第3章 第1節 「医局アリ」

文字数 23,162文字

 平成19(2007)年4月──葦原は、総合医局で今年度初のせんだい市民病院定例全体医局会が始まるのを待っていた。前の席で、今月からまた外科に来た久斯が指導担当の伊野とヒソヒソと話しているのが聞こえてきた。
「伊野先生、またごちそうになります」
「ブンイチ、お前、それが目当てで外科をまた選んだんじゃないだろうな」
 会話の内容がわかって、葦原は感心した。伊野も、外科(副主任)医長がペアを組む実地修練医に飯を食わせるという七刄会の伝統を守っていたのだ。葦原が実地修練医のときには真田先生に毎昼毎夜、食わせてもらっていた。金が全然なかったというのもあるが、やはり外科医の働き方というのは、文字通り上司に食らいついて学ぶしかない。思えば、トイレ以外は本当に一緒に過ごしていたものだった。当時を思い出して、葦原は少し目頭が熱くなった。
「伊野、いい心がけだぞ」
 葦原が声をかけると、伊野はぎょっとして、振り返った。
「……別に、一緒のものを食うほうが動きやすいってだけです。研修医に昼休みなんか必要ありませんから。それと──」
 伊野は手に持っていた冊子で久斯の頭をパタンと叩いた。
「ブンイチにはもうおごらねえよ。お前は2年目なんだから、自分で時間をやりくりして飯を食うくらいのことはしてみせろ。それも臨床研修だ」
「そんな殺生な。こちとら

の男盛りなのに手取り月18万円で飲まず食わず、昼飯代まで削って教材とか買いまくってるんですよ。いいでしょう、時間は自分でやりくりします。でも、院内食堂には伊野先生のお名前でツケさせていただきます。これまでも、これからも」
 30歳前後の年齢層(around age of thirty)を「アラサー」と自嘲気味に表現する風潮があるのは病棟スタッフの会話から知っていた。
「これまでも……って、なんか、食堂の支払いが多いと思ったら、お前か!」
 葦原は笑った。久斯は外科ローテート期間のみならず、ごちそうになっていたらしい。
「ごほん。久斯、その分、ちゃんと1年目の面倒を見るんだぞ」
 外科には今日から新1年目研修医がローテートを開始していた。葉山、丹治、柴田の3名で、そのうち、葉山は外科志望だという。病棟のどこに点滴の針があるのかから学ぶことになるのが1年目研修医だが、久斯みたいな2年目がいてくれるとその指導の面で助かる。
「お任せください」
 あとでツケを払ってやるかと思った頃に、医局会が始まった。入職時オリエンテーションを終えた新研修医の自己紹介や、各診療科新任医師の挨拶、各種定例報告など議事が進んだ後、来春本格設置予定の新設救急科と、その専任部長の公募について病院長が発表した。
「研修医教育の一環として救急医療が注目を浴びているところですが、当院は救急病院としての実績はともかく、体系だった救急医療研修の環境整備という点では課題が多い状態でした。今般、中央診療部門の救急部を、専門専任で機動する独立した診療科としての救急科に改組することが決定しました。また、専任スタッフによる北米型ERへの体制変換も図り、100万人都市せんだいの負託に答える救急病院、そして研修病院づくりを目指します」
 新設救命救急科(仮)準備室室長の新谷副院長・内科系診療科統括局長が続けた。
「新設救急科では部長・副部長・主任医長の三役ポストは用意されておりますが、これまでのような各科からの兼務をしない、救急科単独で入院・救急外来診療が可能な体制づくりが求められます。部長職は公募となりますので、各診療科から自薦、他薦いただいてかまいませんが、外来やルーチン業務は出身診療科の方で忙しくて救急科の業務は二の次というのは許可されません。また、大学医局人事で異動したり入れ替えたりということもないようにご注意ください」
 となれば、大学医局人事で回している各診療科がおいそれと人を出すことはできない。部長職募集要項が続いて読み上げられたが、その条件には医学博士の学位は必須とされていなかった。これなら、大学院博士課程を自主退学した平田先生を擁立できるし、白神医師も立候補可能だろう。
 次の話題として、臨床研修管理委員長の津山循環器内科部長が発言した。
「諸先生方のおかげを持ちまして、初期研修病院として当院にはいまや全国から応募があり、かつ初年度から継続してフルマッチできております。来年度からは応募枠が6枠増やされることになり、18名の採用となります。引き続き、研修医教育のほどよろしくお願いいたします。一方、現在、後期研修という枠組みで、初期研修修了後の若手医師に臨床トレーニングの機会を提供する病院が増えてきております。特に研修医教育のカリスマ、総合診療部の白神先生のご高名のおかげで、当院には後期研修の応募・問い合わせが後を絶たない状況でございます。当院でもこれからは、そのニーズに全面的に答えるべく、全病院的な体制での後期研修医の積極的な受け入れを開始します。今後は多少なりとも待遇面での改善も図られますので、ぜひ、積極的に後期研修医の確保のほどお願いします」
 卒後臨床研修制度開始以後、どの病院・地域も初期研修医に続いて、いまやこの後期研修医の確保に躍起になっているという。昨今の若手医師は急ごしらえの制度の中でも真面目で意欲的に働き、戦力として計算できることがわかったからだ。彼らは医局に所属していないから、その処遇を巡って大学医局側に配慮する面倒もなく、相対的に安い労働力として使えるわけだ。早くから後期研修医を募集し、指導してきた白神医師には先見の明があったと認めざるを得ない。一方、七刄会後期研修否定派急先鋒ながらにして「七刄会の後期研修プラン」の立案・策定を仰せつかっていた葦原としては、その方向性は見えてきた気はするが、まだ具体案として形にできてはおらず、頭の痛いところだった。
 医局会解散後、久斯が持っているものが目に入って、思わず止めた。
「おう、久斯、それどうしたんだ? うちの会報だろう」
 久斯が手にしていたのは七刄会の年次会報だった。今年の最新号だ。
「伊野先生が医局会の間に読んでたものです。さっき、ゴミ箱に投げ捨ててたんですよ」
「なんてことをするんだ」
 伊野にも困ったものだ。七刄会年次会報には、患者情報こそ載っていないが、数百名にも及ぶ七刄会外科医の履歴や勤務地などの個人情報が掲載されている。こういうのを不用意に廃棄したものが悪徳業者に出回ったりするから、医療関係者を(かた)って仕事中の医者を呼び出すような営業電話が病院にまでかかってくるのだ。
「僕が伊野先生に返しておきますよ──葦原先生が怒ってましたって言っておきます」
「ん? ああ、そうか。ちゃんと返せよ」
 危険なデジャビュに襲われたが、久斯を引き止める前に神経内科の西宮に呼び止められた。
「葦原。どうやら白神さんは新設救急科部長ポストが目当てじゃないらしい」
「あれ、そうなの」
「誰か違うのを連れてくるらしい」
 てっきり、救急科部長選考は平田先生と白神医師の一騎打ちだと思っていたので、拍子抜けさせられた。
「へえ……ここの部長を譲るなんて謙虚なもんだ。十分な出世だろうに」
「謙虚なもんか。白神さん、ヘッドハンティングされているようだ。大学にも総合診療部を作るんだとさ」
「大学って……えっ、七大からか?」
「地方医大や私大なら話題にしないよ、好きにすればいいさ。七大病院でも初期研修受け入れ積極化だろ。それには、ああいう総合診療とかが売りになるんだろうさ」
 今年から、七大病院メジャー系診療科は初期研修医の積極受け入れを始めた。外に出たら戻ってこないからと、研修医が「外」を知る前に大学入局に誘導しようというのだ。現に、ストレート入局時代の名残りのまま七大病院での初期研修を受け入れているマイナー系診療科からは入局者減少の話は聞こえてこない。ただ、臓器別専門診療に特化している大学病院は、診療のイロハを学ぶ初期研修医にははっきり言って向いていない。七州一円から患者が押し寄せる七大病院は常に入院病床が逼迫しているので、研修医向けに診断や治療が簡単な患者を受け入れるわけにはいかない。その矛盾を解消するためとして、総合診療部のような臓器非特異的な診療部署が受け皿となりそうだというのは葦原も納得できる話だった。しかしながら、七大病院が初期研修医を受け入れ、学外病院が後期研修医を受け入れるというのは役割が完全に逆転していて、本末転倒も甚だしい──そう文句を言いたくなったが、西宮はそれ以上のことを言い出した。
「最初は大学病院特命教授で招聘して、ゆくゆくは大学院講座も持たせるんだとよ。やりすぎだと思わないか?」
 葦原は頭の中が沸騰する感覚に襲われた。
「おいおい、講座を持たせるってなんだよ。特命教授ならいざ知らず、医学部講座教授(フルプロフェッサー)になるっていうのか!?
 市内大規模(Aランク)病院部長職で出世だと言った自分が途端に恥ずかしくなった。
「アメリカ帰りの医者を引っ張ってきて、博士号とここの新設部長ポストの空手形くらいで4年間も飼い殺しにできたものかって考えてたんだが、俺もそれで納得したよ。地方医大出身者が七大教授と引き換えなら十分採算が合う。白神さん、今年が社会人大学院4年目だ、ちょうど博士号も取れる。ここでの時間は雌伏のひとときだったってわけさ」
「博士号が取れたからって教授になれるわけはないだろう」
 教授職の公募条件(学位・専門医・人格)には含まれていないにせよ、教授になるには相応のアカデミックキャリアが必要なはずだ。最低でも医学部講座講師くらいについていなければ、自薦も他薦もできないだろう。
「それこそ、大学病院の診療部局の責任者としての肩書に過ぎないとはいえ、特命教授で数年働かせておけば、立派なアカデミックキャリアだ。白神さんには七大免疫内科っていう強力な後ろ盾(バック)がついている。最低限条件を満たしておけば、あとは教授会次第だ。そもそも、総診なんていう新興領域ならアカデミックキャリアなんか誰も持ってないんだから、十分すぎるくらいだ」
 葦原はめまいすら覚えた。臨床の能力と経験だけで教授になるというのはなお信じがたいが、仮にそんなことが許されるなら、極論すれば、自分のような勤務医にすら目があるではないか。そんなことが許されるというのか──。
「すごい話だよな、葦原。七大に縁もゆかりもない地方医大出身の医者が、医局に属さず論文も書かず、アメリカ帰りで臨床と研修医教育だけやって、有名で人気だからって帝国大学医学部講座教授(インペリアル・フルプロフェッサー)だぞ。とんだ成り上がりだ」
 医局に属し、学外出向中にも論文を書いて業績づくりに余念のない、大学医局人としての出世街道のど真ん中を歩んでいる七大卒の西宮にはさぞ許せないことだろうが、葦原は正直、ドキドキしていた。
「そもそも、七大病院メジャー科は研修医なんか取らなかったんだ。外で揉まれて少しは話の通じる医者になってから初めて大学に戻ることができたもんだ。それを、外様(とざま)の人間に教授席まで用意して、研修医に大学に来てくれ残ってくれって媚びを売って……医学界の秩序と伝統はどこにいってしまったんだ」
 西宮は嘆いたが、葦原は白神をかばうように言った。
「七大も医者の教育にはこれまで以上に注力するわけだろ。大学は人を育てるところだ。案外、正しい路線じゃないか。独法化されて、大学病院も医業収益を上げろってことになったときに、美容形成を取り入れたところもあったって話だ。大学だって、時代に合わせて変わるもんだ」
 それで、例の件を思い出した。
「あれ、そういえば、お前のところの部長さん、どうなった?」
 西宮の当院での上司である神経内科部長は、医局の応援を取り付けることなく、防災医大教授に立候補していたはずだ。さっきの全体医局会では見かけなかった。まさか、念願かなったか──葦原の胸が高鳴る前に、西宮は顔を横に振った。
「ダメだった。春からは秋田に飛ばされた。老健の施設長だぜ。関連病院ですらない。今後は変な気を起こさないように、アカデミックキャリアに終止符を打たれたわけだ」
「そうか……」
「そして、ここの人員の補充なし。おかげで仕事が増えたよ。骨を拾ってやるなんてのも、口で言うほどラクじゃないな」
 かいた汗が冷えたような寒気を葦原は感じた。


