ナツの瞳に映る世界
文字数 3,902文字
ファインダーを覗いてボタンを押し込む。シャッター音と共に瞬間の世界がフイルムに焼き付いて、手に持ったこの小さなカメラに入り込む。その感覚がナツは好きだった。
「アキくん、ゲットだぜ」
カメラをぶらつかせながらそう言って、ナツはやや目尻を下げ気味に微笑んだ。彼女の正面には体育座りをした男。
「え、撮ったの? 今?」
アキくんと呼ばれたその男は、膝に重ねていた額を剥がして、不意を突かれたような表情でナツを見上げる。しかしその顔はすぐに、あー、もっとイケメンなところを撮ってよ!というチャラけた言葉と共にヘラヘラした笑顔へと変わっていった。
――
何気ない日常。呼吸を繰り返す人々。目に映るそれらの今という瞬間は、もう2度と出会えない奇跡のような気がして、なんだかとても愛しいのだ。だからナツはカメラを持ち歩く。特にナツは人物を撮ることが好きだった。刻々と死へ向かっている人間の命は短い。ナツにとって友人や仲間、家族といる時間は一層愛しいものであって、共に過ごした記憶は手で掬った水のように指の隙間から溢れていってしまいそうな儚いものだった。その儚いリアルをしっかと留めておきたい想いがナツにはあった。
「ナツ……またカメラいじってる」
テーブル越しに座るアキが呆れた調子で話しかける。ナツとアキは劇団の仲間だ。その日、ナツはアキの誘いで稽古場近くの喫茶店に来ていた。ナツはファインダー越しにアキを見つめる。小さい窓に小さく映るアキは白のカップを手に取り黒い珈琲を飲み込んでいる。クラシックが静かに流れる店内は、冷房が適度に効いていて心地よかった。
「あのさ……」
少し間を空けてから……好きだよね。と、アキが少し困ったように目を細めて言う。ナツはシャッターを切ってから、うん。と頷いてカメラをしまって言った。
「今のアキの顔、良かったよ」
ナツの大きな瞳が今度こそ真っ直ぐにアキを見つめたかと思うと、視線はすぐに手元のほうじ茶ラテへ落ちていった。
「アキっていつもさ……。なんだろ、ちょっと嘘っぽいっていうの?」
そう言いながらナツはカップを両手で持って口元へ移動させる。そしてアキを上目遣いで見やった。くりくりの瞳にアキの怪訝な顔が映っている。
「嘘っぽいなんて酷いな、ナッちゃんは」
「ほら、今も。私はアキのいつものヘラヘラした顔よりもそういう顔の方が好きだな」
困った顔をしつつもおどけた様子で抗議するアキに、ナツはいたずらっぽく口角を上げていつもの『お気に入り』を口につけた。
「そんなこと言ったらナツだって……」
いつもポーカーフェイスに軽く微笑むだけで何を考えてるのかよく分かんないよ、と言いかけてアキは続きを飲み込んだ。そんなことを言い合うために今日ナツを誘った訳じゃなかった。
「今日は奢るからさ、ケーキ食べたら?」
アキは話題を変えることにした。メニューを見せてナツに勧める。ここの喫茶店のチョコレートケーキは一時期SNSで話題になった看板メニューってやつだ。ナツは見るからに流行りやお洒落が好きな普通な女の子だ。きっと喜ぶ顔が見れる。そう思った。しかし、
「いい、いらない」
ナツは素っ気なくそう言って、鞄から黒のミンティアを取り出し口に放り込む。
「まだ17時だけどさ、早めに行こうよ」
そう言って席を立った。アキは時計を確認してから、そうだね。と言ってヘラヘラ笑って席を後にした。
外へ出ると、熱気がふたりを包みこんだ。喫茶店の心地よい冷気に慣れた身体に今が夏の季節だということを思い出させる。
――
