第34話 「プペ人形」

文字数 344文字

 それにしても、ゲンスブールの曲には、よく涙ぐまされた。
 とりわけ、「プペ人形」。

『この人形は おしっこもするし うんちもする
そして 俺のことを「PaPa」と呼ぶ…』

 という詞であったことは覚えている。
 れいによって同じメロディの繰り返しで、ボショボショと歌っているけれど、この「PaPa」のところで、涙が込み上げてきて仕方がない。

 ゲンスブールの、これは、何なのか?

 ピアノとギターと、たまに鳴るチン、チン、というトライアングルの音。

 ゲンスブールが、片肘たてて頭をのせ、居間に寝っ転がりながら、その傍でハイハイしてたまに「PaPa」と呼ぶ人形を、じっと見つめてる…
 こんなイメージを抱かせてくれた曲は、ほかになかった。

 やさしさ、包み込み、… 愛情、か。
 でもそこには刹那があって…。
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