日本列島・明石原人

文字数 7,359文字

2020/06/19 01:45

 そして、猿人類が出現した新第三紀。当時、ユーラシア大陸の一部だった日本列島には、メタセコイア(アケボノスギ)の落葉針葉樹林が広がっていました。約2300万年前・新第三紀中新世、火山活動でアジア大陸に亀裂が入り始め、2000万年前には、この地溝に海水が入り込み日本海が出来ました。そして1500万年前、大陸と切り離された日本列島が完成したのです。それから更に歳月が過ぎ、千葉時代と命名された第四紀更新世中期には、江戸湾霞ヶ浦太平洋が「古東京湾」という一つの海で繋がっており、房総丘陵を除く関東平野の大部分は海底に沈んでいました。凡そ5万年前頃・更新世後期に、私達の祖先が東アジア方面に到達したようです。やがて、日本列島への第一歩を成し遂げる人々が現れます。

2020/06/19 03:39
「戦前、播磨の海岸から更新世後期の化石人骨『明石原人アカシエンシス』が発掘されたけど、その後の検証で、正体は完新世の現生人類ではないかと指摘されたわ。また、陸中には約8万年前と推定される遺跡があり、日本列島に中期旧石器時代の旧人類が生存していた可能性が高いと言われているわね。『最古の日本人』は、石器捏造事件などの混乱もあり、今後の研究の進展に期待ね」
2020/06/19 03:42

 このように、日本国史の開闢には未解明も残されていますが、国立博物館などの見解によれば、凡そ4万年前、遂に人類が日本列島に上陸しました。我が国に渡る経路としては、考古学史料に富む高麗半島のほか、台湾琉球諸島樺太サハリンなどのルートが想定されます。沖縄島で化石人骨が発掘された港川人は、東南アジアに存在した大陸棚「スンダランド」のモンゴロイド形質を継承しており、港川人や縄紋人…つまり私達・日本人の祖先は、スンダランド方面から来たと云う説もあります。スンダランドやオセアニアのサフルランドは、氷河時代の終焉と共に海没し、人々はアジア太平洋の新天地へと脱出する事になります。民俗学でも、稲作などの日本文化が、南島から黒潮海流に乗って北上したと云う『海上の道』仮説が唱えられ、これは照葉樹林文化とも連関します。

2020/06/19 16:10
 高麗はKoreaの語源であり、本作では朝鮮・韓国の総称として用いる。
2021/02/26 11:12

「今は亡き、失われた大地であるスンダランドは、新宗教などのオカルティズムで『ムー大陸』伝説と結び付けて語られる事も御座いますね」

2020/06/19 16:12

 氷河時代の激しい気候変動で海没する大地がある一方、新たに生まれる大地もありました。関東平野の海底では、土砂・火山灰の堆積と、プレート衝突による隆起で、次第に古東京湾が浅く干上がり始め、第三紀以来の多摩丘陵が拡大すると共に、東京の武蔵野台地、千葉の下総台地、埼玉の大宮台地など、現代の私達にも「坂道」として馴染みのある洪積台地が形成されます。日本列島における最初の人類史は、考古学では旧石器時代(特に後期旧石器時代)に分類され、縄紋土器に先立つ時代という意味で先土器時代とも呼ばれます。私達の身の回りには、今でも数多くの宝石鉱物が存在していますが、人類が初めて道具に使う物は、どこの国でも「石」なんですね。文字が見られない原始社会を、先史時代と総称します。これが、宇宙創世から日本建国へと至る物語です。

2020/06/19 17:13
2021/02/26 17:01
2020/06/19 17:15

 この「地球と宇宙」の章を終えるに当たり、最後に人類文明の命運を考えたいと思います。この世界における人間の歴史は、果たして永遠なのでしょうか? 核融合反応でエネルギーを外部に放出している太陽は、外側に向かって体積を拡大させており、数十億年後には今の「主系列星」から「赤色巨星」へと膨張し、水星・金星・地球を溶かしてしまうそうですが、当面の問題はむしろ、それまでに人類が絶滅しないか…という事です。

