第13話

文字数 1,594文字

 気が付いたら十三話なってたよ。そういう訳で、ちょっと遊んでみた。

 え~と、これで……こうだ!

 その結果がこれかい? あれ?
 遊ぶって、そういう意味?
 よし! 成功!

 で、どう? 入れ替わった感想は?

 早く元に戻りたい。
 え~。面白いから、一日くらい、このままでもいいんじゃない?
 ふふっ。やばい。

いや、ある程度は予想してたけど、それより面白いわ。

 弟と従業員で遊ぶのはやめてくれ。
 なんというか、所長って才能の無駄遣いしてるよね。
 使い道考えてほしいよな。
 ……。自分でやっておいてあれだけど、だんだん怖くなってきた 。
 ひょっとして、元に戻らないかもしれないって意味かい?
 違う。笑顔の副所長が何か企んでそう。
 やだなぁ。そんなこと、思ってないよ?
 いや、絶対何か企んでるな。

 う~む。見かけジムニーさんの、性格副所長って、背が高いうえに口悪いから、威圧感あるね。こりゃ子ども泣くよ。

 誰のせいだと。
 元に戻したいのはやまやまなんだが、なんせさっき考えたばっかりの術式だから、解術がまだないんだよね。
 ああ。新術あるあるだね。僕も、昔よくやったなぁ。
 あ、分かる? 思い付いたら、すぐ試したくなるよね。
 一回紙に書けば?
 書いてる時間がもったいない。
 今日の副所長は冷たいなぁ。良いアイディア思い付いてもさ、紙とペン探してる間に忘れるよねぇ。あと、あっても書くスペース少ないとか。
 今までの騒ぎの原因が解った気がする。……。二人とも、あとで空中筆記教えるから、書くものとルーズリーフの束持ってきて。
 おや、意外だね。てっきり止めると思ったけど。
 新術をいきなり試されるよりはましだよ。空中筆記なら、場所関係なく書けるから。とりあえず書いて、あとで他の記録媒体にも移せるし。
 あ、副所長が電話の時にやってる魔法だね。あれ、面白いよね。
 勉強なんて、久しぶりだなぁ。
 参考書、まだあったかな。あれ知識じゃなくて技術系だから、手順間違えると失敗するんだよな。
 副所長は簡単そうにやってるけど、結構難しかったりするのかい?
 あ~。俺の場合、慣れてるから術式を途中省略してるけど、初心者はちゃんと書かないと失敗する。
 ちょっと待って。ジムニーさんの声で「俺」って言うのレアじゃない?
 普段は「僕」って言ってるからね。
 昔は「俺」って言ってなかったか?
 あ~。懐かしいね。昔、君たちと喧嘩した頃だよね。
 ああ。そういえば、言ってたね。

ところでさ、副所長の顔で「僕」って言うと、ラスボスとか黒幕っぽいよね。終盤で裏切りそう。

 主人公サイドを裏切ったとみせかけて、実は敵サイドを内部崩壊させる為に潜入したに一票。って、これ、何の話だよ。
 やばい。副所長がだいぶ疲れてきてる。
 暑い中、仕事した後にこれだからね。
 それもあるけど、他人の魔力感覚が落ち着かない。書類系片付けたら今日はもう帰る。ついでにそのままお盆休み消化する。
 ふむ。体調不良による早退扱いにしとくね。で、お盆休みたけど、とりあえず三日くらい使う? 事務所はいいとして、家だと魔力結界が混乱しそう。今夜は遊鈴館泊まったほうが良さそうだね。
 今日含めて、五日分使う。どうせ有給あるし。

 あ、ジムニー、着替えとか遊鈴館に置いてあるか?