 5月──。
 七刄会年次総会の日。例によって予定手術がないので、朝回診を終えてのんびりと過ごしていた。外科医局の机周りを片付けたり、学術誌に眼を通したりはするが、すぐに飽きた。それならばと、秘密の光合成スポットを訪れると、先客がいた。
「なにしてんだよ」
「ああ……葦原先生……なんかここ……リフレッシュできるんですよ……おすすめです」
 久斯だった。
「うるせえよ」
 気が削がれて葦原は戻ることにしたが、自分だけ光合成チャージした久斯も後ろをついてきた。総合医局前廊下の掲示板には「第4回七州総診セミナー」の開催案内のポスターが貼られていた。今年の演者は「濱野俊・米国ジョージア州立医科大学病院救急部副部長」だという。帰国後の医者だけでは飽き足らず、現役米国勤務医師をたかだか2、3時間程度の研修医向けセミナーに呼び込むのを見て、入局者確保に課題を抱える七刄会も見習うべきだと思った。侮るなかれ、海外留学経験者くらい七刄会にもたくさんいる。
「スパレジコンテスト、僕も出ますよ──今年は優勝します」
 隣に立った久斯がポスターを指さして言った。
「去年は特別賞だったっけ。頑張れよ」
 スパレジコンテストで優勝すると、副賞で海外留学できるだけでなく、関東に後期研修医としてスカウトされかねない。久斯は研究医志望だからそうされないだろうし、そうされても困りはしないが、宮田、檜山の件で七刄会とは因縁がある。
「それより、虫垂炎(アッペ)、こないっすねえ」
 久斯が来てからとんと急性虫垂炎の症例が来なくなった。久斯はアッペかどうかに関わらず、手術執刀1例を終えないと初期研修を修了できないのだ。それを目的にわざわざ2年目選択ローテートで来てくれたわけだから、奥の手を教えてやることにした。
「最近、この疾患を見ないなーと思ってると、その疾患の重症例が来るぜ。あとは、今日は用事があるから手術になるなよーと思っていると、臨時手術の症例がやってくる」
「ほう」
「だから、本当にお前がアッペに来てほしいなら、そう念じてみるのも一つかな」
 そう言うと、久斯は咳払いをしたあとに、本当に言い始めた。
「あー、アッペこないなあ。アッペくると困るなー。夜に飲み会があるから困るなー」
 そんなことは医者の世界では日常茶飯事だ。
「そんなんじゃ弱いよ。明日から夏休みでウキウキしてるときとか、学会で人手が出払っているときとかで、いま手術症例が来たら困るっていうイヤな切迫感が必要だ」
「うーん……」
 久斯は考えて、手を叩いて、言った。
「アッペが来たら、僕、七刄会に入りますよ」
 葦原は力が抜けた。
「七刄会入局をイヤなことの引き合いに出すんじゃないよ」
「外科の神様を振り向かせるにはそれくらいしたほうがいいかと」
「へー、いいのかな。そういうこと言うと、来るよー。アッペ、しこたまくるよー。7回生まれ変わっても7回とも外科に入局することになるよー。一度入ったら辞められず、上下関係が絶対の医局に入り、薄給激務の大学病院で働かされるぞー」
「勘弁! アッペ来るなよ! 来たら困る! 七刄会に今晩その場で入れられちゃう!」
「今晩その場って……ひょっとして、年次総会のことか。お前なんで知ってるんだよ」
「もう3回目になりますから、僕も。この日の夜の予定は空けているんです」
「お前くらいだぞ。医局員でもないのに3年連続参加なんて」
 年次総会をサボりがちな96年院卒組の同期生らにも見習ってほしいものだった。
「七刄会総会、好きなんですよ。飯はうまいし、楡井先生は美人だし、総裁は圧巻だし。エルドラド、シャングリラ、イーハトーブ……こう、七州みちのくエキゾチックって感じで」
「俺たちが現役で働いているところに考古学的な眼差しを向けるんじゃないよ」
「そんな、年次総会の夜にアッペが来たら困りますよね、葦原先生?」
「おう、それは困るな!」
 久斯の願いも虚しく、その後も日がな一日のんびりと過ごした葦原たちは、ピシッとスーツに着替えて、18時、だいぶ余裕を持って七刄会年次総会会場『上杉館(じょうさんかん)』に到着した。
「また来たね、ブンイチくん」
 今年はまたVIPのアテンド役を仰せつかっていた楡井に出迎えられた。
「楡井先生、ご無沙汰しております。せんだい市民病院研修医2年目外科ローテート中の久斯です」
「また外科を回ってるんだ。そのまま入局したりして?」
「それが……外科の神様はそれをお許しにならないようで」
 楡井は葦原を向いて首をかしげた。
「アッペがやりたいんだってさ」
「アッペなら2年目でやれるでしょう」
「いくらでもやらせたいんだが、こいつがローテートしてるとアッペが来ないんだよ。で、アッペが来たら七刄会(うち)に入局するって願掛けしたんだが、とりあえず今日は願いかなわずさ」
「なんだ、外科の神様はOKなんですね」
 楡井は納得したようにうなずいた。
「外科の神様にお知り合いでも?」
 久斯がそう反応すると、楡井は黙って葦原の方を指さした。
「葦原先生が?」
 久斯も葦原を不思議そうに指さした。
「葦原先生の手術を見たら、そう思うでしょ」
「葦原先生の手術は前立ちしか見たことない気がします」
「その前立ちがまたすごいんじゃない──って、研修医じゃ、まだわからないかもね」
「二人して指をさすなよ」
「葦原先生に前立ちしていただいた日々が遠い昔のようで、寂しいです。いまは伊野たちの前立ちばかりさせられてるんでしょう、おいたわしい」
「俺のことより、大学にアッペが行ってたりはしないよね? 初期研修医向けに集めたりとかしてない?」
「大学病院にアッペを集約してどうするんですか。いりませんよ」
「そうか。でもほら、おんなじのが何回も重なって来るときってあるじゃん」
「以前、アッペの季節性についての学会報告を見ましたよ。夏の始まりと、夏の終わり時期に多い印象だということです。いちおう有意差もあったとか」
 なんだか青春みたいですね、と久斯が横で言うのを葦原は無視した。
「確かにそういう印象だな。初期研修カリキュラムは間がわるいよなあ」
 その時期だと、ローテートパターンGの久斯研修医はすでに外科を離れ、2年目必修の小児科や産科ローテートで固定されていたはずだった。
「もし大学病院にアッペが来たら、どうぞうちに送ってくださいな」
 うなずいた楡井の目当てが来たようなので、久斯を引っ張って、葦原は会場に入った。
 19時──七刄会年次総会が始まった。
 今年は明るいニュースが多かった。まず、91年院卒Sキャリア(上部班)の土師(はじ)医学部講座助教授改め准教授が埼玉国立大学医学部の消化器外科学分野の教授に就任した。また、92年院卒Sキャリア(腺系班)の黒滝同准教授が北海道国立医科大学内分泌乳腺外科学講座の教授に就任した。七刄会から新たに医学部教授が輩出されたことを紹介する外神総裁も誇らしげだ。その総裁が、今年から日本消化器外科医学会の理事長に就任されること、そして来年には仙台で同学会総会・学術集会を会頭として主催することも公表され、場内には万雷の拍手が巻き起こった。葦原も拍手しながら、これこそが七刄会だと嬉しくなった。
「ふむ──伊野先生が言っていたとおりです」
 皿に大量に盛り付けた料理を口に運びながら、久斯が言った。
「ほう、伊野も七刄会を自慢していたか。お前ら、仲いいもんな」
 久斯は今年も、つっけんどんな伊野の下で、その指導に臆することなくやっている。
「自慢っていうか……医局ってなんですかって伊野先生にも訊いたんです。そうしたら、アリの社会だよって」
「アリねえ。まあ、医局員は毎日汗水たらして仕事してるからね」
