ワルプルギスの深読み禁止

文字数 2,287文字

(聞こえますか……いまあなたの心に直接話しかけています……。

 このままではEpubの書き方指南本になってしまいます……。

 自動化です、自動化をするのです……。)

「はっ!?」
「どうしたの?」
「あ、ああ。みんなが寝静まった夜、窓から外を見ていたら、とてもすごいものを見た気がしたんだ」
あらためて繰り返すが、ここは物語と時の(はざま)の亜空間。

夜なのか昼なのかも判別できなければ窓もない気もする。彼はどの窓から外をみたのだろうか。そして微妙に変えてあっても歌詞の引用は亜空間でも危険な行為だ。こんなことするから新人賞逃すんだよまったく。。。

「なにかこう、自動的にぐるぐるっとらせん的で暴力的な何かの力が……」
「まさか……、伝説の……」

「ワルプルギスの夜!?」

「またそうやって微妙に危険な脱線をするんじゃないっ!」
今回よりこの亜空間に常備されたハリセンでしぱたーん!と二人の頭をしばく栞理である。
(いたたたー)


「もー、最初に言い出したのはお兄さんですのにー」

「兄はいいんだ。何か見たんだろうからな」
「差別だわー。差別はんたーい!」
「ふん、差別なものか。区別だ区別。」
「ところで、さきほどからずっとSigilさんにお話をコピペしていたのですけど、これ、量があるとかなり大変ですわね」
「そうなんだ、トークメーカーのお話をそのままコピーとは言っても、一言ごとにコピーしなくてはいけないし、顔画像をその都度保存して、Sigilに読み込ませて……とやっていたらかなり面倒だし、時間ばかりかかってしまって退屈な作業になってしまうな。

 二人ほど遊んでばかりいる子もいるしね」

「遊び心は大切ですよ!」
「ですです!」
きっ! とハリセンをつかむ栞理。

二人の遊び担当はきゃーきゃーいって逃げまどっている。


一方、話題から離れていた栞理の兄であるが、彼はハリセンとともにこの亜空間にどこからともなく(おそらくはこのあたりから)出現した本をぱらぱらとめくっていた。

「面倒、退屈、自動化……はっ! そうかっ!」
「なにかわかりましたの?」
「栞理、それにれいか君、すこしここを任せてしまっていいかな?」
「はい?」
「なんですの?」
「ちょっとね、このアイデアがただしければ……。

 すこしだけ時間が欲しい。

 その間、君たちはPythonというプログラム言語をパソコンにインストールしていてくれ」

「Python、ですか?」
「モンティ・パイソン! ギャグの古典ですね!」
「ちがーう!」
と、ハリセンを持ち上げる栞理を押しとどめる兄。
「いや、ちがわないよ。実はこのPythonはそのイギリスのテレビ番組の名前からとった。と開発者がいっているそうだ」
「そ、そうなんですか……」
「ですです、えっへん!」
「と言っても内容はほぼ関係ないんだけれどもね」
「ガーン><」
「それじゃ、僕が戻るまでのあいだ、 Pythonのバージョン3以上をみなのパソコンにインストールしておいてほしい。

方法は

https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/python3/install.html

このあたりを参考にしてくれ。

このページの最初に書いてあるようにAnacondaといういろいろセットされたパッケージ製品(無料)を使うのが楽かもしれないね。ただし大きいからダウンロードには時間がかかるよ」

「わ、わかりました……」
「なあに、そんなには待たせないと思う。じゃ、ちょっと行ってくるよ」
そう言って彼は先ほどの本とノートパソコンを手に、亜空間別室の扉を開けていってしまった。


その部屋の扉には『精神と時の部屋』と書かれている。舞台設定にまで危険要素を持ち込む著者はどうかとおもうがここで文句をいっても仕方がない。

「あの、ちょっと気になったんですけれど……」
「ん? どうしたんだい?」
「Anacondaって蛇さんのことですよね」
「アナコンダ、そうだな、アミメニシキヘビのことだね」
「そのページをみていたら、どうやら人工知能関係でよくつかわれているツールも一緒にインストールできるようなことが書かれているんです」
「そのようだね。どうもこのPythonは人工知能の研究にもよく利用されているみたいだよ」
「モンティ・パイソンはよく知りませんけど、パイソンも蛇でしょう?

 そして、人工知能から知恵を連想してしまって……」

「うん?」
「わたくしの使っているパソコン、Macなので、リンゴのマークが背中に描いてあるんです」
「Apple社の製品だものね。

 (はっ!)

 リンゴ、知恵の実、蛇……。もしかして……」

「深読みーーーー! 厳禁ーーーー!!」
ここで突然ペンギンの帽子をかぶって立ち上がるひとみ。

亜空間はきらびやかなイリュージョン世界に変化し……と言いたいところだが、そこまで脱線してしまうと本作に帰ってこれない恐れがあるので、この先の深読みは『もしも敬虔な女子高生が〈神は死んだ〉のニーチェ作『ツァラトゥストラ』を読んだなら』本編へ譲り、この枠では素直にPythonをインストールして先にすすめることにしよう。

「そ、そうか、ここでさらに脱線するわけにもいかないな。

 まあそれほど心配しないでもいいんじゃないかな。

 とりあえず、兄を信じて、このPythonとやらをインストールしてみよう。

 大丈夫、急にパソコンが壊れるようなことはないと思う」

「何が起きても一蓮托生!」
「呉越同舟!」
「運命の果実を一緒にたべよう! ですわ」
わかっているのかいないのか。

とりあえず前向きに対処することにして、Pythonのダウンロードをはじめる面々であった。

<つづく>
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登場人物紹介

コンピュータのことならお任せくださいの便利なイケメン

わからない子代表

まあわかる代表

わからなくてもでしゃばる代表

わたしはお茶くみですと言いながら実は権力者だったりするかもしれない人

著者のひと

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