第5話(2) 古墳、ごっつデカくしてみた
文字数 2,011文字
「なんだかんだ言って、古墳への熱き思いが伝わってくるな」
「ば、罰当たりなような……」
「とにかく、この足跡を追っていけばすぐ見つかるさ」
「は、はあ……」
「こっちだな……」
平成が足跡をたどっていくと、古墳が座り込んでいた。
「はあ……はあ……」
「わりと近くにいた⁉」
「もうへばっている⁉」
令和と平成が驚く。古墳が呼吸を整えながら呟く。
「ふ、普段は馬での移動が多いから……久々に走ったら、すぐ疲れてもうた……」
「馬ですか?」
「5世紀に入ったから『渡来人 』の方々が色々な文化や技術とともに、馬をこの日本にもたらしてくれたんや」
「そうなのですか……そう言われると、その衣服も乗馬に適したもののようですね」
令和が古墳の衣服を見て頷く。上着とズボン、靴も履いている。
「せやね、動きやすい服装や」
「絹で出来ているのですね?」
「ああ、ええ機織具で織ってもろうたんや」
「高い機織り技術ですね」
「『品部 』の確かな仕事やからな」
「品部?」
令和が首を傾げる。
「簡単に言えば専門職の集団や、機織部や陶作部などに分かれている」
「スペシャリストの集まりということですか……」
「俺も『軽音部』や『隣人部』、『勇者部』、『奉仕部』を歴任したものだよ……」
「そういう部とは意味合いが違いますし、軽音部以外は耳馴染みないのですが……」
平成の呟きに令和は冷ややかな視線を向ける。
「最終的には『帰宅部』を立ち上げたな」
「立ち上げるものじゃないでしょう」
「『帰宅部の秘密兵器』とまで称賛されたぞ」
「もはや陰口でしょう、それ……」
平成のよく分からない思い出話に令和は呆れる。
「あの~?」
古墳が令和たちを覗き込む。
「ああ、すみません、平成さんのことは基本無視して構いません」
「酷くない⁉」
「君が新しい時代か、令和ちゃんやったっけ?」
「はい。あらためてよろしくお願いします」
「せっかくやし、家に案内しようか?」
「お忙しいようでしたら、ここでご挨拶だけでも構いませんが」
「いやいや、別に忙しいことはなにもあらへんよ」
古墳が手を左右に振る。平成が尋ねる。
「なんだってあんなところで罠にかかったんだ?」
「そもそも、なんだってあんなところに罠を仕掛けたんや……ここに来たかったからや。この丘からの眺めが見事なんや……」
古墳が手で指し示す。令和たちが目をやる。
「わあ……」
「これは……」
「大小、形も様々やけど……ざっと百基の古墳が集まっているかな?」
「ええっ⁉」
「多いな⁉」
「大阪府の百舌鳥古墳群 の倍以上ですね……」
令和が顎に手をあてて呟く。
「そりゃあこっちは古墳の本場やからな」
「本場って……」
胸を張る古墳に平成が困惑する。令和が尋ねる。
「例えば、大きな前方後円墳はヤマト王権の盟主である『大王 』のお墓であるとされていますが……周囲に点在する比較的小さな古墳はどなたのお墓ですか?」
「有力な『豪族 』のお墓や」
「豪族……なるほど『氏姓制度 』による支配体制の確立ですね……」
「どういうことよ、令和ちゃん?」
「氏姓制度……氏姓 制度とも言います」
「『富士サファリパーク』?」
「じしか合ってないでしょう……」
「地域的には『ひらかたパーク』の方がしっくりくるんじゃねえか?」
「しっくりきませんよ……」
「ってことは……『ひらパー兄さんは彼なのか』?」
平成は古墳を指し示す。
「何かの曲名みたいに言わないで下さい……まずは豪族ですが、簡単に言えば、地域的支配権を持った一族のことです。この時期、有力な豪族は『氏 』と呼ばれるようになりました」
「ふむ……」
「王権はそういった有力豪族に対して、王権内の職務や地位を表す、『姓 』を与えました」
「ほう……」
「要は大王を頂点とするヤマト王権を統率するための身分秩序や」
令和の説明を古墳が補足する。平成が頷く。
「思い出したぜ、『臣 』や『連 』、『TAKURO』や『JIRO』のことだな」
「後半何故かGLAYが混ざっていますが、この際もうそれで良いです」
「いや、良くないやろ⁉」
説明を諦めた令和に古墳が驚く。令和が話題を変える。
「それにしてもなのですが……」
「うん?」
「あちらの前方後円墳もかなり大きいですが、先に申しあげた百舌鳥古墳群にある『大仙陵古墳 』は約486mと世界最大級のお墓です。古代エジプトの『クフ王のピラミッド』や古代中国の秦の『始皇帝陵』を体積では抑えてトップと言ってもいい……何故にこのような大きなお墓を築造したのですか?」
「……前後の問題や」
「前後?」
