第2話

文字数 622文字

 「ほら、私みたいなか弱い女を、そんな屈強な男が取り囲んだらね、怖くて撃っちゃうんだから」
 シャウラはグラスを指でなぞり、音を出すような仕草を見せる。
 「悪かったよ。真面目に話をしよう」
 本当は、その得意の毒で男を何人もあの世に送り届けてきたシャウラを前に、愛想の良い相槌を打ってウヴァロヴァイトは手を打ち合わせた。
 「シャウラ。おまえはお手製の毒があれば敵が何十人いてもやれるこの間から言っているが、おまえほどの優秀な女なら、私の組織でもあっという間に管理職になれる。どうだ。今の組織をやめて私の群れに来ないか?」
 シャウラは指を止め、上目遣いにウヴァロヴァイトを見て来た。
 やや長い沈黙の後、その深海のようなドレスから溢れる胸をテーブルに乗せ、身体を前傾姿勢にしてくる。
 「ウヴァロヴァイトの組織って子供を増やして、その内臓で商売してるんでしょう」
 「ああ、ライオンはシマウマの群れから先ず仔馬を狙うからな」
 「あなたはライオンじゃないけれど……どうしようかしら。組織には子供がいっぱいいるんでしょう? 私、子供って嫌いなのよ」
 胸の谷間で真っ赤な石が揺れている。
 「子供って幸せの象徴に見えるの。勿論虐められてる子や、親に虐待されてる子がいる事は分かってる……でも、子供の時に捨てられて、愛する人の子供も一生産ませてもらえない私からするとね」
 グラスを床に放り、シャウラは「見ただけで反吐が出る」と締めくくった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み