3話 ✿ チョコが消えた!?

エピソード文字数 1,271文字




 始業ベルが鳴り、天井と蘭々は気まずい空気のまま、それぞれの教室に行った。



 昼休み、天井が一人で廊下を歩いていると。



朝はその……すまなかったな。今からちょっと…時間をもらえるか?

そして、二人は、図書室のすみでこそこそ…と密談をする羽目になった。

天井は、蘭々が怖くて、カタカタふるえている。



俺への誤解が解けて良かったけど……なにか、その…御用でしょうか…?

聞きたいことがあって呼んだんだ。


…謎だ。これはひょっとすると、事件だぞ。

そんな大げさなこと…?

大げさなことだ。

あの件で、私がどれほど……心的ダメージを食らったと思っている?

どこからか私がチョコを渡した情報が漏れて、2月15日には、クラス全員に知れ渡っていた

夢も希望もへったくれもない。

バレンタインは、悪魔デーだ。製菓会社の思惑に、まんまとはめられた。

まったく、その通り…。玩具屋が、クリスマスは稼ぎ時のようなものだよね

私は、こういう性格だからな。

チョコを渡すようには見えなくて、そのギャップでネタにあげられてしまったんだ。

(蘭々さんは口調に個性があるし、頭脳明晰で、スポーツも得意と聞いた。すきのなさそうなこの美少女がチョコを渡したとあれば、ちょっとしたスキャンダルだ…)

それから私は、ほとぼりが冷めるまで、学校を休んだ…。

二週間、引きこもった。


家で勉学に励めたのと、冬のオリンピック中継を見られたのは幸いだったがな。

金メダルをとる瞬間を、この目に焼き付けたんだ…。はぁ…。

よ…良かったね…

良くない。失ったものが多すぎる…。


チョコの件は、オリンピックの金メダル中継とともに、黒歴史に刻まれたぞ

実際、どんな風に……その、赤っ恥をかいたの?

そう、それだ。


チョコを渡した天井(あまい)に、私がからかわれたことを含め、一つも情報が届いていないのがおかしい!


そしてあの日、同級生にかけられた言葉の数々を思い返してみて、奇妙なことに気付いた。

奇妙なことって?

すると、蘭々は、「こほんっ」と咳払い一つ。



「蘭々さん、チョコを渡したって~?」


「え~、うそ、誰~?」


引き出しに入っていたんだって」


「誰に渡したか、教えてよ~」


1組の男子らしいよ~」

1人で五役とは…。しかし、全部棒読みだ。目が死んでる…
1組の男子…。1年生の時は、俺は確かに…1組だったね。

そうだ。私はチョコを天井の机の引き出しに入れた。これも事実だ。


1組の男子の引き出しにチョコを入れたことは広まった。


けれど天井(あまい) (しゅう)の名前は一度も、出てこなかったんだ。

な、なるほど! 確かに、変だね…。

だが、本当なら…チョコをもらった天井本人しか知り得ない情報が、広められている。


引き出しに入れたことを含めて。


私は、チョコの箱に入れたカードだけに名前を書いた。


だから、天井がチョコをもらったことを自慢したのだと思い込んでいたんだ。

君が俺の引き出しにチョコを入れるところを……誰かに見られていたんじゃないかな?
いや、それはありえない。
断言できる理由は・・・。 次回につづく!
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登場人物紹介

天井 集 (あまい・しゅう)


人生初チョコをもらったのに、幸せでない少年。

花房 蘭々(はなぶさ・らら)


文武両道の優等生。天井にチョコを贈ったが…。

煮貝 杯(にがい・はい)


天井の友人。

バレンタインに、とんでもないチョコをもらう

近松 摩耶(ちかまつ・まや)


野球部のマネージャー。

天井くんたちの同級生

多々良 哲也(たたら・てつや)


煮貝の友人。野球部員。

天井くんたちの同級生

松茸 鶴弥(まつたけ・つるや)


天井くんの同級生。

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