第13話  だんじり祭り 後半 7

エピソード文字数 3,187文字

ったく。ちょっと見かけたくらいで知り合いと名乗るとはいい度胸してるじゃねーか
 将哉が消えた後でも龍子さんの怒りは収まらない。
今度あいつ見かけたら、問答無用でタコ殴りにしていい?  いいですよね?
 龍子さんは祈るポーズを取りながら、すっげー円らな瞳で龍子さんがお願いしてくると、俺もノーとは言えず、分かりましたと返事した。
よしっ! 楓蓮さんからの大義名分は頂いた。遠慮なくやらせてもらいますよ

 モチベーションが回復した龍子さんは、ノリノリでシャドーボクシングをしだすのであった。




 そんな時、遠くから「龍姉」と聞こえてきた。


 こりゃ虎ちゃんだと思ったので、そちらに向いてみると、さっき別れたヴァルハラチームを引き連れて登場する。



 ちゃんと王二朗くんもいるので、少しばかり笑顔になっちまう。

 君は本当にメンバー入りしちまったな。

なんだお前。やる気の無いストーカー共はどうした?

それが、急にバラバラになって帰っちまってよ。

こっちも分散して追いかけようとしたけど……その辺ポリがいっぱいいててさ

 そっかそっか。何も無かったのならそれでいいじゃないか。

 俺も龍子さんも納得していると、鼻がこんな事を言う。

ほら。だんじり祭りしてたから、ハメ外して色々する奴らがいるんす。

だから地元の警察も見回りが厳しいんですよね。

 なるほどな。


 この時間でも、薄暗いこの公園を通り過ぎていく人がいるくらいだからな。たまに大声を上げるおっさんとかもいたし、ハッピ着た酔っ払いも見かけたからな。


 

 そんな時、王二朗くんが手を上げながら「質問いいっすか?」と遠慮がちに聞いてくる。

 誰も返事しない中、俺が「いいよ」と許可をした。


 というか。別に勝手に喋ってくれていいのに。

さっき。この辺に黒のゼルシオ停まってませんでした?
 なんだそりゃ。そう思ったが、龍子さんが答えてくれる。
ああ、変なイキリ野郎が楓蓮さんをナンパしようとしてきてな。思わず車ごと没収しようと思ったぜ
やはり……

 それを聞いた王二朗くんは急に神妙な面持ちとなり、顎に手をやり考えているようだ。


 さっきのナンパーマンは竜王さんの兄貴で間違い無さそうだな。そのリアクションが物語ってるぜ。

で? お前。なんか知ってんのか?
 中々答えようとしない王二朗くんだったが、俺と目を合わせるなり観念したように口を開いた。
そいつ。水色の髪でしたか? もしそうなら。相当ヤバイです。極悪な野郎ですよ
 まぁ十股掛けてるようなナンパーマンだからな。
おい王二朗。詳しく話せ
分かってます

 そこまで言うのなら、龍子さんやチームのメンバーにも話さなきゃならないぞ。 


  ※


 龍子さんが公園の中に入っていくと、みんなその後を付いていく。そしてベンチに座り込むと、隣に座ってくださいと言われる。

 

 腕組をしだした龍子さん。俺達の前でしゃがみこんだ王二朗くんだが……

ちょ! こ、この角度はダメだ。山田一家のねーちゃんの真っ黒パンツモロ見えっす! しかも楓蓮さんまで、際どい高さであり……何とも如何わしいPゾーンなんだ
 丁度その時、王二朗くんの目線に気が付いた。
え? 楓蓮さん? それはトランクス? いや違うかもしれん。あれはスパッツ? な、何なんだ一体

 あぁ~~そこからは見えるかもしれんな。トランクスが。

 

 外で入れ替わりした場合、下着までは替えないからな。そうでなくとも、俺が女モノのショーツは履いたりしないけど。


 ちなみにトランクスは万能下着であり、楓蓮の大きい尻でも楽勝に収まるので重宝している。


 これがブリーフだったりすると、蓮から楓蓮に入れ替わった時に、小さすぎて悶えてしまい、ハサミでブリーフを切らないといけない事態になってしまうからな。

おいこら。何処見てんだよ
はっ! すびばせん。あの。立ってお話聞いてもよろしいでしょうか?