1時間くらい電車を乗り継ぎ都会の喧騒から離れ、ふたりが向かった先は住宅地広がる街のほとり、川原だった。普段は静かだろうその川原は、しかし、今日は人で賑わっていた。あと1時間もすれば小さな花火大会が行われるからだ。
適当なところにレジャーシートを敷いて、ナツとアキは腰を下ろした。空はちょうど暗くなり初め、世界が紅を差しながら藍に染まりつつある。屋台で何か買ってくると言ってアキが立ち上がった。
いってらっしゃいと手を振ってナツはアキを送り出す。1人で留守番をする手持ち無沙汰さから、ナツは再びカメラをいじりはじめた。
蒸し暑い空気の中で時たま涼しい風が通り抜け、川に生える葦の群れがシャララと音をたてて揺らめいた。徐々に景色の輪郭線がぼやけていく。そんな昼から夜へ移りゆく自然の様子をナツは眩しく感じて、シャッターを切った。
周囲は徐々に薄暗さを増していき、人の混雑も増していった。屋台から漂うソースの香りと人々の賑わいがナツの懐かしい記憶を呼び起こす。
3年前、父と最後に見た花火。父はガンだった。数年闘病して、もう長くないと知らされたとき、家族の思い出を少しでも多く残したいという父の想いから、家族みんなで小さな花火大会へ出掛けた。父の車椅子を押して遠くから見た花火は儚くて、綺麗で、涙が溢れた。
「ただいま」
アキの声がナツを現在へ引き戻す。声に振り返ると両手を焼きそばやらたこ焼きやらで一杯にしたアキが立っていた。ナツは汗を拭う振りをして、いつの間にか溜まった瞳の滴を取り払う。そして、明るい調子で声をかけた。
「あ、アキ! かっこいいポーズしてよ、撮ってあげる!」
カメラをアキに向けるが、アキは構わずナツの隣にどかっと座って戦利品をふたりの間に置く。割り箸が2つあった。
「――?」
いつもならおチャラけてポーズでも取りそうなのに、そんなアキの雰囲気がいつもと違っていてナツは戸惑った。
「どうしたの? アキ?」
ナツは不安そうにアキの顔を窺った。すると、アキはまたへラッとした顔になってナツの持っているカメラを取り上げた。
「これは没収します!」
「――っえ!?」
カメラを取られてナツがキョトンとした表情をしていると、それがおかしかったのかアキはあははと笑った。
「返してよ!」
ナツが怒った調子で言って取り返そうとするが、アキは上手にナツの攻撃をかわして返さない。アキがあんまりにも楽しそうにしているからナツもとうとう顔をくしゃくしゃにして笑ってしまった。
「花火が終わったらね、返してあげる。それまではファインダー越しじゃないリアルな目で花火を見たら良いと思うよ? どうせナツはカメラ離さないんだから……」
アキはそう言ってから、俺のことも……。とつけ足した。ぼそっと囁くその言葉は周囲の喧騒にかき消されてナツまで届かない。
辺りは十分暗くなり、時刻は19時半。パッと空に花が咲いた。
ドーーーーーーン……パラパラパラパラ
少し遅れて低い振動が身体を震わせ、花の散る音が余韻を残す。立派な菊の開花と共に花火大会は始まった。
ナツは父と見たあの日の記憶が重なり、儚い光が眩しくぼやけた。一瞬の瞬きを記憶に焼き付けようと一生懸命にそれを見つめる。
次々に花火が打ち上がったかと思えば、次の装填までに暫しインターバルが挟まる――
アキは空に開花する花よりも、一身にそれを見つめるナツの大きな瞳がキラキラ輝いていることに心を奪われていた。じっと見つめていると、時折目元を拭う仕草。彼女が泣いているのだと気がついた。戸惑う内にインターバルになり、彼女がこちらに勢いよく顔を向ける。アキの心臓がドキンと跳ね上がった。
「綺麗だね!」
