第17話 人質交換／嵐の前
文字数 1,400文字
偵察ロボットが送ってくる映像を見ながら、慧子がため息をついた。
何の仕掛けも見当たらないわね。
ボロ倉庫だからロボットを侵入させる入り口は簡単に見つかったけど、中は、ホントに空っぽだな。
これ、ワナじゃないすかね。敵は、ボクたちが偵察ロボットを使うことを予想した。それで、中を空にしといて、ボクらを油断させようとしてる。
それで、人質交換の本番になったら、「開けてビックリ玉手箱」ってやつか？
そうでしょうね。相手は、私たちを片瀬さんもろとも抹殺するつもりだと思っておいた方が良さそうだわ。
ええ～っ、戦車とか装甲車で乗り込んでくるとか？
それは、いくら何でも大げさだろう。
いいえ、それに近いことを警戒した方がいい。私たちは、ホテルで無人の飛行船から機銃掃射された。あの飛行船はロボット兵器だった。あれを使ったのと片瀬さんを人質にとったのが同じ連中だったら、また、重武装のロボット兵器を持ち出してくる可能性が高い。
ちょっと待ってくれ！ 飛行船に襲われた時は、私まで殺されそうになったんだ。今度も、そうなるって言うのか。
和倉さんって、必要とされてるのかされてないのか、わかんない人っすね。
あんまり好かれてないのは、確かだな。
（心の中で）あたしも、どっちかって言うと、嫌いだよ。
！
…………
…………
もし、ロボット兵器で襲ってきたら、アオイに頑張ってもらいましょう。アオイは飛行船を撃墜した。あなたなら、ロボット兵器に対抗できる。
ちょっと待て。一口にロボット兵器って言っても、色々あんだろうが？ あたしが、どんなロボット兵器に対してもオールマイティに闘える保証がどこにあるんだ。
あら、だったら、アオイは死にたいの？
阿呆ぬかせ！ 生きたいに決まってんだろうが！
だったら、何が出てきても勝つしかないわ。
そうだな。殺されたくなきゃ、やっつけるしかない。任せとけ。その代わり、人間がウジャウジャ出てきたら、慧子たちが相手しろ。
任せてください。ガッチリ援護します。
（心の中で）おおお、なんというやり取りだ。論理が破綻しまくってるじゃないか。いや、そもそも、論理がない。結局、この3人は、開き直ると論理性ゼロになることでは、同じ穴のムジナなんだ。
アオイたちは、クルマを廃倉庫の入り口につけた。倉庫のシャッターはまだ閉まっている。反対側のシャッターが開いて、2台のSUVが入ってくるのをスズメバチ型ドローンのカメラがとらえ、映像を送ってきた。
2台のうち、向かって右側の１台にはドライバーがいない。自動運手してる。
そのクルマにロボット兵器が積まれているか、あるいは、そのクルマそのものがロボット兵器でしょうね。
と思わせて、実は、左側の１台ってこともある。動きを見て即応するしなかい。
そうね。
ところで、コー君はさっきからずっと黙ってるけど、なんか意見はないの？
今さら訊かないでください。そもそも、とっくに、ボクが意見を言える次元を超えてます。
つまり、あんたも一心同体ってことだ。
あはは、そうだよ。（心の中で）消去法的にだけどね……
2台とも止まった。倉庫の中央から10メートルくらいの場所ね。
向こうから片瀬さん、こちらから和倉さんが歩いて行って中間ですれ違うとして、10メートルから20メートルくらいの距離の勝負でしょうか？
そんな感じかしら。
アオイたちの前でシャッターが開き、シャッターを開けた男が手を振ってアオイたちの倉庫に招き入れた。
