【11】二人の絆

文字数 1,752文字

『…翼?つ・ば・さ~!!?ねぇ!!』

彼の呼ぶ声が聞こえるが
まだ眠っていたい…

「…匠君?ごめん、まだ少し頭が痛くて…
もう少しだけ寝ててもいいかな?」

『…えっ、まだ痛いの?昨日は翼あまり飲んでなかったし、それ体の不調じゃないの!とりあえず少しだけ寝て起きたら呼んで?病院連れて行くからさ!俺、今から出勤して幸栄さんたちには言っておくから!』

「うん、ありがとう。少し熱あるみたいだし、風邪ひいちゃったかも。一時間したら起きるから会社お願いします。」

『俺に任せて、ちゃんと寝ててよね?
電話くれたら迎えにくるからさ!』

…………。

※※※※※※※※

『おはよー♪昨日はごちそうさま♪
あれ?匠君1人?翼は?』

『二人ともおはよー。何か翼、風邪ひいたみたいでさ、まだ寝てるんだよね。もう少ししたら、車で病院連れていきたいんだけどいいかな?』

『当たり前じゃない!昨日翼、ビールもあまり飲んでなかったもんねー。体調悪かったのかな…。とにかく、私達に任せて翼のところに行ってあげてよね!二週間も二人でやってきたんだから、一日くらいなんてことないんだから!ね、寿郎?』

『おう、任せろ。』

『二人ともありがとう!このお礼はまた必ずするからね?依頼の電話とか来たら受けていいから、連絡してね!ではお願いします!』

『次は何にするか寿郎と相談しとくから♪翼、お大事にね!行ってらっしゃい!』

急いで家へと戻る匠君を見送り、寿郎と一緒に事務雑用をこなすことにした私達。

『翼、大丈夫かな~?何気にあの子
体弱いから少し心配だよね~。』

『まぁ、匠ついてるし大丈夫でしょ?それにさ、幽霊に会ったりして精神的にも疲れてたんじゃないの?』

『……あぁ!寿郎…思い出した。昨日秘密って言ったこと覚えているんだからね~?寿郎が私より先に死ぬことは許さないから。』

『俺はお前を置いて死んだりしないよ。』

ヤバい…その言葉、嬉しすぎる…!匠君とは違い、普段愛を現す言葉を絶対に口にしてくれない彼の何気ない一言に私はこの場で踊り出したい気分だが、そこは我慢。

寿郎とは友達の紹介で知り合ったのだが、付き合い始めたのも私が一方的に押しきった形だったし、なんなら結婚する時だってそうだった。

"そろそろ結婚してもいいんじゃない?"
という私の言葉に

"あー、そうだね結婚しようか"

とムードも何にもない日常会話のようなやり取りで決まってしまった。付き合っている頃から、本当に私と一緒に居て幸せなのかと常々思っているが、たまに言ってくれる、その一言を聞けるだけで、私は間違っていないんだなと思わせてくれているのだ。

子どもでもいたら、また変わるのかな?と思ったりもするが、私は寿郎のことが好きすぎるので産まれてきた子どもに嫉妬してしまいそうな自分を想像し、二人での生活を選ばせてもらっている。とにかく、寿郎や翼達といる今の生活が幸せなのだ。

片付けや残っていた事務作業を終わらせ二人で昼食を取っていると、寿郎の電話がなった。

『あ、匠?うん、お疲れ。翼ちゃんは?
……、うん、わかった。お大事に。』

『匠君、なんだって?』

『翼ちゃん、ただの風邪だってさ。まだ熱もあるみたいだから、とりあえず今日は家で寝かせておいて、匠だけ後でくるって。』

『そっか、風邪かー。本当変な病気とか
じゃなくてよかったよー。』

『久しぶりに働いたし、過労もあったんだろうね。匠も注意させとかないとな。』

翼の様子がわかり、安心して残りのサンドイッチを食べようと手を伸ばした瞬間、私の卓上電話がなった。本当、何かしようとしたら鳴る電話…。

"サンドイッチさん待っててね!"

『お待たせしました、輪廻會舘でございます。はい、家族葬のご予約ですね……。
かしこまりました…おまちしております。』

『予約の電話?』

『うん、匠君に連絡してくれる?
私、先に受け入れの準備始めるわ。』

『了解ー。』

すぐに匠君が戻ってきて、二人に
故人の説明をする。

『まじかー。またまた深刻な感じの依頼だね…。気を引き締めていきましょう。』

匠君の一言に、黙って二人で頷いた。
あ、サンドイッチ…。
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