第48話 流罪

文字数 488文字

 こうしてリシャールの冤罪事件は決着した。ジュリオから渡された手紙を持ち、彼が王宮に姿を現した時、王妃は自分が賭けに負けたと悟った。彼女はひとことも弁解せず、罪を認めた。
 その間に病に伏せていた国王が崩御した。宮廷で起きた事件──妻である王妃と息子であるリシャールの確執は知らされないまま、王は安らかに逝った。
 そしてリシャールは次期国王の座が決定したのである。

 陰謀が露見し、失脚した王妃はガンディアの領地であるクルス島へ流罪となった。
 とはいえ、島の気候は温暖で、そこに小さな館を与えられ、侍女たちにかしずかれて静かな生活が送れた。アレンの訪問も許された。
 リシャールの寛大な処遇であった。長い間、自分の母の面影に苦しめられてきたクリスティナを、憐憫こそ覚え、憎む気持ちになれなかった。
 そもそも最初に彼女を拒絶したのは自分なのだ。
 ──僕の母上はひとりだけだ!
 初めて会った彼女に幼い自分は言い放った。まだ年端のゆかぬ子供の言葉とはいえ、クリスティナはどれほど傷ついただろう。
 自分が彼女を受け入れていたら、悲劇は起こらずに済んだだろうか。今となっては詮無い問いだった。




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登場人物紹介

梨華(りか)


強く美しい乙女に成長した、水軍の長の娘。十八歳。武術の才は母譲り。

母の跡を継いで、将来は水軍の長になるのが目標。

リシャール


ガンディア国の第1王子。梨華に一目惚れしてプロポーズする。

美形で紳士だが、ややヘタレ。

勇利(ゆうり)


梨華の双子の兄。理知的で穏やかな少年。勝気な妹に振り回されること多し。

梨奈(りな)


梨華と勇利の9つ下の愛らしい妹。家族に溺愛されている末っ子。

阿梨(あり)


梨華が敬愛する母。羅紗国の王女にして水軍の美しき長。

しなやかな知略と一歩も引かない剛毅さを合わせ持つ。

ジュリオ


リシャールの幼馴染で親友。リシャールが巻き込まれた事件の鍵を握る。

クリスティナ


ガンディア国の現王妃。リシャールの継母。

自分の息子アレンを王位につけるべく陰謀をめぐらせる。

エレナ


ジュリオの妹。ひそかにリシャールを慕う病弱な少女。

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