 医局医者がアリなら、医局無所属(フリーランス)で自由にやっている医者がキリギリスだろうか。不意に白神医師が想起された。
「いえ。真社会性昆虫の話です。アリやハチは女王と呼ばれる個体を頂点とした社会を形成し、兵隊アリとか働きアリとかいて、役割分担していますよね」
「俺は生物より物理派だったから、そういうの詳しくはないが、聞いたことのある話だな」
「伊野先生曰く、医局というのは、教授という女王アリのために、兵隊アリや働きアリが必死に奉仕することで成立している巣穴(コロニー)なんだそうです。言い得て妙だなって」
 教授が女王アリ、大学スタッフが兵隊アリで、学外医局員が働きアリか──。
「言い得て妙じゃなくて、言うに事欠いて、だ。まったく。総裁教授をアリに(たと)えるなど許されん」
 自分が働きアリであるのはかまわないが、総裁をアリ呼ばわりとは不敬極まりない。
「そうですか? 教授という女王アリが大学に医局という巣穴を作る。他のアリは手術をしたり論文を書いたりして、せっせと巣穴に業績(エサ)を運ぶ──まさにそうかと」
「別にそれはどんな組織でもそうだろ。わざわざ、アリに喩える話じゃない」
 どんな組織でもトップが居て、トップが率いる組織のために下っ端は働くものだ。
「それだけじゃなくて──女王アリは次の女王アリの育成にのみ尽力する。そして、次の女王アリはどこか他の大学医学部に飛んでいって、そこに教授として嫁いで、新しい医局という名の巣穴を作る。働きアリは巣穴を維持するために勝手に働いて勝手に死ぬ。俺たちは、教授と、将来の教授候補のためだけに働いている。だから、医局という巣穴に入るんなら、医者は女王アリにならないと意味がない──んですって。以上、伊野先生かく語りき」
「かく語りき、じゃねえよ」
「ちなみに、同期のサイワイ氏が次の女王アリ候補なんですって。伊野先生はその人に負けたことをずっと引きずってるみたいです。以上、長野先生かく語りき」
 栄祝(さいわい)は05年院卒の中部班Sキャリアで、いまは海外に留学中だ。Sキャリアは粛々と出世していく。伊野はそれに負けたことで、いまだに卑屈っぽくやっているようだ。もう3年目ではないか。そろそろ直接言ってやらないとダメなのだろうか。葦原はため息を付いた。そして、それはともかく──。
「お前、他人事(ヒトゴト)のように言っているが、元祖医局アリはお前のところだからな」
 そもそも、七大も含めてすべての大学医学部は久斯の出身大学から始まっているのだ。七刄会開祖も東京帝国大学出身だ。是非はともかく、そういうDNAがあるとしたら、そちらさんのせいだ。
「じゃあ、うちらはみな同門ですね」
「もとを辿ればな。他では言うなよ、アリだのなんだの。俺が叱られるんだから」
 久斯をたしなめていると、ステージが賑やかになった。新人医局員が名前を呼ばれた順に登壇して、総裁から「七刄会医伯補叙階書」を受け取っている。成瀬がいる。清水もいた。久斯もそう気づいて指さしながら言った。
「成瀬先生たち、なんだか顔つきが違いますよ」
「そりゃな。入局して根なし草じゃなくなったんだ。使命感ってやつが生まれるわけよ」
 安定したいつもどおりの七刄会の様子がうかがわれるに連れ、参加者に共通の次なる関心事としてはやはり、総裁教授の次期医学部長(大学院重点化により、正式には、大学院医学系研究科長兼医学部長)選考の行く末だろう。今年10月選考。現在の医学部長は基礎医学教室の教授であり、慣例からも次は臨床系講座の順番であり、七大臨床医学の盟主は当代総裁である。それはだが、ゴールではない。その先の、「七刄会から本学総長を出す」ことこそ悲願である。総会で総裁に拝謁すると、医局員としてなすべきことが再認識され、葦原は背筋が自然と伸びる。伊野と久斯が謂うアリの喩え話は、医局講座制の一面を表現しているものとして、構図的には矛盾はないかもしれない。大学に教授や教授候補となる出世頭がいて、大学の外でせっせとエサを運ぶものがいる。確かに、それが医局だ。しかし、伊野も久斯も気づいていない。うちの女王アリは巣穴で寝ながらエサを食っているわけではない。誰よりも働いてくださり、守ってくださっているのだ。これだけ立派な巣穴で働けるなら働きアリも本望というものだ──さて、アリの巣穴でタダ飯を食っている玉虫(ぶがいしゃ)にはそろそろお(いとま)いただこう。
「久斯、それ食ったら帰れよ」
「ちぇっ──葦原先生、アッペは別腹ですよ。アッペが来たら呼び戻しますよ」
 そう言って、久斯はもう一往復して皿を干したあと、院内寮(すあな)に帰っていった。
 21時、同専会、3F「天璇(てんせん)の間」──。
 同専会は牛尾のLPDの話題で持ちきりだった。せんだい市長LPD成功のニュースは、市長が退院時記者会見で次期市長選挙への出馬を初めて公的に表明したことも相まって、メディアを通じて全国レベルでの注目を集めていた。いまや、牛尾を「ゴッドハンド」ともてはやす声も聞こえてくるくらいだ。その牛尾がLPD臨床研究の進捗状況などを報告中、横から同期同専の蛇塚が話しかけてきた。
「これで名実ともに、牛尾が中部班のトップに躍り出たな」
「その言い方はおかしいだろ。牛尾が2年前にAキャリアになってたんだから」
 中部班人事は今年度末の医伯監会議で更新されるが、来年から牛尾が七大病院外科中部班最高執刀責任者に、そして葦原自身が石巻センター外科副部長になるのは既定路線だ。牛尾は上に、葦原は横に巡っていく。すでに道は分岐してしまっている。
「俺は今でもお前のほうが巧いと思ってるけれど、そういうのも風化していくんだろうなあ」
 蛇塚はそう言ったきり、黙って報告を聞き入っていた。
 同専会終了後、トイレに行った蛇塚を待っていたところ、帰りがけの押切先生が声をかけてきた。
「牛尾のこと、気になるか?」
「全然ですよ。牛尾もあれで苦労してるでしょうし。それに、LPD希望でやってきたPD症例のほとんどがこっちに流れてきて、伊野たち医長トリオにもありがたいことです」
 実際、大学を経由して、市外・県外からのPD紹介例が増えている。LPDを求めてやってくる患者が全例でLPD適応ということはないし、対象となる疾病は腫瘍だから悠長に順番を待ってもいられない。結局、標準的治療である開腹のPDの必要性にゆるぎはない。実際、市民病院でPDを受けた患者は術後、笑顔で独歩退院していっている。開腹のPDで負けたつもりはない。焦る必要はない。
「俺たちは俺たちのPDをしっかりやろう」
「はい」
 七刄会は一所懸命──飲み込んだその言葉が体内で反響していた。
 23時、同期会、国分町のBAR『1996』──。
「今年はみんな参加してくれて、大変嬉しく思います」
 幹事の祢津がそう言ったのも無理はない。久々に96年院卒組──祢津、牛尾、寅田、葦原、立川、蛇塚、門馬、日辻、沢渡、香取、新沼──合計11名が揃った。そこかしこで勝手に会話が弾んでいるようで、祢津の真面目な挨拶を誰も聞きやしない。
「しかし、学外はあっという間だな」
 葦原は日辻と話していた。ついこの間、こうしてここで同期会をしたはずだが、気づけばもう、それから3年目なのだ。
「日辻は来期は……えーと」
市外小規模(Fランク)病院だよ」
「ん、亘理(わたり)町立病院だろ。俺も石巻だ」
 来年はみな、勤務地が変わる。大学に残る祢津、寅田、牛尾以外は一斉に市外に出るタイミングだった。狭い店内に集った同期を見渡して、葦原は言った。
「そうそう……日辻、誰か、医局を辞めそうなやつはいないか?」
 結局、真田先生に頼まれた、匿名の辞表の差出人は見つかっていない。真田先生に急かされていないからと延び延びになってしまったが、わからないならそうと結論づけて報告を上げるべきなのだろう。今日の同期会がラストチャンスだと思っていた。