2020/06/19 17:28
2020/06/20 22:23
 古生物から人類に至るまで、地球上の生命を大絶滅させる要因として考えられるのは、火山の破局噴火と、小惑星の衝突です。更新世後期7万4000年前、スマトラ島トバ火山において、巨大な陥没地形・カルデラ湖が出来上がってしまうほどの破局噴火が発生しました。火山噴火と言えば、灼熱の溶岩を想起する事が多いと思いますが、それだけでなく、噴出した火山灰が大気を覆うと、太陽光が地表に届くのを遮ってしまうので、地球の気候はむしろ寒冷化し、それが当時の人類に打撃を与えたとも言われています。日本列島でも、約9万年前に肥後阿蘇山が破局噴火しました。当時はまだ、列島に日本人は住んでいなかったと考えられていますが、奈良時代の『日本書紀』及び『風土記』には「天から山に『不知火しらぬい』が降り、その光に導かれて九州に上陸した景行けいこう大王おおきみ(天皇)が、この地を『火国』と名付けた」と解釈できる伝承が記されています。阿蘇火山は現在も活動しており、再び破局噴火した場合、西日本壊滅の恐れがあり、原子力発電所の立地をめぐる裁判の争点になっています。
2020/06/23 00:07
 「天皇」の称号が使われ始めたのは飛鳥時代7世紀、推古・天武帝の御代と考えられており、それ以前は「大王」と呼ばれていた。
2021/02/26 11:13
「そう言えば九州の修学旅行、思ったよりも楽しかったわね。カルデラの中に都市があって火口原の旅館に泊まるのも悪くない経験だったわ」
2020/06/23 00:12

 中生代白亜紀の末期6500万年前、ユカタン半島に直径15kmの小惑星が衝突し、恐竜やアンモナイトなどを大絶滅させましたが、このような危機は、過ぎ去った出来事とは言い切れません。2013(平成二十五)年2月15日・金曜、ロシアウラル山脈チェリャビンスクに直径17mの隕石が衝突し、衝撃波で4000棟の建物が破壊され、1200人以上の方々が負傷しました。「ロシアの隕石落下は人類史の中で初めて体験した小惑星衝突に伴う大きな自然災害でした」。しかも、その翌日には直径45m小惑星「2012DA14」が、人工衛星よりも地球に近い至近距離まで大接近していた事が発覚しました。そこで、Xレーザー光線電磁レールガン、更には核エネルギーなど、人類文明の科学技術を総動員して、地球に飛来した小天体を迎撃・回避する「スペースガード」が研究されています。


2020/06/23 00:16
緊急声明「ロシアの隕石落下に伴う日本スペースガード協会の対応と方針」(2013/02/24)
2021/02/26 11:14

チェリャビンスク隕石の破片は、標本として宝石鉱物の市場に流通し、淀橋国際ミネラルフェアでも販売され、案外簡単に入手できたわよ」

2020/06/23 00:19
2021/02/26 16:36
 一方で、核エネルギーの活用には批判もあります。チェリャビンスクはソビエト時代、軍事産業が大きく発展していた都市ですが、1957(昭和三十二)年には核兵器工場爆発事故という惨事が起こっています。つまり…原子力施設に隕石が直撃する可能性も、ゼロではないという事です。破局噴火や小惑星衝突は、それ自体が甚大な被害をもたらすだけでなく、原子力発電所や核兵器を巻き込む大事故を引き起こす恐れがあります。天体衝突の破壊力は、大噴火や核爆発に相似していると類推されていますが、自然災害が核爆発事故に連鎖するという最悪の事態は、断じて防止しなければなりません。しかしながら、いま現在の科学技術で、地球を天体衝突から防衛するには原子力エネルギーが必要であり、それは安全保障・国民防衛・軍事研究と密接に結び付いているのも事実です。人類が、原子核エネルギー技術と共生できるか否かは、私達自身の叡智に懸かっていると思います。
2020/06/23 00:28
2020/06/23 00:41

