第80話 松田ヒロシ

文字数 1,332文字

神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。神が御子を世に遣わされたのは、世をさばくためではなく、御子によって世が救われるためである。御子を信じる者はさばかれない。信じない者は神のひとり子の御名を信じなかったので、すでにさばかれている。(ヨハネ3:16〜18)

たばこを吸うしか、やることはなかった。小三の時に両親が離婚した。父が離れていったのが、寂しくてしょうがなかった。小6の時に、2歳年下の妹が脳腫瘍で死んだ。なんかどうでも良くなった。母親は、パニック障害になったり、メンタルがやられながら、パートに出たりでなかったりしていた。

中一になると、両親が離婚したり、父が浮気をしていたり、不仲だったりした不良たちが自然と集まった。万引きをしたり、かつあげをしたり、授業にでなかったり。みんなで笑いあって、楽しかった。教師は信頼出来ない。優等生ばかりやさしく扱った。将来なんてどうでも良かった。でも、一人でいる時は、寂しかった。たばこを吸うしかなかった。不良たちも、最初は仲がよかったけれど、陰口、いじめはしょっちゅうで、だんだん不信感が高まってきた。トップだった一つ上の奴をみんなではめて学校に来れなくして、俺も加わった。たまに家で何をしているんだろうと心配したが、口にだすことは出来なかった。

毎日がだるくて、しんどい。くだらない。なんで俺なんか生まれてきたんだ。車が俺をひいて、死にたい。そんなことを思うと、むかついて、万引き、かつあげ、後輩を殴って、物を壊したりした。でも、母親だけには、嫌がるようなことはしなかった。

ある日、いつも通り、不良のみんなで集まって、たばこを吸っていると、学校の近くにある公園で、みんなからボコボコにされた。裏切られた、体の傷より、そんな思いの方が痛んだ。

何もかも信じられなくなって、たばこを吸うために、たまたま通りかかった教会の喫煙所でたばこを吸っていた。修三君が、たばこをうまそうに吸っていて話しかけられたと思ったら、いつの間にかエロい話で盛り上がった。修三君は、クリスチャンじゃなかったから、安心して話をした。喫煙所では、クリスチャンの人もいたし、そうじゃない人もいた。くだらない話を聞いてくれた人が田原先生だった。不思議と自分の生い立ちを話した。心が楽になった。田原先生が牧師だと知ってから、勧誘される心配をしたけれど、なかなかそんなことをしてこなかった。勧誘より、喫煙所の掃除を頼まれた。なんか嬉しかった。半年たって、ギャルが教会に通い始めて、付き合いたくて、初めて教会の中に入った。笑顔でいる同世代に驚いて嫉妬した。みんながクリスチャンじゃないのがわかってほっとしたと思ったら、気づいたら教会に入り浸るようになった。英子さんは美して憧れだった。修三君の彼女だとしって驚いた。

愛、イエスキリスト、賛美、その言葉は最初はうざかったけれど、いつの間にか心地よくなった。それ以上に田原先生夫妻に可愛がられて本当に嬉しかった。喫煙所の掃除は、本当にやりがいを感じて、自分が必要とされるのが、誇らしくなった。
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登場人物紹介

篠崎修三・・・20歳で初めて出来た彼女がクリスチャンだった。

佐藤英子・・・修三の彼女。3年前にクリスチャンになった。ちなみに修三とは保育園の時の同級生

上田基一・・・修三と同じ大学で同級生の友達。両親がクリスチャンで、小学校に入る前から教会に通い14歳の時に洗礼を受けてクリスチャンとなる。高校に入ったころから、高校3年生あたりから教会生活やクリスチャンに疑問を抱くようになり、大学に入学してから間もなく教会を離れる。現在は彼女、飲み会など遊ぶことが楽しく、教会を離れて良かったと思っている。

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