童話をイジるな!

文字数 1,744文字

1.
「いけない! 12時の鐘だわ! 王子様、私、行かなくては!」
「あ、待って、君は誰なの? せめて名前だけでも!」
「ごめんなさい! 時間がないの!」

 振り返りもせずに走り去る美しい娘、残されたのはガラスの靴だけ……。

「この靴の持ち主が……」

 王子がガラスの靴を拾い上げた時、12時の鐘は鳴り終り、ガラスの靴は魔法のように消えてしまいました。


2.
「お前が落としたのはこの金の斧? 銀の斧? それとも鉄の斧?」
「鉄の斧です」
「正直者のお前には、この金の斧を授けましょう」
 湖の精はきこりに金の斧を手渡すと水の中へ消えて行ってしまいました。

 きこりが金の斧で木を切り倒そうとすると、柔らかい金で出来た斧はすぐに曲がって使えなくなってしまい、きこりはたいそう困りました。
「困ったなぁ、ワシ、化学物質アレルギーだから町には住めないのじゃが……」


3.
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」
「そんなこと訊かれましてもねぇ……美しさなんて主観の問題ですし、文化の違いによる美人の基準もそれぞれで……」

「鏡よ鏡、質問を変えよう、この国で一番美しいのは誰?」
「そんなこと訊かれましてもねぇ……妖しい魅力なら王妃様ですが、健康的な美しさとか、理知的な美しさとかいろいろでして……」

「鏡よ鏡、これならどうじゃ? この城で一番美しいのは誰?」
「いっそのこと総選挙でもおやりになったらいかがでしょう? 一番多く投票券を買う財力があるのは言うまでもなく……」


4.
「あの城には誰が住んでいるのか?」
「王子様、世にも美しい姫が悪い魔法使いの呪いにかけられて10年もの間眠り続けております」
「ならば私が行ってその美しい姫に逢って来よう」

「私は来るのが遅すぎたようだ……」
「どういうことでございますか?」
「美しい姫などいなかった、ミイラが一体横たわっていただけだったよ」


5.
「おばあさん、おばあさん、おばあさんの耳はどうしてこんなに大きいの?」
「お前の声が良く聞こえるようにだよ」
「おばあさん、おばあさん、おばあさんの目はどうしてこんなに大きいの?」
「お前の顔が良く見えるようにだよ」
「おばあさん、おばあさん、おばあさんの口はどうしてこんなに大きいの?」
「お前を食べるためにだよ! あがっ」
 狼は口の中に棒を突っ込まれてしまい、口を閉じることが出来ません。
「……誤魔化し方に無理があると思わない?……」


6.
「わー、おかしいや、どうして王様は裸なの?」
「う~む、子供たちにはこの服が見えんのか……やっぱり騙されたのだな……ボディビルに励んでおいて正解だったワイ……」


7.
「ヒヒーン、ワンワン、ニャーニャー、コケコッコー」
「ぎゃーっ。お化けが、出たあー」
泥棒たちは、鳴き声と動物たちの影に驚いて、森の奥に逃げていき、四匹は、ごちそうをお腹いっぱい食べることができました。
真夜中……泥棒の一人がこっそりと戻ってきました。
すると、その泥棒は、猫にひっかかれ、犬に噛み付かれました。
さらにオンドリにつっつかれ、終いにはロバに蹴っ飛ばされてしまいました。
「助けてくれ~!」
泥棒は、大慌てで逃げ出していき、親分に報告しました。
「ものすごい魔女があの家に住み着きました。引っ掻かれるは、噛み付かれるは、つっつかれるは、蹴飛ばされるはで、とても歯が立ちません」
それを聞いた泥棒たちは二度と家に近寄ることはなく、四匹は、この家で、いつまでも仲良く暮らしたということです。

「ところで、僕たち、どこかへ行く途中だったんじゃなかったっけ?」
「そうだね、どこかの音楽隊に入るとか入らないとか……」


8.
「可哀想に、キリギリスさん、亡くなってるよ……」
「仕方ないよ、越冬する種じゃないからね……」
「でもさ、ああ言う生き方も有りだよな……」
「ああ、羨ましい気がするよ」


9.
「今日は狼が来ないぞ! 今日は狼が来ないぞ!」
「そりゃ大変だ!」


10.
「太陽君、もう一度勝負をしよう」
「いいとも、北風君、今度は誰の上着を脱がせるんだ?」
「あのベンチで寝ている男に上着を着させた方が勝ちだ」
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