第1話

文字数 441文字

 五年生の夏休みに、サボテンラジオを作った。
 バナナでもラジオは作れるが、二、三日で黒くなってしまうのが難点である。
 その点サボテンは、鉢植えにすればずっと感度を保つことができるし、棘をそのままアンテナにできる。こちらの難点は、子どもには少々高価なことだ。
 私はずっとラジオを作りたいと夢見ていたところ、十一歳の誕生日に父が小さな丸いサボテンをプレゼントしてくれた。
 私は狂喜して、さっそく工作を始めた。
 作業はかんたんだった。ちょっと手こずったことといえば、紙管にエナメル線を隙間なく巻く工程ぐらいだった。
 完成したら、風通しがよく、空が見えるところに設置するのだが、これが意外と難しい。風通しがよい場所にはひさしがあったり、空が見えるところは日が当たりすぎて、サボテンが干からびてしまったりする。
 良い場所が見つかったら、高さ一メートルほどの安定した台の上にラジオを置く。周りに物があると電波を吸収してしまうので、少なくとも半径一メートル以内はよく片付けておく。
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