第1話

文字数 829文字

 新型コロナウイルス感染がなかなか終息せず、マスクをほぼ常用して越す3度目の冬を迎えた。これは私の感想だが、マスクをして越す冬は暖かく感じる。
 マスクを着用することの利点は2つある。ひとつは鼻や喉をウイルスの侵入から守り、接触感染などの危険を軽減するという感染予防だ。もう一つはマスクには、呼気から出た水分がマスクの内側の湿度や温度を保ち、気道を潤った状態にする加湿、保温効果があることだ。(*多賀谷悦子 「感染症対策は『のど・鼻の加湿』がポイント!~体の防御機能を高める“湿活”のすすめ~」 News Letter:2020; 12)
 そんな中で、先日、マスクをしていて初めての経験をした。
 日本海に面した山形県庄内町の冬は厳しい。「雪は地面から降る」と言われる地吹雪は冬の風物詩だが、そんな悠長なことでは済まされない。とにかく風が強い。
 昨年(2022年)12月13~14日にかけて庄内地方は、この冬、最初に迎える最大級の寒波に襲われた。庄内-羽田便の飛行機は欠航、羽越本線も予定運休になった。雪の混じった最大瞬間風速35mの風が吹き荒れた。
 勤務を終わって駐車場で車にこびり付いた凍った雪を削り落としていた。
 その時だった。唸りをあげた強風が私の右後ろ45度の方角から吹き付けてきた。右頬と不識布マスクの隙間に強風が入った。マスクが右頬から浮いた。さらにちょうど追い風に帆を張った状態になり、マスク全体が顔から浮き上がった。耳に(かか)ったマスクのゴムが強風でビヨンビヨンビヨンと伸び縮みし、顔の前でマスクがパカパカパカパカとなった。眼鏡の鼻当てがマスクの上縁に引っ掛かり眼鏡もパカパカパカと揺れた。
 「あゎゎゎゎゎ…」
 (はた)から見れば実にお間抜けな光景だったと思う。お終い。

 写真は 2018年1月27日の庄内町での風景だ。

 地吹雪で先が見えず、私は交差点を真っ直ぐに進む勇気がなく、つい右折してしまった。
 根性ねえの~、ったく。

 んだ。
(2022年12月)
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