「香取とか新沼のことか?」
「それはまあ、そうなんだが」
 匿名の辞表の件を話してよいかと迷っていると、日辻が言った。
「お前はどうなんだ、葦原。みんな心配してるぞ」
「俺? まさか」
 葦原は首を横に振った。恥ずかしながら、医局を辞めるという発想は持っていない。
「ふうん……そんなの、お前くらいだろ。みんな、医局なんか辞めたいだろうさ」
「そんなことないだろ。開業組以外はみんな、辞めないって言ってたぞ」
「表立って辞めるなんて言うやつはいないよ。しがらみはあっても勇気はないから、医局にすがっているだけでさ。本心は辞めたいだろうさ」
「ええ、そうかあ?」
 葦原が訊いたくらいでは皆、本心をさらけ出してくれてはいなかったのか──となれば、このミッションはもう、お手上げだった。
「おいおい、葦原Bキャリア、しけたつらしてるじゃねえか」
 寅田がからかいながら割って入ってきた。
「おやおや、これは、寅田Aキャリア──」
 寅田剛毅。七刄会医伯長。90年七大医卒、96年七大院卒。七大病院診療講師(血管班)。
「次期七大病院外科診療助教授・血管班最高執刀責任者・七刄会医伯監のおでましだ」
「助教授じゃなくて、准教授っていうようになったんだぞ」
「知ってるよ」
 平成19(2007)年春から、大学教員の呼称が一部変更となった。教授・講師はそのままで、助教授は「准教授」に、助手は「助教」に改められたのだ。それぞれの教員の研究者・教育者としての独立性を確立させるためだという。たとえば、従来の「助手」は大学教員として正規の職位ではあったが、「助手」の字面でそうであると理解されづらく、「助手(文部教官)」などと但し書きをする必要があったのだ。
「それより、とらちゃん、俺と一緒に痔核(ヘモ)脱腸(ヘルニア)静脈瘤(バリックス)日帰り手術(デイサージャリー)クリニック、開業しようぜ」
「はあ? 開業なんかするかよ。葦原、学外転落して(くさ)ってたか」
 寅田とは大学医学部の頃から仲がよく、気のおけない間柄だ。とうていこいつが辞めるとは思えなかったが、訊いてはいなかったから、形ばかりそうしただけだ。
「そして、そこで終わりだ。あと3年で俺らも学外転出だ。この3年もあっという間だったからな。そうなったら、あとは学外でお互いのんびりやろうや」
 寅田はAキャリアとして今後、七州災害医療センターなど大規模病院の幹部ポストを渡り歩いては行くが、巨視的に見れば葦原と同じ、所詮は教授にならない勤務医のキャリアだ。特に寅田は祢津と同じ研究班出身だから、ここから同じ血管外科領域で更に出世していく祢津と比べて思うこともあるのだろう。
「ところで葦原──俺はお前に、大事な話がある」
「なんだよ、お前、もしかして、医局辞めるのか?」
「だから、俺は学外転落したお前みたいに腐ってないの」
「そうやって学外転落って言ってると、真田先生に怒られるぞ」
 真田先生は医局長として、学外に出ることが悪しざまに言われるのを嫌い、本気で怒る。
「おっと、口が滑った──いやな、お前もあれだ、家、買うのか?」
「そんな甲斐性はないよ」
「だよな。安心した。立川のやつが泉野区に土地を買ったって聞いたからよ。全く」
「これから買えばいいだろう」
「どこにそんな金があるんだよ。しょぼい建て売りを買うわけにはいかないだろ」
 寅田のようなやつが、家を買えるかどうかでクヨクヨしているのが葦原には面白かった。あと3年、大学病院の安月給で暮らすことになる寅田にはハードルが高いのだろう。医者は世間様に稼げると思われてしまう分、こういうことが気になるものなのだ。
「それにうちの子も医者になりたいって無邪気に言うんだよ。それで、東京の私立の大学に行かれでもしたら、お医者様ともあろうものが一生、賃貸マンション暮らしだぜ」
「香取や新沼が財テクに詳しいみたいだぞ、相談してみろ」
 それを真に受けたのか、寅田が本当に香取のところに行ってしまったのがおかしかった。
 葦原は七大大学院96年院卒組を見渡した──みな、もしかしたら医局を辞めたいのかもしれない。辞められないだけなのかもしれない。ただ、それぞれで歩み、背負っている。それが答えのように思った。これでタイムアップ、いや、ギブアップだ。
 国分町の北側出口に面した定禅寺通りで日辻と帰りのタクシーを待っている間、何組か学年の違う七刄会医局員を見かけた。押切先生のいる集団も見かけたが、別れてこちらにやってきたのは──。
「真田先生! 奇遇ですね。先生も同期会でしたか?」
 すぐにこちらを認識したようだが、どうやらだいぶ気分が良くなっているようだ。
「奇遇もなにも、総会夜の国分町は七刄会の貸し切りだ」
 タクシーが1台止まった。同じ方向だからと一緒に乗った。
「真田先生、ご無沙汰しております」
 助手席に乗り込んだ日辻が後部座席に向いて挨拶した。
「おう、日辻。たまには医局に顔出せ」
「はい」
 タクシーが走り出すと、真田先生が例の話を切り出した。
「で、どうだ。めぼしいのはいたか」
 日辻の存在が気にはなったが、さっき、日辻にもその話をしていたからよいかと思い、答えた。
「いちおう同期全員に当たりましたが……すみません、見つかりませんでした」
 お手上げだった。牛尾には実は訊けていない。今年の総会を通じて、話しかけられなかった。LPD成功の大立者に葦原の口からこんなことを訊けはしなかった。
「改めて辞表を送ってきたわけではないんですよね?」
「名無しの辞表を医局に出したなんて間違いに自分で気づかない限りはな。当人があれで義理を果たしたと考えていたら困るんだがな」
「そういうことを訊いて回ってるせいで、俺が医局を辞めたがってるんじゃないかって、みんなが慰留してくる始末です。学外転落して腐るなよ、なんて」
「……お前たちもそんな言葉を使っているのか?」
 しまった──一瞬で酔いが冷めていく。
「いや、寅田がそういう言葉でからかってくるんですよ。困ったものです、ははは……」
 あとで叱られるだろう寅田に心の中で謝った。
「七刄会外科医は七大の外に出てからが本番だ。これはすべての七刄会外科医の信条だ」
「はい、心得ているつもりです」
 Sキャリアとして他の大学医学部の教授になろうが、Aキャリアとして市内外の大規模病院の幹部になろうが、Eキャリアとして開業しようが、遅かれ早かれ七大の外に出ることに変わりはない。そして、そっちのほうがキャリアは長い。「大学を出てからが本番」はおためごかしではなく、事実なのだ。大学に定年の最後までいられる医者はただ一人、その科の教授だけだ。その医局で十何年にたった一人の計算だ。それすら、他大学から教授を迎えてしまったら0になる。大学から出ることは医者として必定なのだ。
「わかればいい──」
 車内の沈黙の気まずさでつい、葦原はいらぬことを言った。
「えーと、たとえばそれが俺だったらどうします? そう言われたりもするんですよ」
「それだったら話は早いが──それはないと思ってお前に頼んだんだ」
「どうしてですか?」
「お前、医局好きだろ」
「好きとかきらいとかないですよ、やだなあ!」
 葦原は火照った。
「照れるなよ。なあ、日辻」
「……あっ、ええ、はい」
「じゃ、いったんこの辺で切り上げようか。ご苦労だったな」
「お役に立ちませんで、すみませんでした……あっ、運転手さん、この辺で停めてください」
 大学病院近くに停めてもらった。
「俺はここで降りますので、真田先生、おやすみなさい。日辻、じゃあな」
 日辻に声をかけて、葦原は逃げるように降りた。


