第1話 

文字数 442文字

 
 到着した。
 いろいろ、ありがとう。


 東北にいる。
 雪は、何の音もなく降ってくる。降り積もる間はとても静かだ。
 雪おろしは、重労働で、ばてる。


 北海道にいる。
 北海道には梅雨がないと聞いてたけど、本州ほどじゃないだけで、この時期はやっぱり雨が降る。


 広島にいる。
 海辺にいると、海が青いのは空の色を映しているからだと実感する。曇りの日は海面も暗い。
 安住は、無事高卒資格取って、進学したのか?
 家も手に職も学歴もない人生は、時々きつい。


 シキからの葉書は二年で四通。いつも地域を大雑把に書くだけで、住所はない。
 丈郎の家にいる間に決めた、寮つきの職場を数ヶ月で辞めて東北へ。初夏には北海道へ渡っていたらしい。広島からの便りは今年の春。シキが転々とする暮らしを選んでしまった理由はわからない。
 つながりを保ってくれていることに感謝している。でもいつ途切れてしまうかわからない細く頼りない糸のようだと不安がつきまとう。
 その細い糸の結び目のような存在だった、シキの叔母篠塚理香が死んだ。
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