第54話 星盃計画()
文字数 2,223文字
「マコト、マコト、マコト!!!」
この声、何度聞いたのだろう。
目を開けるとその声の人は安心したように一息ついた。
「アスラさん、よかった生きていたんだ」
「この程度では死なないから」
空は先ほどまでの混沌とした色彩の面影もなく、雲一つもない蒼穹だった。
樹海も燃え尽きた場所もあったが、一部はあの戦火に耐えたものもいくつかあった。
「それで嫉妬のリンネはどうなったんですか?」
ギュッ
すると彼は倒れている俺に抱きついてきた。
今ではその意味も分かる。
「マコトが勝ったんだよ。
これでもう」
「そうか勝ったんだ。
……アスラさん、俺をこの槍で思いっきり胸を突き刺してください」
「なぜですか、あぁ傷が痛いから耐えられなくて諦めているんだね。
これぐらいの傷なら僕が治すから」
そう言い、彼は回復の魔法を唱えようとしていた。
もう魔力も限界の彼に無理はさせたくはないと思い、俺は彼の杖を握って、首を横に振った。
「いいや違うんだ。
今は何とか人の姿だけど、時間が経てば次こそはもう人には戻れなくなって完全にリンネになると思うから、その前に」
「アナタはリンネにはならない、僕が治すから」
彼は杖に魔力を込めた。
その時、俺とアスラさんの間にどこからか現れたラプマルが俺がソドムの林檎に投げつけた槍を持ってきて話しかけてきた。
「マコトの言っていることは間違いでは無いよアスラ。
彼をリンネから人に押さえ込んでいるのは強者のマギアなんだが。
それ自体を超えるほどにリンネの源である聖域も強くなっている、確実に時間さえ経てばリンネへと進化するだろう」
「いいや、それでももう一つ方法がある」
すると彼に絶望の文字は無かった。
その意味を知っている俺は話した。
「それって、アスラさん自身がリンネへと進化して俺のマギアと聖域を奪ってリンネにさせないようにすることですよね」
彼はそれを聞くと、驚きで口元が震えていた。
「なんで、そのことを知っているの」
「あなたを救いたい人に教えられてね、でもその方法でも俺の強者のマギアによって阻まれるからやらなくていいよ」
「嘘を言っているんだよねマコトは……」
「お願いアスラさん、もうその願いは諦めて」
「でも、僕はマコトさんに何もしていないんですよ」
「フフッ、アスラさんこそ嘘ついちゃだめですよ。
ずっと、俺やマーニさん、世界を救うために頑張ってきたじゃないですか。
ほら、それとまた次の世界でもこれを参考にして欲しいなって」
「……分かりました」
グサッ
彼は必死に涙を堪えながらラプマルから奪った槍を思いっきり胸を刺してくれた、半端にやると死ななくなる。
彼ができるだけの思いやりなんだろう。
「ンッ……
アスラさん、最後に呼び捨てで呼んでもいいかな」
「いいよ、だってもうアナタは、僕にとって本当に大事な恩人で親友以上なんだから」
「ありがとうアスラ、それと最後に手を握らして。
あなたの暖かさを感じながら死にたいから」
「うん、いいよ。
ごめんマコト、でも次こそは絶対にアナタを救うから」
ガシッ
俺は彼の手を握った。
よかった、彼の苦しみを奪える。
「やっぱりそうすると思ったが、それがどんなことになるのか分かっているのかい」
迷いはない、ただ今の純真な気持ちを彼に伝えた。
「分かっているよラプマル、もうこれしかアスラとこの世界を救う方法がないから」
「何をするんですか、マコト、なぜ僕の再臨の能力を奪ったんですか。
いや、奪う能力、マコトの聖域。
まさか騙したんですか。
アナタはもう既に不死であるリンネになっている」
「もうアスラの旅もここで終わりさ、長い間お疲れさま」
ギュッ
「嫌だ、返してください。
これがないと、もう二度とアナタを助けられないんですよ」
彼も気づいた、そう俺がやったことは彼が魔王さんに貰ったマギアとは異なる能力、再臨の能力を奪ったことだ。
自身が望むことによって対象のマギアや魔力などを奪える強欲聖域。
そう、もうそれができると言うことはもう俺は転生者のマコトではなく、本当に強欲のリンネとなったのだ。
「本当にありがとう、もう俺なんか気にしなくて、アスラは幸せに生きて欲しいな、それが俺の見つけた願いで幸せなんだから。
頑張った人は、ハッピーエンドにならないと」
そして、アスラの刺したところから俺の体はひび割れて、それは目覚めた。
その姿は、巨大な肉食恐竜の姿で赤熱した鋼のような色に、頭から背中にかけての背びれは炎が常に燃え続けて、胸にはワシのような鋭いクチバシが生えており、体全体が葉っぱの模様みたいなものが伸びていた。
そう強欲のリンネへの進化、そしてラプマルが言っていたリンネの中でも最終形態の星盃期になったのだ。
それになった俺は天を仰ぎながら、口を開いて空を終わらせる熱線、ラプマルが空完熱線と呼ばれるものを放出させた。
雲一つも無い青空という意味の蒼穹は無いはずの天井のガラスが割れて、大穴が開いた。
その大穴は瞬きをした瞬間に星を銀河を宇宙を全てを飲み込んだ。
「マコト、君の働きによって、この宇宙全てを君の中に入れることができた。
これによって星盃計画は完成した。
肉体ある生物が魂だけの生物に比べて圧倒的に最果ての進化に至ることが確信できた。
だから、今は君に感謝と祝福をする」
どこからかラプマルの声が聞こえたが、その意味はよく分からなかった。
だけどやることは分かっている、俺は強者のマギアを使って強欲のリンネから元々の人の姿に戻り、空間や時間の概念がない場所から向かうべきところに歩みを進めた。
