第3話「まだらの紙」
文字数 1,299文字
放課後の教室で、私たちの目の前には奇妙な実験装置のようなものが置かれていた。
細く切られた短冊のような物の位置を直して、その上に振られた番号を確認すると、ショウヤくんは満足げに頷く。
消しゴムにセロハンテープで貼り付けられたプラスチックの定規が2本、実験装置の両端に立っている。
真ん中あたりには、定規同士をつなぐように渡されたヒモ。
ヒモには
この短冊は私のコーヒーフィルターをハサミで細く切ったもの。
授業中に勉強そっちのけで、彼がこれを作っていたのを私はちゃんと見ていた。
ショウヤくんは実験装置の一番下に置いてある受け皿に水を注ぐ。
私たちはこれから何が起こるのかと、息を詰めてそれを見つめていた。
明らかにがっかりした様子でアイリちゃんが別の机にだらんと座る。
他の4人も呼吸することを思い出したように、大きく息をついた。
得意げに説明するショウヤくんだったけど、私たちは誰もついていけていない。
ペーパーなんとか言う実験がどんな意味を持っていて、それが犯人探しになぜ必要なのか、本当に、少しも理解できていなかった。
頭の周りにたくさんの「?」を浮かべた私たちを見て、ショウヤくんが動きを止める。
メガネに指を当てて少し考え、彼はやっと私たちにもわかるように、噛み砕いた説明をはじめてくれた。
彼に指さされて短冊を見ると、短冊の下の方に書かれたビリジアンの丸が少しずつ
みるみるうちに広がってゆくその虹に、私たちは目を奪われた。
ショウヤくんの言葉を聞いて、私は慌ててペンを確認する。
ぜんぜん気にしていなかったけど、ここに残っているビリジアンのペンは、4本ともメーカーが違っていた。
私とショウヤくんの言葉を引き継いで、アイリちゃんが大きな声を上げる。
その間にも水性ペンのインクはコーヒーフィルターを登って虹色の模様を広げて行き、私たちは今度こそ本当に、息をするのも忘れてそれを見つめた。