戦いの宣誓
文字数 2,139文字
時は2043年、場所は私立君ノ君中学高等学校。ちなみに、君ノ君の読み方は君ノ君である。『きみのくん』なり『くんのくん』なり、好きな名前で呼べばいい。この中学校ではとあるシステムが用いられている。
その名も、文房具戦争。
このシステムはクラスや学年での団結力を高めたり、祭りのような要素を含む。学校側の意見としては生徒のストレスも発散されるだろうというものだが、ストレス発散できる生徒たちは限られている。
この学校は学年ごとに5組のクラスが存在していて、成績順上から特別選抜クラス、選抜クラス、優良クラス、一般クラス、成績支援クラスと名前が付けられている。文房具戦争で基本的にいい思いができるのは特別選抜クラスである。
文房具戦争は、ある指定日にクラス間、または学年間で文房具を武器に見立てた戦争が行われる。特別選抜クラスがいい思いができるのは学校から支給される特殊文房具が上物であるためだ。
特殊文房具。学校から支給されるそれは鉛筆や定規などのみんなもよく知る文房具を、武器にしたものである。鉛筆が槍、定規が剣のようになる。特殊文房具についているボタンを押せば武器として使える大きさになる。
戦争とは言っても実際に殺し合いはしない。特殊文房具は目に見えるが実体はない(持ち手は掴むことはできる)ため、武器で攻撃してもダメージは数値として表されるだけで痛みは受けない。なので保護者からのクレームも少ない。むしろ肯定的な意見の方が多い。
今回は特別選抜(通称SS)を倒すために立ち上がった底辺クラスの逆襲の物語
「かと思ったら違うんだけどねー」
「俺たち成績支援じゃなくて一般クラスだしな。ていうか今お前誰と喋ってた?」
休み時間にそんな会話をしていたのは鵜鷺跳(うさぎちょう)と多多方鷹(たたかたたか)である。 2人は5クラスある中で平均成績が4番目である一般クラスに属している。
「文房具戦争なんて上のヤツらに挑んでも負けるだけだっての」
多々方の言う通り、文房具戦争では支給される特殊文房具はSSが1番豪華なため普通は勝てない。
「でもそんなこと言ってたら俺たち一生一般クラスじゃないか」
「あと2年半もすれば俺たちは一般クラスから卒業してこの学校ともおさらばだ」
「ここが中高一貫校だって知ってる?」
「知らなかった」
多々方がなぜこの学校に入学したのか(出来たのか)わからない。しかも一応は一般クラスだ。ただ鵜鷺は前に聞いたことがある、試験は鉛筆コロコロで受かったのだと。
今は中学一年の二学期、学校生活にも慣れ文房具戦争ができる時期になった。
「でも確かに、俺達がSSに勝つのなんて無理な話だよね」
二学期に入ってすぐ、底辺(成績支援クラス)がSS(特別選抜クラス)に挑んでボロボロに負かされていた。逆襲劇を夢見たのか知らないが、二度と立ち直れない程の傷を底辺は負わされていた。
「あの時の底辺は地獄絵図だったなぁ。SSは全員定規が支給されてたのに底辺は3センチの鉛筆だぜ」
定規は長さによるが強固な剣となる。それに比べ底辺は3センチの鉛筆。騎士VS足軽のようなものだ。
「3センチ鉛筆でも特殊文房具にすりゃそれなりの武器だけど、定規には負けるな」
「アホの多々方でもそれくらいの戦況はわかるんだ?」
「お前な、俺は勉強はからっきしだがゲームで戦略については鍛えてあるんだ。いざと言う時に頼りにしろ」
「武器が弱いんじゃ戦略もクソもないよ......」
ここで休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。それとほぼ同時に次の教科の担当教員が教室に入ってくる。
一般クラスとはいえ下から2番目のクラス。チャイムが鳴っても教室はガヤガヤと騒がしい。
「はーい。ちょっと重要なお知らせがあるから静かにしろー」
担当教員は気だるそうに注意を促す。そして重要なお知らせ、小テストでもするつもりだろうか。
「静かになったな。じゃあ連絡する。選抜クラスがお前らに宣戦布告した。勝負は三日後だ、ちゃんと準備しておけよー」
「は?」
「え、何?宣戦布告?」
「選抜クラスがなんで俺たちに」
「負け確定じゃんかよ。ありえねー」
クラス内にどよめきが走る。ただ、担当教員はそれを一喝する。
「ガヤガヤ喚くな!この学校において文房具戦争は絶対だ!負けたらお前らの持ち点は少なくなるから気をつけておけよ」
持ち点、各クラスに配布されるクラスごとの点数だ。文房具戦争に負けると点数は減り、勝つと増える。だが、成績を考慮して選抜が一般を攻撃して勝っても選抜に入る点数は通常より少ない。逆に選抜が一般に負ければ選抜の持ち点は一気に下がる。
クラスの持ち点が低くなると長期休みは補修が入り、日頃の課題量も増やされる。合理的に成績とモチベーションを上げるシステムだ。
上にいる者はさらに上へ。下にいる者はさらに下へ。それがこの学校の仕組みだ。
