第5話

文字数 615文字

家に帰って、母屋の玄関を開ける。
いつも通り目ではゴミや汚物を捉える、鼻は異臭を感じ、耳は猫の鳴き声を拾う。
いつも通り清潔感がなく、どうしようもない家。
いつからこうなったんだろう、私の力では本当にどうしようもないんだろうか、この状態で生きていた私はもういつも通りの風景で慣れきっていて、一般的な普通とは違うことは理解できても、自分の中では日常で、私が異常なのか、正常ではないのか、他人に私が受け入れてもらえるのか、これからどうするか、これからなんてあるのか、思ったことが頭の中をぐるぐるする。
台所には祖母の部屋と台所を仕切る壁がある、向こう側はどうなっているんだろう。
開けたくない、汚いのはわかる、猫が鳴いている。
猫は何を思って鳴いているのかわからない、食事を求めているのか、助けを求めているのか、子孫を増やそうとしているのか、猫の気持ちが全然わからない。
人間は考えて、私は今考えて不自由だと言いながら自由に家を移動している。
食事の準備も自分でできる、高校に進学すればアルバイトもできるようになる、お金が手に入れば私は自由を手に入れられるんだろうか。
壁の下から溢れている液体は猫の尿なんだろう、私には触ることもできない。
台所と異臭は私の中ではセットなのだ、そしてどうしようもないと思っている自分に嫌悪している私も私なんだから、せめて少し何かをすれば私が満たされるんじゃないかと思い、プレハブに戻り着替える。

父の車の音を聞き外に出た。
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