(四)-6

文字数 257文字

 俺は何とか「いや、そんなことは」とだけしか発語できなかった。
「でも最後に、もう一つだけウソを言わせて……」
 彼女は力なく俺の手を握ってきた。
「ああ、もちろん」
 俺はそうとだけ答えた。
 すると彼女は両の目から涙を何粒もこぼしながら言った。
「私……、絶対元気になって、カズナガ君と一緒になるから」
 俺はその言葉の本当の意味をすぐに理解できなかった。もちろん結婚したいっていう意味だというのはわかった。
 ともかくも、俺は「ああ、もちろん! もちろんだ。絶対、絶対だぞ!」と言って、彼女の手をぎゅっと握り返した。

(続く)
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