「この勝負で負けたら俺の課題量は2倍にする。覚悟しておけよ」
担当教員の一言が一般のなけなしのモチベーションを叩き割った。
その名も、文房具戦争。
このシステムはクラスや学年での団結力を高めたり、祭りのような要素を含む。学校側の意見としては生徒のストレスも発散されるだろうというものだが、ストレス発散できる生徒たちは限られている。
この学校は学年ごとに5組のクラスが存在していて、成績順上から特別選抜クラス、選抜クラス、優良クラス、一般クラス、成績支援クラスと名前が付けられている。文房具戦争で基本的にいい思いができるのは特別選抜クラスである。
文房具戦争は、ある指定日にクラス間、または学年間で文房具を武器に見立てた戦争が行われる。特別選抜クラスがいい思いができるのは学校から支給される特殊文房具が上物であるためだ。
特殊文房具。学校から支給されるそれは鉛筆や定規などのみんなもよく知る文房具を、武器にしたものである。鉛筆が槍、定規が剣のようになる。特殊文房具についているボタンを押せば武器として使える大きさになる。
戦争とは言っても実際に殺し合いはしない。特殊文房具は目に見えるが実体はない(持ち手は掴むことはできる)ため、武器で攻撃してもダメージは数値として表されるだけで痛みは受けない。なので保護者からのクレームも少ない。むしろ肯定的な意見の方が多い。
今回は特別選抜(通称SS)を倒すために立ち上がった底辺クラスの逆襲の物語
「かと思ったら違うんだけどねー」
「俺たち成績支援じゃなくて一般クラスだしな。ていうか今お前誰と喋ってた?」
休み時間にそんな会話をしていたのは鵜鷺跳(うさぎちょう)と多多方鷹(たたかたたか)である。 2人は5クラスある中で平均成績が4番目である一般クラスに属している。
「文房具戦争なんて上のヤツらに挑んでも負けるだけだっての」
多々方の言う通り、文房具戦争では支給される特殊文房具はSSが1番豪華なため普通は勝てない。
「でもそんなこと言ってたら俺たち一生一般クラスじゃないか」
「あと2年半もすれば俺たちは一般クラスから卒業してこの学校ともおさらばだ」
「ここが中高一貫校だって知ってる?」
「知らなかった」
多々方がなぜこの学校に入学したのか(出来たのか)わからない。しかも一応は一般クラスだ。ただ鵜鷺は前に聞いたことがある、試験は鉛筆コロコロで受かったのだと。
今は中学一年の二学期、学校生活にも慣れ文房具戦争ができる時期になった。
「でも確かに、俺達がSSに勝つのなんて無理な話だよね」
二学期に入ってすぐ、底辺(成績支援クラス)がSS(特別選抜クラス)に挑んでボロボロに負かされていた。逆襲劇を夢見たのか知らないが、二度と立ち直れない程の傷を底辺は負わされていた。
「あの時の底辺は地獄絵図だったなぁ。SSは全員定規が支給されてたのに底辺は3センチの鉛筆だぜ」
定規は長さによるが強固な剣となる。それに比べ底辺は3センチの鉛筆。騎士VS足軽のようなものだ。
「3センチ鉛筆でも特殊文房具にすりゃそれなりの武器だけど、定規には負けるな」
「アホの多々方でもそれくらいの戦況はわかるんだ?」
「お前な、俺は勉強はからっきしだがゲームで戦略については鍛えてあるんだ。いざと言う時に頼りにしろ」
「武器が弱いんじゃ戦略もクソもないよ......」
ここで休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。それとほぼ同時に次の教科の担当教員が教室に入ってくる。
一般クラスとはいえ下から2番目のクラス。チャイムが鳴っても教室はガヤガヤと騒がしい。
「はーい。ちょっと重要なお知らせがあるから静かにしろー」
担当教員は気だるそうに注意を促す。そして重要なお知らせ、小テストでもするつもりだろうか。
「静かになったな。じゃあ連絡する。選抜クラスがお前らに宣戦布告した。勝負は三日後だ、ちゃんと準備しておけよー」
「は?」
「え、何?宣戦布告?」
「選抜クラスがなんで俺たちに」
「負け確定じゃんかよ。ありえねー」
クラス内にどよめきが走る。ただ、担当教員はそれを一喝する。
「ガヤガヤ喚くな!この学校において文房具戦争は絶対だ!負けたらお前らの持ち点は少なくなるから気をつけておけよ」
持ち点、各クラスに配布されるクラスごとの点数だ。文房具戦争に負けると点数は減り、勝つと増える。だが、成績を考慮して選抜が一般を攻撃して勝っても選抜に入る点数は通常より少ない。逆に選抜が一般に負ければ選抜の持ち点は一気に下がる。
クラスの持ち点が低くなると長期休みは補修が入り、日頃の課題量も増やされる。合理的に成績とモチベーションを上げるシステムだ。
上にいる者はさらに上へ。下にいる者はさらに下へ。それがこの学校の仕組みだ。
「この勝負で負けたら俺の課題量は2倍にする。覚悟しておけよ」
担当教員の一言が一般のなけなしのモチベーションを叩き割った。