 6月──神奈川県で開催された日本肝胆膵外科医学会総会・学術集会から戻った翌日、葦原は総合医局で白神医師に捕まった。相変わらず、白衣を着ていないどころか、今日はスーツ姿だった。
「葦原先生、おかえりなさい。診療をお願いしたい患者さんがいまして──」
 後期研修医拒絶の件を謝罪して以後、こうして、ダイレクトに診療を頼まれることも多くなった。患者情報を確認して、外科で引き継ぐことを伝えたあと、葦原はついでに総合診療部の後期研修事情について訊いてみた。蛇の道は蛇だ。
「先生のところはだいぶ後期研修の人気が高いようですが、彼らはここでトレーニングを積んだあとはどうするつもりなんですか?」
 百歩譲って、初期研修修了後の若手医師の進路の選択肢として後期研修というやり口を認めてやったとしても、その後が続かないというのが葦原の最大の懸案だった。例えば、白神医師率いる総合診療部の後期研修医らは今後どうするのか。現在、総合診療部の常勤医ポストは白神医師のそれだけだ。これから待遇改善が図られるとはいえ、勉強の大義名分で若手医師を後期研修医つまり非常勤身分で囲っておくのも数年程度が限界だろう。救急部ですらその診療科昇格には長年を費やした。増やしてもらえるかどうかわからない常勤スタッフ枠を待ちながら、後期研修後も非常勤で働かせるつもりだろうか。それとも、噂通りに七大に栄転して、そこに引き連れていくのだろうか。
「本人次第でしょう。国内でも海外でも、勉強したいところで勉強すればいい」
 その発言はないだろう──葦原は苛立った。それでは、今いる総合診療部の後期研修医はもちろん、白神一派に乗せられて関東に流れていった宮田や檜山らはどうするのだ。自分が七大に栄転するからと若手を捨てていくつもりか。
「無責任じゃないですか」
「ほう、無責任ですか」
「ええ。それでは、若いやつらは登った梯子を外されるようなものじゃないですか。そういう残酷なことはできませんよ。上の人間は、下の指導だけでなく、そのポストを用意するものでしょう。それが医者の上下関係の基本かと。医局だと当たり前のことです」
「それだと、ポストの見返りとして、若者を働かせているだけのように聞こえますがね」
「そういう一面があったとしても、わるい話ではないでしょう。医者の世界じゃ、ポストとトレーニング、キャリアとスキルは不可分のはずです。だから私は言ってるんですよ、若いやつらは後期研修なんかにうつつを抜かしてないで、とっとと入局しろって。それなのに、大学の医局に、今の若者のための後期研修プランを考えてやれって言われて、俺は困ってますよ」
 つい、本音が漏れた。白神医師は笑った。
「失敬──葦原先生、今の若手がほしいのはなにかわかりますか」
「入局しないで専門医ゲットとか、ぬるい考えがあるとは聞いていますが」
「専門医とか学位とかは二の次ですよ。ほしいのは、モラトリアムですよ」
「モラトリアム? これまた、ぬるい考えですね」
「そうおっしゃらず──時間が必要なんですよ。今の若手は賢いから、みんな入局することの重要性はわかってますよ」
「……本当ですか」
 そうではないから入局してもらえないのだと思っていた葦原には驚きだった。
「先生たちの世代はむしろ医局がどんなものかわからないままに入っていたでしょう」
「それはまあ、そうですね」
「いまの子たちは逆にわかりすぎてるんですよ。わかっているからこそ、後期研修しながらもう少し様子を見ていたいだけなのです。医者として右も左も分からないうちに他者に自分の人生を委ねることに臆病になるのは当然でしょう。彼らはいま、後期研修という自衛策で自分を鍛えながら、拠り所となるキャリア観を模索しているだけです。別に後期研修をしたいわけじゃないですよ」
「……後期研修をやりたくてしているわけではないんですか」
「ええ。私達の若い頃以上に、彼らのほうが一人前の医者になりたいっていう焦りは強いはずです。初期研修必修化後の世代は、旧態依然とした医療界の中で価値観だけが解放されてしまった、いわば被害者だ」
「いやいやいや、入局しろって言ってるのは別に、取って食おうってわけじゃないんですよ。医者人生に不安なら、なおさら入局しちゃったほうがいいんですよ」
「ふふっ、葦原先生。待ってあげましょうよ。入局しようがしまいが、医者のキャリアの選択肢はどれを選んでも一長一短、痛し痒しってことに気づくには時間がかかるものです。ただ、医者は臨床の現場に立つ限り、それがモラトリアムであっても成長するし、患者の役に立つ。医者の世界に駆け足はあっても、足踏みはありません」
「モラトリアムでも成長する……?」
 葦原には目からウロコの発想だった。
「ええ。ですから、私は彼らが自分なりの答えが見つかるまでいくらでも勉強させてやるし、次の進路が見つかったら、その進路を全力で応援しますよ。コネが利きそうなところならいくらでも口利きしてやります」
「……それは総合診療のような、大学医局がない診療領域だから通用する方便です。うちのような、歴史と伝統のある外科学教室では無理です。たとえば、後期研修と言って、どこぞの病院で勝手に外科的な後期研修して、外科医として変な手クセがついてしまうと、入局後は教える方も教えられる方も困ります。手術のやり方も外科医としての暮らし方も医局のルールに最初から染まったほうがラクですよ」
「ここで後期研修してもですか?」
 白神医師は地面を指さしていった。
「市民病院ってことですか? 診療技術面でなら大丈夫です。医局の関連病院ですから、術式も物品も全部共通です」
 七刄会(うち)の関連病院はせんだい市内外に大中小規模多数あり、扱う疾患層は異なるにせよ、行われる手技や術式は統一されている。
「じゃあ、いいじゃないですか、大学医局の理念と技術が行き渡っている関連病院で、若手医師にモラトリアムを一生懸命にやらせておけば。今の若手は賢いから、入るべき医局があるなら遅かれ早かれ、入りますよ。外科さんはただ、若手が後期研修後に入局しても不利にならないように配慮して、そうアピールして、待つことです」
 七刄会関連病院で後期研修をするなら、入局しないで七刄会外科のトレーニングをするというジレンマは解消できる──そこまでは葦原も考えついていた。その先が問題なのだ。
「いや、それこそが最大の懸案事項(ネック)なんですよ。後期研修後に入局となると、初期研修後にすぐに入局した医者に遅れた分、同学年の人間に差がつけられるじゃないですか。それって、我慢できないもんでしょう」
「じゃあ、みんな後期研修してからでないと入局させなければよいのでは」
「そんな、極端な──そんなことしたら、数年分、何十人もの外科入局者がいなくなり、大学の研究と大学病院の診療を下支えするマンパワーが消滅してしまう。その分の医者を地域の病院から引き上げることになりでもしたら、そこの地域の外科崩壊を引き起こしますよ」
「医者としての習熟度はともかく、後期研修医が入る分、そこの病院に派遣している医局医者を大学に戻すなどして調整すれば、現場の医者の数勘定は合うでしょう。これは無理、あれも不可なんて言ってたら、七州地方に医者がいなくなりますよ」
 反論できなかった。乱暴な言い方だとは思ったが、バランスの取りようはある──いや、それこそが医局の機能なのだということも、それができるのが七刄会だということも葦原自身、気づいてしまった。
「……おおいに考える余地はありそうです」
 白神医師は口角を上げて、言った。
「ふふ、葦原先生はいい先生ですね」
「はあ」
「どうせ、医者なんて、卒後数年までに結婚して、その辺に居着くんですから、いかにその数年を足止めしておくかなんですよ。だから、初期研修と後期研修で若手医師を集めて留めておくことが肝心なんです。若者たちのモラトリアムがしがらみに変わるまで、年寄りはフトコロを広く見せて、ニコニコしていればいいんです」
「……白神先生も、意外に腹黒いことを考えるんですね。ちょっと、驚きです」
 いつもきれいごとを言うように思っていたので、その俗っぽい発言にむしろ葦原は好感を抱いた。
「入局しようが後期研修しようが、日本で医者をやっている限りは有意差はつきませんよ」
 さり気なくひどいことを言われて、葦原は許しかけた心を抑えた。
「それでは、さっきの患者さんの件、お願いしますね」
「はい──すみません、時間を頂いてしまって。先生はこれから外出ですか?」
「ええ、七大病院にお呼ばれしているもので、失礼します」
 七大教授になるための段取りか──そう邪推して白神医師のスーツ姿の背中を見送りながらも、いまの葦原は、学外関連病院を舞台とした「成長できるモラトリアム」という後期研修コンセプトが脳内で乱反射するのを追いかけるので精一杯だった。
「葦原は白神のやつとも仲がいいんだな」
 白神医師と入れ替わりに医局にやってきた押切先生に声をかけられて、我に返った。
「そんなんじゃないですよ」
「そうか──葦原、秋の地方会合同学会の話は知ってるな」
「はい。えーと、SSSS(フォーエス)だ」
 各種医学系学会が開催する学術集会で、年度下半期開始にあたる秋頃のそれは「東日本地方会」とか「七州地方会」など、ブロック単位で行われる。今般、それぞれ異なる専門領域を担う外科系学会の七州ブロック地方会が合同で行われる運びとなった。外科不人気の払拭、外科医不足の打開を目的に、外科系学会全体での協調が必要と考えられたのだ。それが「外科系学会七州地方合同学術集会(SHICHISHU SURGICAL SCIENCE SYMPOSIUM)(SSSS)」である。その記念すべき第1回が七刄会総裁を会頭(チェアマン)としてこの秋にせんだい市で開催される。
「シンポジウムの依頼が来ている──テーマは、難関肝胆膵外科手術のこれまでとこれから、みたいな感じだ」
「さすが、押切先生。スライドづくりは任せてください」
 葦原らが専門とする肝胆膵外科領域は課題が山積している。具体的には手術が難しく、また手術が成功しても根治とイコールでもない。どう克服するかの議論が白熱する。その難問をミリ単位で切り拓いていくための、大学病院時代それに市民病院に来てからの手術データがたくさんある。
「今回は趣向を凝らして、プロコン形式でやるってさ。PD対LPDでな」
 プロコン(pros and cons)とは、議論のある領域で賛成(プロス)反対(コンス)に分かれて討議するやり方である。伝統的で標準的なPDに対して、新規的治療であるLPDの画期性と妥当性を議論するというところだろう。LPDとなれば相手は牛尾だ。
「押切先生とプロコンとは、牛尾も出世したもんですね」
 学術集会シンポジストともなれば普通は、医学部講座講師以上、大病院部長以上が担当するが、当該分野で業績急上昇中の中堅医師が抜擢指名されることもある。学術集会は有望な若手を内外に喧伝する登竜門でもあるのだ。
「それでだ、葦原、お前がやってみないか?」
「えっ、俺? いやー、滅相もない。やはりこういうのは然るべきお立場の方でないと」
「牛尾と同期同専同士だ、無礼講でやりあってみろ」
「いやいやいや」
 とりあえず発表スライド作りはさせてもらうとして、演者として登壇するかは限りなくお断りの形で保留にさせてもらった。序列や格式というものがある。上司の覚えがめでたいというだけでそれを覆してはならないと思ったのだ。七刄会外科96年院卒の中部班Aキャリアは牛尾なのだ。