「冷戦における米国の戦略防衛構想『スターウォーズ計画』などを転用すれば、いずれ『(Anti)小惑星(Asteroid)隕石(Meteorite)(Cannon)』とでも呼ぶべき機構が出来上がるかも知れませんが、問題は…このような最終決戦兵器の技術が、人間同士の闘争に悪用されない保証も無いという事ですね…」

2020/06/23 00:57

 チェリャビンスク隕石の数年後、我が国では彗星の接近・落下を題材に取り入れたアニメ映画が流行りましたが、彗星も小惑星同様、地球に衝突する可能性が分析されています。そして…2019(令和元)年7月25日・木曜には、東京を壊滅させる程度の能力を持つ直径130m小惑星「2019OK」が地球に急接近しました。米国ブラジルの天文学者に発見されたのは、通過前日の24日であり、東京壊滅規模の小惑星が接近している事に私達はギリギリまで気付かなかったのです。地球表面の7割は海洋ですので、実際に小惑星が都市に直撃する確率は低いものの、チェリャビンスクの件も考慮すれば「明日、東京が無くなっていた」という世界だって、あり得たかも知れないのです。

2020/06/23 01:01

「過去・現在・未来の運命が(あらかじ)め定まっていると見る決定論は『ラプラスの魔』などと呼ばれます。それに対し量子力学では、ミクロな粒子の運動を確率論的に観測する不確定性原理があり、これをマクロの世界に類推すると、宇宙には複数の可能性がある…つまり、ここではない別の世界が選択されていた確率も、理論上は存在しますよ。宇宙自体も、無から有への障壁を超越する『量子力学的トンネル効果』によって創成されたようです」

2020/06/23 01:13

 そして現在・2020(令和二)年の国際情勢を見渡しますと、米国や日本などで「宇宙軍」の創設が進められています。事実は小説よりも…とは、こういう事なのかも知れませんが、これは新世界の序曲に過ぎず、その先には核融合炉、宇宙太陽発電衛星、そして小惑星からの鉱物資源採掘、更には宇宙旅行などの夢物語も、いずれ現実になっても不思議ではありません。火星と木星の間に広がる小惑星帯、冥王星など太陽系外縁のエッジワース・カイパーベルト天体、そして太陽系を包む「オールトの雲」から来訪する彗星…こうした小天体は、地球などの惑星を生み出した微惑星の名残だと考えられており、そこには太陽系の…宇宙の歴史が刻まれています。この地球世界は、既に自然環境においても、そして今や政治社会においても「宇宙時代」を迎えています。遥かなる太古から星空を見上げ、神話を語り継いで来た私達・人間は、今こそ誇るべき精神文化を温故知新し、進化させなければなりません。

2020/06/23 04:48

「因みに、ネバダ州には月の土地など『地球外不動産』を販売している会社があり、私も『火星不動産』を記念に購入した事があるが 、これに法的効力があるのかは怪しい(笑)。同社によると、国家政府の天体領有は『宇宙条約』で禁止されているが、個人や企業の天体所有を禁じようとした『月協定』は米露中など大半の国々が批准しておらず、ゆえに地球外不動産の取引は合法・有効だと主張している。また、政府は天体を領有できないはずなのに、同社は月や火星の『憲法』を勝手に制定し、政府の存在に言及していて面白い(笑)。なお、その月・火星憲法は『自分がしてもらいたいように他の人にしてあげなさい』と云う黄金律を統治原則にしている。これは『マタイ福音書』に説かれている『山上の垂訓』に由来するが、この教えは(不動産はともかく)宇宙時代においても大切な倫理だと思う」

2020/06/23 04:54

2003(平成十五)年8月17日・日曜に火星1エーカー(4046.9㎡)ファイルセットを注文、小計6000円であった。

2020/06/23 04:59

 いずれ避けて通れなくなるかも知れない話題として、いわゆる「宇宙人」に関しても言及しておきます。ある試算によると、1兆以上ある星のうち、生命が存在すると思われる星は約1億あり、そのうち数百万の星には高度な文明社会が存在する…などと予想されています。そこで、天文学者の中には、本気で異星人とのコミュニケーションを試みる「地球外知的生命探査SETI」プロジェクトが進められています。具体的には、異星人に地球人を自己紹介する電波を宇宙に送信したり、宇宙から受信した電波に異星人のメッセージが含まれていないか解読する手法です。但し、宇宙人が住んでいそうな天体は、光速でも地球から非常に離れているので、仮に電波交信ができたとしても、実際に遭遇するような接触は原理的に不可能だと、多くの科学者は考えています。

