腹減った。腹減った。腹減った。食わせろ、まだか、まだか、まだか。

文字数 1,675文字

 しまった。
 自分でUPした動画のバズりぐあいを朝の4時まで確認してたせいで、寝不足になっていたようだ。
 動画がバズったお祝いに、いつもの休日の昼飯より、1・5倍ぐらいの値段の昼飯を食おうとしたら……うとうとしてたようだ……。
 えっと……時間は……おい、正午前にこの店に入ったのに、まだ料理が来てない。
「すいませ〜ん」
 大声をあげても店員は中々気付いてくれない。
「すいませ〜ん、すいませ〜ん、すいませ〜ん」
 俺が大声をあげればあげるほど……何故か周囲の客が変な目で俺を見ていく。
「どうされました?」
「あの……注文したモノはいつ来るの?」
「今、確認してまいります」
「い……いや、ちょっと待って……」
 慌てて駆け出した割に、その店員が戻って来るまで5分近く。
「あ、すいません、今、持って参ります」
「いや、いいよ。1時から用事有るんで……」
「は……でも……折角……」
「いいよッ‼」
「あんなのをモンスタークレーマーって言うんだろ。大変だね。無視しときゃいいんだよ、無視」
 うるせえッ‼
 近くの席に居たヤンキーっぽいカップルの男の方が店員にそう声をかけていた。
 ふざけんなッ‼ それ、お前の勘違いだよッ‼

 2時間半以上の映画を2本続けて観たせいで……もう夕方の7時近くだ。
 最後に食ったのは……昨日の晩飯だ。
 映画館が入ってるショッピングモールのフードコートに向かう。
 うどん屋で肉うどんを注文し……。
「はい、きつねうどんですね……。お値段は……」
 ん?
 何か、値段が違ってないか?
 まぁ、安い方に間違えてくれる分には……。
 あれ? 出されたのは……。
「おい、肉うどん注文した筈だろッ‼」
「あっ……すいません、今、作りなおし……」
「いいよッ‼」

 映画館の最寄り駅の近くの定食屋では、食いたいメニューが売り切れになっていた。
 自宅の最寄り駅のコンビニでは……弁当・おにぎり・サンドイッチほぼ売り切れ。
 続いて、自宅の近くのコンビニも同じく。
 冗談じゃねえ。
 何で、こんな事ばかり起きる?
 いつになったら、俺は飯を食える?
 まぁ、いいや、オンライン・フード・デリバリーを注文し……。
 ……。
 …………。
 ……………………。
 …………………………………………。
 早よ来い。早よ来い。早よ来い。早よ来い。
 ……。
 …………。
 ……………………。
 …………………………………………。
 まだか、まだか、まだか、まだかまだかまだかまだかまだか。
 ……。
 …………。
 ……………………。
 …………………………………………。
 いくら何でも、そろそろ来ても……ん?
 何だ、このステータスが「エラー」って?
 その時、外で、サイレンの音。
 それも、パトカーと救急の両方。
 まさかと思って、外に出る。
 サイレンの音の方に向かい……。
 えっ?
 そこでは、ライトバンに横から激突された原チャリが転がっていて……。
「あ……あの……すいません……」
「どうしました?」
「この原チャリの人、オンライン・フード・デリバリーの……」
「何で知ってんですか?」
「ひょっとしたら……俺のとこに食事を届ける途中の人かも知れない、と思って……」
「ああ、なるほど……でも、警察(わたしら)に言われても、あなたの晩飯はどうしようもないので……」

「あの……先輩」
「どうした?」
「この前の三〇代サラリーマンの孤独死ですけど……鑑識から結果が送られてきたんですが、事件性が有ると判断していいか判んなくて……」
「死因は何だ?」
「栄養失調と、それに伴なう合併症だそうです」
「はぁ? あの仏さんの部屋……金に困ってるように見えなかったぞ。そもそも、あの仏さん何者なんだ?」
「サラリーマンで、副業が動画配信です……。先輩の言う通り、栄養失調になるほど金に困ってた形跡は見付かってません」
「動画配信? どんな動画をやってたんだ」
「関係ないとは思いますけど……少し前にバズってた浮浪者へのイタズラ動画のUP主だったみたいですね」
「どんなイタズラだ?」
「ええっと……浮浪者に飯を奢るフリして、自分だけ先に店の外に出る、ってタチの悪いイタズラですよ」
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