 6月末──。
 伊野が朝回診に遅刻した。当直明けでも飲み会翌日でもなかったので、出勤途中に事故にでもあったのかと心配したが、終了間際の回診に合流してきた伊野の寝癖頭が医学的な無事を物語っていた。
「たるんでるな、伊野」
 押切先生が叱責した。外科はチームで動いているから遅刻は厳禁だ。伊野は今日、押切先生のPD前立ちの予定だったが、それはペナルティとして取り上げられ、長野に変更された。伊野は言い訳しなかったが、その後に長野がこっそり教えてくれた。
「伊野は最近、大学時代のデータで論文書いてるんですよ。それで、寝てないんでしょう」
「ほう……それは殊勝な心がけだな。遅刻しなけりゃ褒めてやりたいところだ」
「なんでもかんでもネタにして論文を書いちゃう久斯(ブンイチ)に刺激されたんでしょうね」
 その話も一悶着あった。久斯がいつぞやの七州総診セミナーで発表していた外科の解剖異常の症例は、その後に久斯がまた勝手に論文化して投稿し、かつ受理されていたことが発覚し、伊野が怒り、葦原も叱っていたのだ。大和先生がそれを面白がって許すようにと言ったことで、一応は落着したのだったが……。
「まっ、俺には棚ぼたラッキーですがね──じゃ、後ほど術場で」
 膵頭十二指腸切除術──押切執刀、長野第一助手、葦原第二助手──がなんとか無事に終わり、病棟に戻る前に一服しようと、第三助手だった久斯と総合医局に立ち寄った。お茶を飲んでいると、久斯がなにやらカラフルなチラシ持ってきて、葦原に寄越した。
「……七州総診セミナー……DVD化決定だあ?」
 そのチラシ曰く、『総合診療の若きカリスマ・せんだい市民病院総合診療部の白神航先生主催の七州総診セミナーの模様が、サイバーメド社よりこの秋発売のDVDで完全再現! 第2回の聖馬可国際病院の時枝翔先生、第3回の東海災害医療センターの氷室進先生、最新第4回ジョージア州立医科大学濱野俊先生といった豪華講演者に加え、映像化特典として、総合診療の生けるレジェンド、沖縄医療センターの玉城譲先生講演の伝説の第1回七州総診セミナーの模様もノーカットで完全収録!』とのことだ。
「よくやるよ、ほんと」
 手術動画を供覧するならまだしも、講演だけでDVDを出すとは芸能人きどりか──白神医師界隈の商魂たくましさにあきれて、久斯にそのチラシを突っ返すと、受け取った久斯はくしゃくしゃと丸めて離れたゴミ箱に投げた。外れた。
「おいおい、スパレジ・オブ・ザ・イヤーさんがそんな罰当たりなことしていいのか?」
 葦原は緊急手術で不参加だったが、先日行われた今年の総診セミナーで久斯は有言実行、スパレジ・オブ・ザ・イヤーに輝き、その副賞で夏休みに海外短期留学のはずだった。宮田や檜山のような白神一派なのではないか。
「罰当たりもなにも、競争の場がそこにあって、事前に対策して、勝利を収めたまでです。去年だって檜山先生より僕のほうが英語力も症例考察も上だったはずですよ。なんで負けたのか、いまだに納得いってないんですよね。