この声、何度聞いたのだろう。
目を開けるとその声の人は安心したように一息ついた。
「アスラさん、よかった生きていたんだ」
「この程度では死なないから」
空は先ほどまでの混沌とした色彩の面影もなく、雲一つもない蒼穹だった。
樹海も燃え尽きた場所もあったが、一部はあの戦火に耐えたものもいくつかあった。
「それで嫉妬のリンネはどうなったんですか?」
ギュッ
すると彼は倒れている俺に抱きついてきた。
今ではその意味も分かる。
「マコトが勝ったんだよ。
これでもう」
「そうか勝ったんだ。
……アスラさん、俺をこの槍で思いっきり胸を突き刺してください」
「なぜですか、あぁ傷が痛いから耐えられなくて諦めているんだね。
これぐらいの傷なら僕が治すから」
そう言い、彼は回復の魔法を唱えようとしていた。
もう魔力も限界の彼に無理はさせたくはないと思い、俺は彼の杖を握って、首を横に振った。
「いいや違うんだ。
今は何とか人の姿だけど、時間が経てば次こそはもう人には戻れなくなって完全にリンネになると思うから、その前に」
「アナタはリンネにはならない、僕が治すから」
彼は杖に魔力を込めた。
その時、俺とアスラさんの間にどこからか現れたラプマルが俺がソドムの林檎に投げつけた槍を持ってきて話しかけてきた。
「マコトの言っていることは間違いでは無いよアスラ。
彼をリンネから人に押さえ込んでいるのは強者のマギアなんだが。
それ自体を超えるほどにリンネの源である聖域も強くなっている、確実に時間さえ経てばリンネへと進化するだろう」
「いいや、それでももう一つ方法がある」
すると彼に絶望の文字は無かった。
その意味を知っている俺は話した。
「それって、アスラさん自身がリンネへと進化して俺のマギアと聖域を奪ってリンネにさせないようにすることですよね」
彼はそれを聞くと、驚きで口元が震えていた。
「なんで、そのことを知っているの」
「あなたを救いたい人に教えられてね、でもその方法でも俺の強者のマギアによって阻まれるからやらなくていいよ」
「嘘を言っているんだよねマコトは……」
「お願いアスラさん、もうその願いは諦めて」
「でも、僕はマコトさんに何もしていないんですよ」
「フフッ、アスラさんこそ嘘ついちゃだめですよ。
ずっと、俺やマーニさん、世界を救うために頑張ってきたじゃないですか。
ほら、それとまた次の世界でもこれを参考にして欲しいなって」
「……分かりました」
グサッ
彼は必死に涙を堪えながらラプマルから奪った槍を思いっきり胸を刺してくれた、半端にやると死ななくなる。
彼ができるだけの思いやりなんだろう。
「ンッ……
アスラさん、最後に呼び捨てで呼んでもいいかな」
「いいよ、だってもうアナタは、僕にとって本当に大事な恩人で親友以上なんだから」
「ありがとうアスラ、それと最後に手を握らして。
あなたの暖かさを感じながら死にたいから」
「うん、いいよ。
ごめんマコト、でも次こそは絶対にアナタを救うから」
ガシッ
俺は彼の手を握った。
よかった、彼の苦しみを奪える。
「やっぱりそうすると思ったが、それがどんなことになるのか分かっているのかい」
迷いはない、ただ今の純真な気持ちを彼に伝えた。
「分かっているよラプマル、もうこれしかアスラとこの世界を救う方法がないから」
「何をするんですか、マコト、なぜ僕の再臨の能力を奪ったんですか。
いや、奪う能力、マコトの聖域。
まさか騙したんですか。
アナタはもう既に不死であるリンネになっている」
「もうアスラの旅もここで終わりさ、長い間お疲れさま」
ギュッ
「嫌だ、返してください。
これがないと、もう二度とアナタを助けられないんですよ」
彼も気づいた、そう俺がやったことは彼が魔王さんに貰ったマギアとは異なる能力、再臨の能力を奪ったことだ。
自身が望むことによって対象のマギアや魔力などを奪える強欲聖域。
そう、もうそれができると言うことはもう俺は転生者のマコトではなく、本当に強欲のリンネとなったのだ。
「本当にありがとう、もう俺なんか気にしなくて、アスラは幸せに生きて欲しいな、それが俺の見つけた願いで幸せなんだから。
頑張った人は、ハッピーエンドにならないと」
そして、アスラの刺したところから俺の体はひび割れて、それは目覚めた。
その姿は、巨大な肉食恐竜の姿で赤熱した鋼のような色に、頭から背中にかけての背びれは炎が常に燃え続けて、胸にはワシのような鋭いクチバシが生えており、体全体が葉っぱの模様みたいなものが伸びていた。
そう強欲のリンネへの進化、そしてラプマルが言っていたリンネの中でも最終形態の星盃期になったのだ。
それになった俺は天を仰ぎながら、口を開いて空を終わらせる熱線、ラプマルが空完熱線と呼ばれるものを放出させた。
雲一つも無い青空という意味の蒼穹は無いはずの天井のガラスが割れて、大穴が開いた。
その大穴は瞬きをした瞬間に星を銀河を宇宙を全てを飲み込んだ。
「マコト、君の働きによって、この宇宙全てを君の中に入れることができた。
これによって星盃計画は完成した。
肉体ある生物が魂だけの生物に比べて圧倒的に最果ての進化に至ることが確信できた。
だから、今は君に感謝と祝福をする」
どこからかラプマルの声が聞こえたが、その意味はよく分からなかった。
だけどやることは分かっている、俺は強者のマギアを使って強欲のリンネから元々の人の姿に戻り、空間や時間の概念がない場所から向かうべきところに歩みを進めた。