破顔してこう言う彼女は、その笑顔を少し恥ずかしそうにして口元に手を当てている。アキはその様子に安心と愛しさが相まって、
「俺はナツの笑顔が好きだな」
思わずそんな言葉が飛び出した。自分が言った言葉に驚いてアキは一瞬言葉に詰まる。が、すぐにヘラッと笑って、
「化粧取れてるよ」
そう言ってごまかした。ナツはキョトンと丸い目を向けたあと、また恥ずかしそうに視線を落として顔を隠す。しかし、
「暗くてよく見えないからオッケー」
そう言ってまたくしゃっと笑った。そんなやり取りをしているところへ、
ドーーーーーーン
再び振動がふたりの身体を震わせる。慌てて見上げると、菊の花は寿命を終えて余韻の光だけが残っていた。
「俺さ、ナツのこと好きなんだ」
アキは打ち上がる光の線を見つめながら、ナツに話しかけた。今言わなきゃもう言えない気がした。やけくそに、花火の音に負けないように言葉を続ける。
「ちょっと猫っぽいところとか、たまに自分勝手で我が儘だけど、自分に厳しくて真っ直ぐ突き進むところは尊敬するし……、しっかりしてるけど見えないとこは手を抜いちゃう大雑把な一面とか、通る声でハキハキ喋るのにたまにへにゃってなるとことか、そんなちょっと抜けてる部分は可愛いと思う」
喋るうちに、しどろもどろになりそうで、区切りの良いところで言葉をやめた。隣に座るナツに顔を向けると、ナツは真っ直ぐアキを見つめていた。ナツの瞳にはアキの姿が映っている。アキは照れ臭くなっていつもの調子でヘラッと笑った。
その表情の変化がナツには眩しく見えて、
「前言撤回。アキのその笑顔も結構好きかも」
視線を手元に落として小さく呟く。その言葉は花火の音に隠れて消えた。ナツは返事の代わりにアキの手に自分の手を重ねる。アキの手はこんなに大きかったんだ、とナツは思った。
夜空に浮かぶ大輪の花々は開いて散ってを繰り返し、刹那の美しさを輝かせていた。
「アキくん、ゲットだぜ」
カメラをぶらつかせながらそう言って、ナツはやや目尻を下げ気味に微笑んだ。彼女の正面には体育座りをした男。
「え、撮ったの? 今?」
アキくんと呼ばれたその男は、膝に重ねていた額を剥がして、不意を突かれたような表情でナツを見上げる。しかしその顔はすぐに、あー、もっとイケメンなところを撮ってよ!というチャラけた言葉と共にヘラヘラした笑顔へと変わっていった。
――
何気ない日常。呼吸を繰り返す人々。目に映るそれらの今という瞬間は、もう2度と出会えない奇跡のような気がして、なんだかとても愛しいのだ。だからナツはカメラを持ち歩く。特にナツは人物を撮ることが好きだった。刻々と死へ向かっている人間の命は短い。ナツにとって友人や仲間、家族といる時間は一層愛しいものであって、共に過ごした記憶は手で掬った水のように指の隙間から溢れていってしまいそうな儚いものだった。その儚いリアルをしっかと留めておきたい想いがナツにはあった。
「ナツ……またカメラいじってる」
テーブル越しに座るアキが呆れた調子で話しかける。ナツとアキは劇団の仲間だ。その日、ナツはアキの誘いで稽古場近くの喫茶店に来ていた。ナツはファインダー越しにアキを見つめる。小さい窓に小さく映るアキは白のカップを手に取り黒い珈琲を飲み込んでいる。クラシックが静かに流れる店内は、冷房が適度に効いていて心地よかった。
「あのさ……」
少し間を空けてから……好きだよね。と、アキが少し困ったように目を細めて言う。ナツはシャッターを切ってから、うん。と頷いてカメラをしまって言った。
「今のアキの顔、良かったよ」
