第1話

文字数 1,235文字

 見敵必戦(けんてきひっせん)、敵を見たら必ず戦う。
 これは第一次世界大戦で、数も装備もはるかに(まさ)るドイツのシュペー艦隊に遭遇したイギリス海軍のクラドック提督が貫き通した作戦の方針でした。コロネル沖海戦です。
 自分は戦争は美化しませんが、戦って勝つことを求められた当時の職業軍人としての、プロとしての生き方には共感を覚えます。
 さて、医療の世界はどうでしょうか? 1948年のジュネーブ宣言、翌1949年の国際医療倫理綱領で、医の倫理に関する規定が定められました。そこでは、医師はヒトの生命を自分が有する医学的な知識や技術のすべてをもって維持することが義務付けられました。病気を診たら必ず治療する、「診病必治(しんびょうひっち)」(←私の造語です)なのです。自分はこれが医療関係者のプロとしての生き方だと思います。
 これとは別に1981年にリスボン宣言で医療における患者の権利が宣言されました。その中で、患者は自分の意思で自由に医療を選択でき、また尊厳を守るために医療を受けない選択も可能になりました。
 この頃、自分は医療現場でやるせない気持ちにさせられることが多々あります。「患者さんの病気を治そう」と検査や治療を勧めても、患者さんの同意が得られず治療ができない時です。「もう歳だから」「今は痛い所はないから」などの理由でも検査や治療はできません。最近は、医療側は患者さんにインフォームド・コンセント(informed consent)「十分な説明を受け納得したうえでの同意」を得て診療に当たるようにしていますが、特に高齢者などはその説明すらも聞いてくれないことがあるのです。後日、重症になってから、言い換えれば手遅れになってから突然現れてもいい結果はなかなか出ません。
 病気に立ち向かう患者さんの姿を「闘病」と呼びます。「病気を診たら必ず治療する(診病必治)」の医療側のプロ意識と、「病気と闘う(闘病)」という患者さんの強い意志が噛み合って理想の医療が成立するのではないでしょうか。(少し時代遅れの古い考え方かも知れませんが…。)
 よく外来で「検査は受けない。自分はいつ、ぽっくり死んでもいい。」と威勢よく豪語する患者さんがいます。私は答えて(いわ)く、
 「そうですか…。医療は進歩しています。昔みたいにぽっくり死ねないで、言い方は悪いですが、中途半端に助かると苦しいですよ…。」
と。その時私の脳裏には、若くして寝た切りになって療養病棟に入院している患者さん、右半身麻痺、失語になってリハビリをしている患者さんなどの姿が浮かんでいます。
 「…。」
 患者さんは無言になることが多いです。ふ~。

 さて写真は庄内町のとある店で撮影した何種類ものタバスコです。それぞれの辛さの中にも風味が異なり美味しいです。

 自分は香辛料が大好きで、仕事でもやもやとした時にピリッとした辛口に頭が冴えわたる感じがいいです。
 タバスコのようにピリッ!と行きましょう!!
 んだんだ!!
(2016年3月)*(2021年10月 一部筆を加えた)
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