有給休暇の取得
文字数 2,632文字
食堂でカツカレーを食べていた僕は、上司さんに小会議室へと呼び出された。
昼休みだろうと呼び出してくる上司さんに怒り半分、何がバレたのかと不安が半分の複雑な心境で上司さんの言葉を待つ。
そこには五日分の有給の申請の旨が記されている。
そう言葉に込めながら言葉を返す。
実際、実家にも帰る事だしセーフだろう。
◆◇◆
はじめまして! たぬきちと申します! 皆さん忙しい時期だと有給は中々取りにくいですよね!
え……? ウチはホワイトだから提出するだけ? 理由も聞かれない……?
…………。
……帰れよ。
おら! 定時だぞ! 帰れよ! このホワイト野郎!
……っと、少し取り乱してしまいましたね。ホワイトの方はお帰りくださいませ、この野郎。
あ、人種じゃないですよ? 念のため。
そして学生の皆さんもこんな物読まず、勉強や部活、友人らと語り合い、コミュニケーション能力を高めましょう。
何といっても社会で一番必要な能力は……そう、愛想笑いです。
これの熟練度で昇進と昇給が決まります。
ちなみに僕は……ニヤァ…ハッ!
ええ。下手くそすぎてバイト時代に何度かお客様と先輩にガチ切れされました。不気味にニヤァと笑って、短く馬鹿にしているかのようなハッ! と笑ってしまうのです。
ハが続かないのですよ。無理やり続けると下手くそなミッ○ーの物真似になる訳です。
っと、話が逸れてしまいましたね。そういうわけなので学生の皆さんは、愛想笑いの練習でもして下さい。
そして、ブラックの方! 有給を取る方法を教えましょう!
ニートは夢でも追ってろ。
今回有給取得の為に使用するのは交渉術。様々な場面で役に立つ技術なので、覚えて損は無いですよ!
では、どのような交渉術があるのか? まず一つ目。
初頭効果。
最初に受けた印象が後まで残る事ですね。
つまり、最初が肝心なのです。僕はもう五年目で最初に与えた印象は変えられません。真面目な好青年を演じてきた僕が、三日前になって五日分の有給を出すなんて暴挙に出たなら、最初からいい加減だった奴の数倍は株を落としてしまうことでしょう。
しかし、その最初のイメージ。真面目な好青年、これを逆に利用するのです。
つまりこういうことです。
続きまして、二分法の罠。
これは、複数ある選択肢を二つに絞ることで、どちらかを選ばないといけないと錯覚させることですね。
例えば、犬派かネコ派なんて有名ですね。
僕はハムスター派ですが、聞かれたならばどちらも好きと答えるでしょう。
ええ。間違えました。
これを利用するとこうなります。
ね? 休みが貰えたでしょう? とてつもなく長い。
どうしても有給が良ければこうしましょう。
刑務所内で作業すれば、給料が出所時に貰えるらしいですよ。
と、長くなってきたのでおふざけはここまでにしておきましょう。
◆◇◆
ドア・イン・ザ・フェイス。
最初に断られる前提の要求を行い、それを断らせる事で生まれる罪悪感につけ込み、その後の小さな要求を通す交渉術。
返報性の原理。
人は何かをしてもらったら、そのお返しをしないといけないと思う心理の事。