2020/06/23 05:03

「日本にも世界にも、宇宙人の存在や地球人との接触を信ずる新宗教が多く存在しますが、そこで説かれている『宇宙人』は、相対性理論などの物理法則を超克していたり、地球人に啓示・預言を授けるなど神秘性が強く、宇宙人と言うより『神霊』とでも呼ぶべき人格です。私達が宇宙人を語る時、それが地球人と同次元の科学技術や自然法則を共有する生物なのかそれとも何らかの超常的生命を想定しているのか、留意する必要が御座います。『超光速の円盤で地球に飛来し、テレパシーなどの超能力を駆使する宇宙人』に関しては、信仰の対象ではあり得ても、自然科学の研究対象として把握するのは、現状では困難です。でもまあ、夜空に正体不明の光が見えたりしたら、気にはなりますよね。もしかすると…」

2020/06/23 05:05
 いずれにせよ、破局噴火や小惑星、地震津波などの天災、そして戦争を始めとする人災の危機を乗り越えて、私達は21世紀を生きています。ですが…新時代を迎えた私達が遭遇し、その脅威を記憶に焼き付けられた最大の危機、それは…そう、ウィルスとの戦争です。現世の地球では、人類の環境破壊によって、第六の生物大絶滅が引き起こされている…と言われますが、そんな人間の力によっても殲滅できない病原体との戦いを、私達は強いられました。この「戦争」の行く末には、様々な情報が錯綜していますが、多くの人々が免疫を定着させ、ウィルスが無害な方向に進化し、致死率を下げ、広義の共生状態を実現しない限り、戦いは終わらないでしょう…。
2020/06/23 05:13

「十年以上前に、地理学科出身の伯父貴が、こんな事を言っていた。これからの戦争は、わざわざミサイルを撃ち込むよりも、見えないウィルスを都市にバラ撒くほうが効果的であり、それゆえに脅威であると…」

2020/06/23 05:15

アラビアからヨーロッパに伝わった錬金術には、単なる化学反応だけではなく『金を練ると同時に人間を練り物質を純化すると同時に魂を純化して神に近づく』と云うヘルメスの教えが含まれます。ヘルメス思想とは、ギリシャ哲学とエジプト神話を習合したヘレニズムの…(ry」

2020/06/23 05:19
 真の「黄金」を創るためには、精神の探究も必要です。科学技術の進歩による物理的な豊かさは、それを担う私達の、心の豊かさがあってこそ成立します。狭義の科学だけでなく芸術美学・宗教哲学をも総動員して、地球世界の「真善美」を認識したいと思います。私達はどこから来て、どこに向かうのか…これは、現代の神話です。
2020/06/23 05:21
2021/02/26 16:51

第一章 参考文献

2021/02/26 16:52
2021/02/26 16:53
2021/02/26 17:00
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登場人物紹介

【神霊矢口】とさみや じゅのうじょうだい アキラ

十三宮 寿能城代 顯

関東州 東京府 東京市 蒲田区


蠍座♏11月1日トパーズ

・一人称「私」

・二人称「あなた様

・地位 中級生?

・専攻 地理学(共生科学士)

・属性 

・武技 レーザー剣・自動小銃

・愛機 ステルス攻撃機ナイトホーク(誘導爆弾)


 十三宮聖の義弟、また星川初の養子。本名は「富田巌千代」で、宗教信仰者としての法号(生前戒名)が「アキラ」。東京の大森・蒲田で生まれ育ち、地理学などの探究に基づき文芸作品を創る「地球学(地理学文芸)作家」を称す。同人サークル「スライダーの会」を結成した会長であり、一心同体の校長(マネージャー)である春原あきらと共にサークルを運営。


「天主と神仏に感謝を、あなた様に幸福を…合掌」

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