鉄格子に囲まれた病院

文字数 755文字

僅かに窓があるもののここはそもそも鉄格子で囲われた精神病棟でありました。今は閉鎖病棟という言葉も聞くけれどおそらくそれに該当するかもしれません。ところがここはさらにその病棟の急性期の患者が集められるところで、ハレは保護室という狭い長方形型の鉄骨鉄筋コンクリートの無機質な便器がポツンとむき出しであるだけの部屋に入れられたのでした。扉は8センチメートルくらいの厚い鉄でできています。灰色一色の中、人を小バカにしたように配膳の時だけ保育園で使用するようなビニール素材の中身が発泡スチロールの粒々のようなお膳が出てきます。ハレはお膳を蹴っ飛ばしてしまいました。それはハレにあって意図的でもありました。その時ハレは誰一人として信用ならぬ人物に思えました。親族に医師が多かったため、医師に対しては、特に自分の主治医にはリスペクトする感情がまだ残っていました。ただ医師もハレの主治医になって間もなかったため、どのようにハレを扱っていいか分かりませんでした。初め、部屋の中にはもちろん寝るためのベッドがありましたがハレとしては疑ぐり深くベッドが壊れていないか点検をしていたら、逆に看護師から「ベッドを壊そうとしている!」と言われ片付けられてしまいました。そして布団もコンクリの上に直に敷かれました。
これはまだ序章でしかありません。ハレの苦しみはいたずらに襲いかかってくるのです。
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登場人物紹介

ハレは30代の生まれた時から洗礼を授けられたクリスチャン。5歳年下の夫も結婚後しばらく経ってから受洗。ハレは子供が生まれたら司祭になったらいいな、と夢見ている。ところが実際にはそんな簡単に恵まれるわけでもなく教会コミュニティで奮闘するハレの姿を追っていく。

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