第9話

文字数 1,767文字

をおこい起こしジウを憐れむ。
ミュータントウォーズ・新人類戦記第一章(1980年作品)第9回米国残留兵器・超能力戦士である少女ジウを前に殺すのをためらう東郷竜。竜は自分の過去をおこい起こしジウを憐れむ。

ミュータントウォーズ・新人類戦記第一章(1980年作品)第9回
新人類戦記第一章(1980年作品)第9回
竜は、先刻、ジウを殺しておけばよかったと後悔していた。彼の使命は秘密兵器の破壊
であっ、た。秘密兵器はジウであった。
彼女は
アメリカ。軍の心理戦研究所が開発した
パラサイコ・コマンド(超能力戦士)の一員だったのだ。
 彼女の精神エネルギーは強烈であった。彼女の近くにいる人の心の中の殺意を増幅させ
狂気と超暴力の世界へと彼らを引きずりこむのだ。あとには静寂と死体しか残らないのだ
彼はハイ・ニンの死休から銃をとりあげたそれから、ジウの側へたちもどり、銃口をジ
ウの体へ向けた。
普段の彼なら。ためらうことなく冷徹に引金をひきしぼったはずだった。
 彼は彼女の幼々さの残る寝顔をながめるとはなしにながめてしまった。そんな恐ろしい
ラサイコ・コマンド(超能力戦士)とはまるで見えない。
 彼の手がふるえ、肩をかとし、銃をほおり投げてしまった。
竜はこのジウと少ながらぬ縁で結ばれていのだ。
 七年前、幼児のジウをクチニん村から誘拐し、超心理研究所へ連
れて行くためにアメリカ空軍基地へ彼女を運んだのは他ならぬ竜だった。
ジウはその当時の事を覚えていないようだった。
 竜の心の中に今までになかった感情がかこつ。てきた。不思議な感情であった。
「彼女ジウを助けなければならない」
「彼女は自分の同類なのだ」
 竜に強い使命感がかこった。
彼女をここから助けなければならぬ」
 竜にはもう日本政府のエージェント
サムライノクニの人間である
という意識はなぐなっている。
なぜどうして
こんな急激な心境の変化が軸こったのか理解
できなかった。
 彼女の寝姿を見ているうちにそう感じてし
まったのだ。
 急に竜は自分の半生をかもいかこしていた。
彼女の顔にウッブラックウッド博士の顔がだヰつ
てきた。 
 「殺せ。竜、殺すのだ」
 ブラックウッド博士の声が聞こえてくるよ
うだ。竜もブラックウッド博士のパラサイコ・コマンド(超能力戦士)
研究所の初期の研究材料の一人だ
 太平洋戦争後、日本には戦争孤児があふれていた。竜もその中の一人だった。
龍は浮浪児を組織してギャング団を、焼け跡の東京で組織し、勢力をもっていた。
ブラックウッド博士は戦後すぐ日本にやって来て、自らの。でパラサイコ・コマンド(超心理戦士フサイコHコマン研究のために数十
名@孤児を連れてアメリカへ帰った。
 訓練は過酷だった。逃げだそうとする者も
続出した。しかし研究所から脱出してもあと
がいけなかった。
砂漠のど真中に養成所はあ
ったのだ。また能力の乏しい者は続々と処分
されていった。
でパラサイコ・コマンド(超心理戦士の第一期生と誕生し
た竜は自らの感情をおさえることが可能となる。冷徹な殺人機械と化した。人間の姿をし
た狼と化していた。
パラサイコ・コマンド(超心理戦士)の研究所からグリーン日ベレーの訓練所へ送り
こまれた竜は一層自分の持てる能力をのばし一時はCIAに属し活躍していたのだが、閣
の落とし穴がまっていた。
非人間的に鍛練されていた竜には神経の異常が生じてぃた。 
 埋由のない殺人衝動がそれであ奇。ベトナム戦争当時、CIAのエージェントとしてトベトナム
で活躍していた彼は、有名な「ソンミの虐殺」以上の虐殺事件をひきかこして。しまったのだ。
この事件は表沙汰にはされなかった。
 ベトナムの監獄島コンソン島の虎の檻に幽閉されていた間に、竜は考えるに充分な時間
を持った。太陽の光とのどの渇きが彼の敵であった。
自らをこんな人間とし、唾だこんな境遇にかいやったウッブラックウッド博士を憎しみ始め
ることとなった。
 特別に訓練を受けた能力により、彼はコンソン島から脱出することができた。一緒に脱
獄したのが帛ベト十ム解放戦線の勇士ハイ・ニンであった。
 彼らは何度もおぼれそうになりながら、助け合い、南シナ海を泳ぎ渡り中国に逃げた。
再び、竜はベトナのジャンダルに秘み、ブラックウッド博士への憎しみを深めていった。

2024/06/07(改稿)/01/22 13:49(改)
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