 一泊分なら置いてあるよ。たまに泊まりがけで研究するからねぇ。そういう副所長は?
 確か、二階に置いてあるな。って、今日はお前も泊まるのかよ。
 じゃあ明日、遊鈴館集合でいいかな。皆で勉強ついでに、解術方法も考えるってことで。
 了解。明日来る時でいいけど、忘れなければ、廊下の本棚から空中筆記の参考書持ってきて。
……ちょっとだけ蛇足。
 え~、今回、十三話なのに公開話数が十二話しかないことについて、説明させてください。数え間違いではないです。

 実は未公開の話がありまして、それ含めて、今回で十三話目になります。

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登場人物紹介

亜瀬宮 芦樹…読みは「アゼミヤ ロキ」。ちなみにこれは偽名。本名は不明(本人は覚えている)。怪異専門の何でも屋『怪招者』の副所長。主に事務、裏方を担当。

虚神『ロキ』の所有者という点以外は、いたって普通な魔法使い。得意魔法は防御、補助系。魔力属性は土と炎。

ハイテンションな所長(双子の姉)と友人(ジムニー)に振り回される苦労人。

使用虚神『ロキ』・原典、北欧神話。能力使用時には外見と性格がロキに変わる。しかし、本体である芦樹と性格が合わないためか、滅多に表に出してもらえない。名付きの虚神であるため、その実力は相当なものである。

亜瀬宮 芦鴉…読みは「アゼミヤ ロア」。芦樹の双子の姉であり、『怪招者』の所長。虚神「ロア」の所有者。成人済みだが、いまだに中二病。

高校卒業後、ふらりと旅行に行った先の異世界で、魔王を務めた経験がある。

人間でありながら、魔力保有量と回復速度は魔人と同格。

得意魔法は攻撃、認識操作系統。魔力属性は希少な万能型。

何故か常にハイテンション。特技は高笑い。

ジムニー

「最初に言っておくけど、僕は車じゃないよ? 人形は一緒にいるけど、しゃべるコオロギでもないよ? あとは、なんだろう思い付かないなぁ。

まぁ、あれだ。同姓同名の誰かと間違えられると、ちょっと悲しいかな。

それで、何の話だっけ。……ああ、自己紹介だったね。

普段は、ちょっと変わった場所にある時計屋で働いてるよ。趣味は旅行。色んな所に行ったことがあるよ。今教えられるのはこれくらいかな。

あ、台詞が長いってよく言われる。ん~、まだまだしゃべり足りないけど、そろそろ戻らないと副所長に怒られそうだ。それじゃ、またね~」

雷雨…ライウ。喫茶店「Wonder Land」と「猫の子 仔獅子」、バー「Under Ground」の店主。裏では情報屋も営んでいる。アイコンは猫だが、中身は二十代男性。

怪招者とは提携関係にあり、暇なスタッフが顔を出すことがある。……暇すぎて、いつの間にか全員集合していることがある。

仕事の依頼も受け付けているが、合い言葉が必要となる。

フェンリル…本名不明。名前の由来は北欧神話に登場する巨大な狼から。偽獣であり虚神持ちという、何でもありな《境界》でも珍しい体質。仕事は怪招者所属のカメラマン。最近、自身の興味とライからの誘いもあり、バー「Under Ground」の見習いバーテンダーも始めた。「モテる」と聞けば色々なことに手を出すため、友人達からの評価は「残念イケメン」。若干ナルシスト。……駄目な点ばかりに目がいきがちだが、実は低音イケメンボイスの持ち主。

偽獣特性・モデル人狼、ベースはシンリンオオカミ。満月が近くなると眠気が強くなる。興奮すると、八重歯と爪が伸びることがある。

使用虚神『フェンリル』・スキル「神食い」。一定の範囲内にいる他の虚神のスキル効果を下げる。加減と対象との距離しだいでは、一時的に無効化も可能。

晴…妖怪、天の邪鬼。人間大好き。常にテンションが高い。

特技は変身。普段は女の子の姿だが、その日の気分で青年の姿になることもある。特技と性格を活かし、動画配信者として活動中。動画の編集や加工は、芦樹がしている。

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