ナツの大きな瞳が今度こそ真っ直ぐにアキを見つめたかと思うと、視線はすぐに手元のほうじ茶ラテへ落ちていった。
「アキっていつもさ……。なんだろ、ちょっと嘘っぽいっていうの?」
そう言いながらナツはカップを両手で持って口元へ移動させる。そしてアキを上目遣いで見やった。くりくりの瞳にアキの怪訝な顔が映っている。
「嘘っぽいなんて酷いな、ナッちゃんは」
「ほら、今も。私はアキのいつものヘラヘラした顔よりもそういう顔の方が好きだな」
困った顔をしつつもおどけた様子で抗議するアキに、ナツはいたずらっぽく口角を上げていつもの『お気に入り』を口につけた。
「そんなこと言ったらナツだって……」
いつもポーカーフェイスに軽く微笑むだけで何を考えてるのかよく分かんないよ、と言いかけてアキは続きを飲み込んだ。そんなことを言い合うために今日ナツを誘った訳じゃなかった。
「今日は奢るからさ、ケーキ食べたら?」
アキは話題を変えることにした。メニューを見せてナツに勧める。ここの喫茶店のチョコレートケーキは一時期SNSで話題になった看板メニューってやつだ。ナツは見るからに流行りやお洒落が好きな普通な女の子だ。きっと喜ぶ顔が見れる。そう思った。しかし、
「いい、いらない」
ナツは素っ気なくそう言って、鞄から黒のミンティアを取り出し口に放り込む。
「まだ17時だけどさ、早めに行こうよ」
そう言って席を立った。アキは時計を確認してから、そうだね。と言ってヘラヘラ笑って席を後にした。
外へ出ると、熱気がふたりを包みこんだ。喫茶店の心地よい冷気に慣れた身体に今が夏の季節だということを思い出させる。
――
1時間くらい電車を乗り継ぎ都会の喧騒から離れ、ふたりが向かった先は住宅地広がる街のほとり、川原だった。普段は静かだろうその川原は、しかし、今日は人で賑わっていた。あと1時間もすれば小さな花火大会が行われるからだ。
適当なところにレジャーシートを敷いて、ナツとアキは腰を下ろした。空はちょうど暗くなり初め、世界が紅を差しながら藍に染まりつつある。屋台で何か買ってくると言ってアキが立ち上がった。
いってらっしゃいと手を振ってナツはアキを送り出す。1人で留守番をする手持ち無沙汰さから、ナツは再びカメラをいじりはじめた。
蒸し暑い空気の中で時たま涼しい風が通り抜け、川に生える葦の群れがシャララと音をたてて揺らめいた。徐々に景色の輪郭線がぼやけていく。そんな昼から夜へ移りゆく自然の様子をナツは眩しく感じて、シャッターを切った。
周囲は徐々に薄暗さを増していき、人の混雑も増していった。屋台から漂うソースの香りと人々の賑わいがナツの懐かしい記憶を呼び起こす。
3年前、父と最後に見た花火。父はガンだった。数年闘病して、もう長くないと知らされたとき、家族の思い出を少しでも多く残したいという父の想いから、家族みんなで小さな花火大会へ出掛けた。父の車椅子を押して遠くから見た花火は儚くて、綺麗で、涙が溢れた。
「ただいま」
アキの声がナツを現在へ引き戻す。声に振り返ると両手を焼きそばやらたこ焼きやらで一杯にしたアキが立っていた。ナツは汗を拭う振りをして、いつの間にか溜まった瞳の滴を取り払う。そして、明るい調子で声をかけた。
「あ、アキ! かっこいいポーズしてよ、撮ってあげる!」
カメラをアキに向けるが、アキは構わずナツの隣にどかっと座って戦利品をふたりの間に置く。割り箸が2つあった。
「――?」
いつもならおチャラけてポーズでも取りそうなのに、そんなアキの雰囲気がいつもと違っていてナツは戸惑った。
「どうしたの? アキ?」
