第7話
文字数 2,369文字
さすがに素直に言葉を聞いてくれるはずもないか。とはいえまずいな。この人数だと全員に囲まれたまま、シミルごと......
いや、ヘンな考えはよそう。現実として現れてきちまいそうだ。剣を構え対峙する。
青い衝撃波が俺たちに襲い掛かる。困ったことにそれを何発も打てる。攻撃を弾こうにも剣は今にもどこかに吹き飛んでしまいそうな気がした。俺にも同じ力が使えれば......いや、無理か。
見慣れた城壁色の巨人。目の前には飛び降りた悪魔の姿があった。
彼女はそういうなりシミルを奪い取り空を舞った。
おい嘘だろ! 俺も連れていけよ!
彼女が戻って来る様子はなかった。
俺の顔の半分が吹き飛んだ。
そっちが本性かよ。わかったよ。戦ってやるよ。ただし後悔すんなよ。俺の顔が治ったとき、そいつは驚きを見せた。
衝撃波が襲い掛かる。キグロックってやつは意外にも固く簡単に貫通されることはなかった。彼は怒り狂ったように何度も衝撃波を放った。
俺には関係ない。能力をふんだんに使わせてもらう。キグロックの体を借りて城外に飛び上がる。
誰だか名前は知らないけど、やり合うのはまた今度だな。じゃあな。
衝撃波がキグロックを砕き、破片が俺の腹を貫いた。痛みはない。もう慣れたもの勝ちだ。
俺が駆け出しても兵士との距離は増えない。城の壁など気にもせず、ただ俺を、その先のシミルを狙い駆けてくる。
今更思いついたが、これだと俺はシミルに一生会えないんじゃ......
それは最悪だ。1人ではいろいろと不便が多すぎる。ここで何としてでもこいつを倒すか。
駆ける足を止め、顔を合わせる。息切れの俺に対してそっちはまったく冷静だった。うらやましい。もっと前から肉体強化しとけばよかった。
俺の身体が危機を伝えた。シミルと同じ氷の効果。力の少ない俺には死と同じようなものだ。ナイフを構え鎧の受け付ける位置を狙い定める。いや、ここは顔面を狙うか。
体を踊るように動かし攻撃を留めない彼に、俺は効果が付加される前の剣に飛びかかった。体に冷たさは走らなかった。
ナイフを目に無理やり押し込む。感触は最悪だが、敵は後退し片手で目を押さえた。
心は震えていた。当然目をくりぬいたことなんてない。が、目の前の熱を爆発させた彼に俺は笑っていた。俺でもこんなやつに、勝ち組の一員になれるのだと。
『おい......っておる!』
彼の剣の動きが止まった。耳元で何やら話声がかすかに聞こえてくる。誰かと電話をしているのか? 俺が取った行動は合流だった。
奴の追って来る様子はない。都合がいい。これでようやくシミルに会える。うれしい。
彼女はハンカチで俺が受けた血をぬぐってくれた。一体誰がやったか知らないが、この騒動に乗じないわけにはいかない。俺たちは王都の外へと走り出そうと考えた。
が、彼女が走り出した方向は真逆だった。
シミルの言葉を疑いたくなった。もしそうだとしても、その親がいたとして会いたいと思うか? 捨てられたのだろう? それとも何も告げられていないか。
残酷な現実が先か。夢が続くか。俺ならどうする?
そう、この感覚だ。俺たちは駆け出し城を目指す。シミルの情報が正しいかどうか、見せてもらおう。
俺なんてこの世界ではまだまだ赤ちゃんだからな。