に花を持たせたんですかね。もしそうなら、実力至上主義のアメリカでやってきた白神先生も大したことないですよね。いや、それとも、事前の聞き取りで、パスポートの期限が切れているって言ったのが敗因だったのかなあ」
 檜山はたぶん、医学部在学中大学院卒の久斯よりも年下だ──葦原は苦笑して言った。
「さすが東大医学部&院卒、人生負け知らず、言うことが違うねえ」
 学術的活動に積極的なのは医学者の美徳だから、葦原も見習わなくてはいけないくらいだった。久斯はまた、外科でコソコソとデータ集めをしてSSSS(フォーエス)にも演題を出していた。
「10月の学会の発表スライドができたら、ちゃんと見せるんだぞ」
「へい。葦原先生も発表するんなら、僕にも見せてくださいね」
「研修医に見てもらうかよ」
 久斯はチラシを拾って、改めてゴミ箱に捨てた後、言った。
「あーっ、17時30分(ごじはん)だ」
 久斯はそう叫んだ。せんだい市民病院の終業時間だ。多忙な学外実地病院でその時間に医者が帰れるわけもないが、研修医はいちおう業務終了だ。
「合コンでも行くのか? アラサー研修医は元気なもんだな。あがっていいぞ」
「アラフォー指導医は呑気なものですね。虫垂炎(アッペ)を切らずに僕の2年目外科ローテートが終わってしまったんですよ! いったいなんのために僕はまた外科に来たんですか」
「ああ、そうだった」
 結局、久斯の今回外科ローテート期間もアッペは来なかった。久斯は来月から別の診療科だ。2年目必修ローテート科の「小産精地(小児科、産科、精神科、地域保健)」合計6ヶ月分は研修医ごとにローテートパターンが完全に固定されていて、動かせないのだ。
「一応、リポーマはやらせただろ」
 皮下にぷにんとした塊を持っている人間がたまにいる。脂肪腫(リポーマ)だ。整形外科か形成外科で()るが、市民病院では腹部前面にできた脂肪腫は外科でやる。それを1件、乗り気でなかった久斯に執刀させていた。これで初期研修医としての外科必修カリキュラムは満たしたことになる。
「なんか、ダサくて」
「こら。患者さんに失礼だろ。立派な外科診療だ」
「葦原先生はそれでいいんですか? 期待の超大型ルーキーが七刄会入りならずですよ」
「なんのことだ」
「アッペが切れたら七刄会に入ると外科の神様に誓ったでしょう」
「そうだっけ? 仕方ない。外科医不足にあえぐ外科の神様も、更になり手の少ない研究の神様には遠慮したんだろう。これを天命と思って、医学研究に(いそ)しむことだ」
「僕、また外科に来ますよ」
「おいおい、マジか」
「僕は、アッペをやりたいんです」
「執念深いねえ、お前さんも」
 久斯のそういうところは、研究医に向いているのかも知れない。
「葦原先生、明日までは魂は外科においておきます──アッペが来たら呼んでくださいね。PHSを抱いて寝てますから」
 久斯は今、院内寮に住んでいるので院内PHSが届く。
「それはいい心がけだな。了解だ。外科の神様もきっとご照覧あそばすだろうよ」
 久斯がなおもブツブツ言いながらも去った後、葦原あてに電話が入ったと夜間受付から連絡が来た。牛尾だった。
「葦原、例の患者が来たけど、無理だぞ」
「だろうな。何度もそう言ったんだ」
 先日、PD予定でここに入院していた患者が、大学病院でのLPDを聞きつけて、病院を出ていった。大学に行ってもLPDを受けられるとは限らないと説得したのだが、聞き入れられなかったのだ。同門とはいえ、市民病院からPDの患者を他にさらわれることなどありえなかった。最近では、市民病院での押切先生のPDの評判を聞きつけて他県から患者が来ることもあるというのにだ。入院後にああやって出て行かれるのは初めてだったが、外来では数件、同様のやり取りをして、うちのPDで渋々納得しているような患者もいて、正直辟易させられていた。牛尾がLPDを成功させてからというもの、なにかこう、七刄会PD最速で鳴らした押切チームの神通力のようなものが一つ失われて、面倒事が増えている気がしてならない。
「ただでさえ、こっちはほうぼうから適応じゃないものをLPDでって言われて困ってるんだ。葦原のところに戻すから、ふつうのPDで頼むよ。あの患者には、ふつうのPDなら市民病院の押切・葦原先生が一番巧いって言っておいたからさ」
「……サンキュー」
 葦原から電話を切った。
 

