~。やっぱり自然 の中 はリラックスできていいわね。
目をひらいて、のびをする。
よし!今日 も絶好調 だわ。
……ヒロユキとコハルはまだ眠 ってるわね。
ファミーユとプリマが来 る前 に起 こしておいた方 がいいかな。
コハルのところにいって、コハルの顔 をぺろぺろとなめる。
ほらほら~、起 きなさ~い。
「うん……んんん。もう、ユッコったら。……うんん。うん?」
かわいらしい声 を上 げてコハルが目 を開 いた。
ぼうっとしながら天井 を見 つめ、少 ししてから、急 にがばっと起 き上 がる。
「こ、ここは? 私はいったい? ……あっ」
混乱 していたようだけど、私を見つけるとささっとやってきて抱 きついてきた。
「ユッコ! よかった!」
そういって、キュッと強 く抱 きしめてくる。
んふふふ。コハルったら甘えんぼさんね。
しばらくそのままでいると、ヒロユキも目 を覚 ましたようだ。
「う~ん。……あ、あれ? ここは?」
ベッドの上 で上半身 を起 こして、周 りを見回 した。
コハルと私を見てうなづいて、しげしげとまわりの家具 を見ている。
うん。やっぱり男 の子ね。ちゃんと落 ち着 いているわ。
ヒロユキはいぶかしげに、
「そ、そういえば、帰 り道 でワイバーンにおそわれたはずじゃ……」
と必死 に思 い出 そうとしている。
そこへドアがノックされた。ファミーユたちだ。
「もう起 きたかな? 入 るよ?」
ヒロユキとコハルは、見知 らぬ声 がしたものだから、あわてて武器 になるものを探 そうとするが、それより先 にドアが開 いた。
ヒロユキはコハルと私の前 に立ちふさがって、拳 をにぎって戦 う構 えをする。
ファミーユとプリマがそれを見て、ヒロユキとコハルに笑 いかけた。
「安心 して。私たちは敵 じゃないよ」
しかし、ヒロユキとコハルは警戒 していて返事 もしない。
ま、油断 しないのも正 しいんだけどね。
……しょうがないわ。このままじゃ、話 が進 まないし。
私は無造作 にファミーユたちの方 へと歩 きはじめた。
後 ろからコハルが、
「あっ。ユッコ! だめ!」
というが、そのままファミーユの横 に行 って顔 を見上 げると、ゆっくりと振 り返 ってヒロユキとコハルの方 を向 いて座 る。
ファミーユが、
「ほら。キツネちゃんも大丈夫 って言 ってるよ」
と笑 いかけると、ヒロユキが「わかったよ」といいながら、構 えていた両手 をおろした。
コハルはまだ警戒 しているみたいだけど、プリマが、
「君 たちは、くらやみの森 に倒 れていたんだ。私たちが連 れてきたんだぞ」
と言 うと、ようやく自分 たちの恩人 だと気 がついたみたいで、あわてて頭 を下 げた。
「ご、ごめんなさい。そうだとは知 らずに……。ありがとうございます!」
プリマは、
「いいって!誰 だって、起 きたら知 らないところにいたんじゃ、そうなるよ」
と言う。
そこでファミーユが、
「さあ、神官 さまのところに行 くよ。詳 しい話 は神官 さまがしてくれるわ」
と、私たちについてくるように指示 をした。
神官 って、昨夜 の白 いローブの女性 よね。要注意 だわ。
ヒロユキとコハルは小屋 を出 て、朝日 の差 し込 む森 の木々 の間 に、いくつもの小屋 があるのを見てびっくりしている。
何人 かのダークエルフが洗濯物 をほしたりしている。
「うわぁ」とヒロユキが声 を上げる。コハルが、「だ、ダークエルフの村 ?」とつぶやいた。
ファミーユが振 り返 って、
「あれ?言 ってなかったっけ?」
と、明 るく笑 いかけた。
まるで
どのダークエルフも
けれど身にまとった
この人が
「
ローブの
「いえ。
ああ。やっぱりこの
「そうねぇ。
というと、
えっ? どうしてひざをつくの? みんなが
「あなたもそれでいい?
あのう、
お
すっと
そのまま、
「なんと、なめらかで つややかな
とうっとりするような
……うん。あの人にも
二人のダークエルフの
「
と
いやいや、私、ふつうのキツネ、のふりをしているはずなんだけど?
……まあ、いいか。
きっと
私はひそかに
――――
そよそよと
ん~。やっぱり
目をひらいて、のびをする。
よし!
……ヒロユキとコハルはまだ
ファミーユとプリマが
コハルのところにいって、コハルの
ほらほら~、
「うん……んんん。もう、ユッコったら。……うんん。うん?」
かわいらしい
ぼうっとしながら
「こ、ここは? 私はいったい? ……あっ」
「ユッコ! よかった!」
そういって、キュッと
んふふふ。コハルったら甘えんぼさんね。
しばらくそのままでいると、ヒロユキも
「う~ん。……あ、あれ? ここは?」
ベッドの
コハルと私を見てうなづいて、しげしげとまわりの
うん。やっぱり
ヒロユキはいぶかしげに、
「そ、そういえば、
と
そこへドアがノックされた。ファミーユたちだ。
「もう
ヒロユキとコハルは、
ヒロユキはコハルと私の
ファミーユとプリマがそれを見て、ヒロユキとコハルに
「
しかし、ヒロユキとコハルは
ま、
……しょうがないわ。このままじゃ、
私は
「あっ。ユッコ! だめ!」
というが、そのままファミーユの
ファミーユが、
「ほら。キツネちゃんも
と
コハルはまだ
「
と
「ご、ごめんなさい。そうだとは
プリマは、
「いいって!
と言う。
そこでファミーユが、
「さあ、
と、私たちについてくるように
ヒロユキとコハルは
「うわぁ」とヒロユキが
ファミーユが
「あれ?
と、