ちょお、きもちいい。

文字数 1,555文字

『生めよ。ふえよ。地を満たせ。地を従えよ。
海の魚、空の鳥、地をはう全ての生き物を支配せよ。』
おとうさんは、両手をひろげ、ピシッと決め顔、決めポーズで言った。
・・気になることは3つある、、、
いや、4つあるんだけど、とりあえずは3つだけ。
ひとつめ、
―なんでポーズとっているんだろう、だれも見てないのに。
あ、今は自分が見てるのか!
ギャラリー(自分)を意識した、おとうさんのまなざし・・・!
こちらの反応を期待しているのか・・・な・・?
・・・えーと。
リアクションに困ったので、とりあえず、両手を打ち付けてみた。
ぱちぱちぱち。
おとうさんの表情が、明るくなった。

じんるいは拍手をおぼえた!
レベルが1あがった!

ふしぎな音楽とテロップが頭にうかんだ。

ふたつめの気になることは、
―「おとうさーん、ー “生めよ”って、どうするんですかー。」
コレだ。
おとうさんが、硬直した。
『こ、こうのとりさんが、、、いや、なんでもない。』
「?」
『とりあえず、できたてほやほやのお前には、まだ早い・・・・・』
「じゃあ、いいや。」
自分はむずかしいことはまだわからぬ。
なんせ、まだできたてだから。
   ぶらーん。
   ぶらーん。
だから、気になってるみっつめのことをきいてみた。
   ぶらーん。
   ぶらーん。
「おとうさん、この、体の真ん中にある、ぶらーんはなんですかー。」
   ぶらーん。
体を動かすと一緒にぶらぶら揺れるのが楽しい。
『・・それは、お前のふえよ、が入ってるから大事にしなさい・・』
へーこれ、ふえよ、 がはいってるのか・・・
    ぶらーん。ぶらーん。
しつこく揺すって遊んでいたら、おとうさんが
『やっぱりアホの子か・・』みたいな目でみてきたから、ちょっと自重したけど、この、ぶらーんが、この、さわやかな風になでられていく気持ちよさ、ここちよさ!
今、自分は確かに生きてる!っていう喜びと解放感でいっぱいになるね。
    

さて、解放感をこころゆくまで楽しんで、生の喜びに満たされていたら、
おとうさんが、いろいろな形のものをつれてきたよ。
『これから、わたしが土から形造った、あらゆる野の獣、空の鳥をつれてくる。
わたしがお前に支配するように命じたものだから、お前が名前をつけてあげなさい。』  
「名前って、なんですか。」
『ひとつひとつの呼び方だな、例えば、お前はアダムだ。』
「土地」が「アダマー」で、そこからとられた自分は「アダム」らしい。
 へぇ。
     
・・・名前って、案外適当じゃね、と思ったのは内緒だ。
とりあえず、
おとうさんがにこにこして、こちらをみているし、
つれてこられた生き物たちもキラキラとした眼差しをむけてくるので、
うん、自分にも、この大量の生き物に名前をつける仕事できる気がしてきた!

えーと、
じゃあ、
このずっと丸くなって寝ているのは寝てる子で“ネコ”、ね。
この、自分の足元でずっと、くんくん匂いをかいで鼻を鳴らしている生き物が、“いる”ってかんじでイヌぅ、ね。
今、キキッて鳴いて、ここを去って木に登りだしたのは“サル”だな!

『・・・オヤジギャグのはじまりか・・』と、おとうさんが言ったけどなにそれ?
 よーし、アダムがんばっちゃうぞー!
     
鼻が長い?のは、なんか、ゾウだぞう、というインスピレーションにしたがって、ゾウにした。
まちくたびれて、黄色いふさふさしたのが、ガォーッっと吠えたのをきいて、
『雷音(らいおん)』というのがうかんだら、もうとまらなくなったね。
麒麟に、隼、蝙蝠、犀・・・・
お父様が、『キラキラネームのはじまりか・・・・』とつぶやいたけど、それも、なに?
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