という言い方にも、葦原たちが一番巧いと言ってくれたことにも面食らった。以前の牛尾はそんなことを言っただろうか。LPDという唯一無二の武器を得て、牛尾はもう、葦原の知らない人間のようだった。
「ふつうのPDか──」
 葦原はSSSSに登壇することに決めた。外科医局でパソコンを開き、スライド作成に着手した。ふつうのPDでなにがわるい。それこそが七刄会外科中部班の本流だ。ふつうのPDをなめるなよ──次々とスライドが増えていく。
 ふと気づいた頃には22時を回っていた。苦笑した。これで寝坊したら、伊野に示しがつかない。葦原は帰ることにして、パソコンを閉じた。
 ちなみに、その後もアッペは来ず、久斯の2年目外科選択ローテートは終了した。
─────
©INOMATA FICTION 2019-2020
本作の一部または全部を無断で複写、複製、転載、配信、送信することを禁止します。また、内容を無断で改変・改竄することを禁止します。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

葦原建命(あしはら・たてる)

 七刄会医伯正

 七州大学病院外科診療助手(中部班)

久斯創(くし・つくる)

 せんだい市民病院「アラサー」初期研修医

 論文モンスター

 

真田善次(さなだ・ぜんじ)

 七刄会医伯総監

 七州大学病院外科特命教授

 七州大学医学部外科学講座医局長

藤堂壮平(とうどう・そうへい)

 七刄会医伯監

 元七州大学病院外科診療助教授・中部班最高執刀責任者

 せんだい市民病院副院長

 「雷神藤堂」「七刄会ラパ胆のパイオニア」

大和達郎(やまと・たつろう)

 七刄会医伯監

 元七州大学病院外科診療助教授・中部班最高執刀責任者

 せんだい市民病院外科部長

 「肝臓手術の名手」

押切慶二(おしきり・けいじ)

 七刄会医伯監

 元七州大学病院外科診療助教授・中部班最高執刀責任者

 せんだい市民病院外科副部長

 「七刄会PD最速」

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み