「せや、前の弥生ちゃんは邪馬台国やなんやで古代のヒロインポジションや、一方、後の『飛鳥』はなんやかんやで古代の切れ者ポジションを確立しておる! そんな個性的な二つの時代に挟まれたとき、わ、古墳が取るべき道はただ一つ!」
「!」
「『古墳、ごっつデカくしてみた』しかないやろ……」
「動画投稿者的発想⁉」
「いや、その発想はおかしい」
令和は驚き、平成も冷静に突っ込みを入れる。
「ば、罰当たりなような……」
「とにかく、この足跡を追っていけばすぐ見つかるさ」
「は、はあ……」
「こっちだな……」
平成が足跡をたどっていくと、古墳が座り込んでいた。
「はあ……はあ……」
「わりと近くにいた⁉」
「もうへばっている⁉」
令和と平成が驚く。古墳が呼吸を整えながら呟く。
「ふ、普段は馬での移動が多いから……久々に走ったら、すぐ疲れてもうた……」
「馬ですか?」
「5世紀に入ったから『
「そうなのですか……そう言われると、その衣服も乗馬に適したもののようですね」
令和が古墳の衣服を見て頷く。上着とズボン、靴も履いている。
「せやね、動きやすい服装や」
「絹で出来ているのですね?」
「ああ、ええ機織具で織ってもろうたんや」
「高い機織り技術ですね」
「『
「品部?」
令和が首を傾げる。
「簡単に言えば専門職の集団や、機織部や陶作部などに分かれている」
「スペシャリストの集まりということですか……」
「俺も『軽音部』や『隣人部』、『勇者部』、『奉仕部』を歴任したものだよ……」
「そういう部とは意味合いが違いますし、軽音部以外は耳馴染みないのですが……」
平成の呟きに令和は冷ややかな視線を向ける。
「最終的には『帰宅部』を立ち上げたな」
「立ち上げるものじゃないでしょう」
「『帰宅部の秘密兵器』とまで称賛されたぞ」
「もはや陰口でしょう、それ……」
平成のよく分からない思い出話に令和は呆れる。
「あの~?」
古墳が令和たちを覗き込む。
「ああ、すみません、平成さんのことは基本無視して構いません」
「酷くない⁉」
「君が新しい時代か、令和ちゃんやったっけ?」
「はい。あらためてよろしくお願いします」
「せっかくやし、家に案内しようか?」
「お忙しいようでしたら、ここでご挨拶だけでも構いませんが」
「いやいや、別に忙しいことはなにもあらへんよ」
古墳が手を左右に振る。平成が尋ねる。
「なんだってあんなところで罠にかかったんだ?」
「そもそも、なんだってあんなところに罠を仕掛けたんや……ここに来たかったからや。この丘からの眺めが見事なんや……」
古墳が手で指し示す。令和たちが目をやる。
「わあ……」
「これは……」
「大小、形も様々やけど……ざっと百基の古墳が集まっているかな?」
「ええっ⁉」
「多いな⁉」
「大阪府の
令和が顎に手をあてて呟く。
「そりゃあこっちは古墳の本場やからな」
「本場って……」
胸を張る古墳に平成が困惑する。令和が尋ねる。
「例えば、大きな前方後円墳はヤマト王権の盟主である『
「有力な『
「豪族……なるほど『
「どういうことよ、令和ちゃん?」
「氏姓制度……
「『富士サファリパーク』?」
「じしか合ってないでしょう……」
「地域的には『ひらかたパーク』の方がしっくりくるんじゃねえか?」
「しっくりきませんよ……」
「ってことは……『ひらパー兄さんは彼なのか』?」
平成は古墳を指し示す。
「何かの曲名みたいに言わないで下さい……まずは豪族ですが、簡単に言えば、地域的支配権を持った一族のことです。この時期、有力な豪族は『
「ふむ……」
「王権はそういった有力豪族に対して、王権内の職務や地位を表す、『
「ほう……」
「要は大王を頂点とするヤマト王権を統率するための身分秩序や」
令和の説明を古墳が補足する。平成が頷く。
「思い出したぜ、『
「後半何故かGLAYが混ざっていますが、この際もうそれで良いです」
「いや、良くないやろ⁉」
説明を諦めた令和に古墳が驚く。令和が話題を変える。
「それにしてもなのですが……」
「うん?」
「あちらの前方後円墳もかなり大きいですが、先に申しあげた百舌鳥古墳群にある『
「……前後の問題や」
「前後?」
「せや、前の弥生ちゃんは邪馬台国やなんやで古代のヒロインポジションや、一方、後の『飛鳥』はなんやかんやで古代の切れ者ポジションを確立しておる! そんな個性的な二つの時代に挟まれたとき、わ、古墳が取るべき道はただ一つ!」
「!」
「『古墳、ごっつデカくしてみた』しかないやろ……」
「動画投稿者的発想⁉」
「いや、その発想はおかしい」
令和は驚き、平成も冷静に突っ込みを入れる。