 いかにも不満顔を見せる龍子さんに、俺は「いいよ」と返した。


 別に王二朗くんはスケベーではないと思うんだよな。そういうイベントから懸命に逃げてる気がするんだ。

播磨王二朗っつったな? お前……竜王って女の友達なんだろ?

そんなヤツが何で……こんなチームに入ろうとしてんだよ。


まず、そこから話せ

 おっと。龍子さんがストレートに逝きやがった。

何故それを……


いあ、どうせ今から説明するんだから、別にいい。

え? 龍姉ぇ? マジかよ!
 虎ちゃんも知らなかったらしい。まぁ知ってたらチームなんかに勧誘はしないだろうからな。
おいゴーレム! てめぇはヴァルハラチームのスパイだったのかよ!
やめろ虎! まずはこいつから話を聞け
そうです虎ちゃん。詳しく聞きましょう
 掴み掛かる虎ちゃんを宥めると、王二朗くんは再び一礼してから……経緯を話してくれた。
さっきの男の話よりも、まずは俺が何者かを説明させてください
 その内容は、蓮で聞いたのと変わらなかった。 竜王さんとの関係から、縁を切ったことや、彼女が俺を狙っているのも白状するのだった。
野郎……マジで楓蓮さんを狙ってるってのか
俺達の女神を……許せねぇ。
 虎ちゃんだけでなく、メンバーまでエキサイトしてくると、冷静に聞いているのは龍子さんだけだった

俺はあの馬鹿兄妹を止めるつもりです。

これ以上人様に迷惑掛けないよう、どんな手を使ってでも叩き潰してやる

 王二朗くんが言うと、マジで怖いんだよな。

 でかい拳を握り締めるその姿だけで、大抵の男がビビってしまうぞ。

こんなこと、ベラベラ喋るなんて……傍から見れば友達だったヤツを売ってるように聞こえるかも知れませんが、俺は別にどう思われようが構わん。


俺があいつを……やらなきゃならない!

 熱の入った台詞に、心を打たれる。


 王二朗くんは自分がどう思われようと……竜王さんを止める覚悟なのだ。その心意気は、その場にいる人間全てが納得するのに十分だった


 そして王二朗くんはその場に座り込むと……地面に手を付け、そのまま前かがみにお辞儀するのだ。


 その態勢は土下座と言った方が正しい。

ちょっと。王二朗くん
 思わず駆け寄ろうとするが、まさかの龍子さんに手を引っ張られた。
なんで? そこまでやらなくていいから

 思わず反論したが、手首を持って離さない龍子さんは……

 今までにない鋭い目つきで俺を睨む。


 こんな龍子さんは初めてだった。

こいつなりの覚悟ですよ。

話を聞いてると、ある意味内通者だと思われてもしょうがない立場だからな

 王二朗くん……

お前の気持ちは分かった。もういいから立ち上がれ。

あとな……このチームでは楓蓮さんの言葉は絶対だ。だから言う通りにしろ

 立ち上がる王二朗くんは、膝や手に付いた砂も振り払わず、頭だけは下げていた。

お前はお前で、竜王兄妹をボコる気だろうが……

こっちも楓蓮さんがターゲットにされてるんだ。俺達に協力しろ

はいっ!

 怒号のような返事をする王二朗くんに、チームの奴らがビビっちまってやがる。


 そんな中、王二朗くんに付いた砂を払っていると、後ろから龍子さんがこんな事を言う。

楓蓮さん。こーいう男くっさいヤツ。好きっすか?

 急にそんなことを言う龍子さんに向き直ると、どこかしら笑顔な彼女に「うん」と頷いた。


 あ、タイプとかそういうのじゃなくて、人間的にとても好感が持てるという意味だと、そう捉えたからだ。

俺もね。こんな男は大好きでしてね

嘘か本当かなんて……目を見れば分かります

うん……私もそう思う

 満更でもない顔をした龍子さんに、こちらも笑顔になる。

 やっぱり彼女とは、好みも似ているよな。

あ、お前。勘違いすんなよ。そーいう意味じゃねーから
分かってます。身の程は弁えてるつもりっす
 終始大人しい王二朗くん。俺はどちらかといえばゴリラネタでも喋って欲しいんだけどな。まぁこの場じゃ言えないか。
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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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