ナツは不安そうにアキの顔を窺った。すると、アキはまたへラッとした顔になってナツの持っているカメラを取り上げた。
「これは没収します!」
「――っえ!?」
カメラを取られてナツがキョトンとした表情をしていると、それがおかしかったのかアキはあははと笑った。
「返してよ!」
ナツが怒った調子で言って取り返そうとするが、アキは上手にナツの攻撃をかわして返さない。アキがあんまりにも楽しそうにしているからナツもとうとう顔をくしゃくしゃにして笑ってしまった。
「花火が終わったらね、返してあげる。それまではファインダー越しじゃないリアルな目で花火を見たら良いと思うよ? どうせナツはカメラ離さないんだから……」
アキはそう言ってから、俺のことも……。とつけ足した。ぼそっと囁くその言葉は周囲の喧騒にかき消されてナツまで届かない。
辺りは十分暗くなり、時刻は19時半。パッと空に花が咲いた。
ドーーーーーーン……パラパラパラパラ
少し遅れて低い振動が身体を震わせ、花の散る音が余韻を残す。立派な菊の開花と共に花火大会は始まった。
ナツは父と見たあの日の記憶が重なり、儚い光が眩しくぼやけた。一瞬の瞬きを記憶に焼き付けようと一生懸命にそれを見つめる。
次々に花火が打ち上がったかと思えば、次の装填までに暫しインターバルが挟まる――
アキは空に開花する花よりも、一身にそれを見つめるナツの大きな瞳がキラキラ輝いていることに心を奪われていた。じっと見つめていると、時折目元を拭う仕草。彼女が泣いているのだと気がついた。戸惑う内にインターバルになり、彼女がこちらに勢いよく顔を向ける。アキの心臓がドキンと跳ね上がった。
「綺麗だね!」
破顔してこう言う彼女は、その笑顔を少し恥ずかしそうにして口元に手を当てている。アキはその様子に安心と愛しさが相まって、
「俺はナツの笑顔が好きだな」
思わずそんな言葉が飛び出した。自分が言った言葉に驚いてアキは一瞬言葉に詰まる。が、すぐにヘラッと笑って、
「化粧取れてるよ」
そう言ってごまかした。ナツはキョトンと丸い目を向けたあと、また恥ずかしそうに視線を落として顔を隠す。しかし、
「暗くてよく見えないからオッケー」
そう言ってまたくしゃっと笑った。そんなやり取りをしているところへ、
ドーーーーーーン
再び振動がふたりの身体を震わせる。慌てて見上げると、菊の花は寿命を終えて余韻の光だけが残っていた。
「俺さ、ナツのこと好きなんだ」
アキは打ち上がる光の線を見つめながら、ナツに話しかけた。今言わなきゃもう言えない気がした。やけくそに、花火の音に負けないように言葉を続ける。
「ちょっと猫っぽいところとか、たまに自分勝手で我が儘だけど、自分に厳しくて真っ直ぐ突き進むところは尊敬するし……、しっかりしてるけど見えないとこは手を抜いちゃう大雑把な一面とか、通る声でハキハキ喋るのにたまにへにゃってなるとことか、そんなちょっと抜けてる部分は可愛いと思う」
喋るうちに、しどろもどろになりそうで、区切りの良いところで言葉をやめた。隣に座るナツに顔を向けると、ナツは真っ直ぐアキを見つめていた。ナツの瞳にはアキの姿が映っている。アキは照れ臭くなっていつもの調子でヘラッと笑った。
その表情の変化がナツには眩しく見えて、
「前言撤回。アキのその笑顔も結構好きかも」
視線を手元に落として小さく呟く。その言葉は花火の音に隠れて消えた。ナツは返事の代わりにアキの手に自分の手を重ねる。アキの手はこんなに大きかったんだ、とナツは思った。
夜空に浮かぶ大輪の花々は開いて散ってを繰り返し、刹那の美しさを輝かせていた。