「ブチ猫のミッキー」との出会い

文字数 1,316文字

 前の話の白黒の、タキシード猫のミッキーの話の続きではありません。
 これはそれよりずっと前の話。
 私が、ブチ猫のミッキーと出会ったときの話です。
 そして、猫視点で書いた「ブチ猫のミッキー」というファンタジーは、別作品として掲載しています。


 で、これからはそのぶち猫のミッキーの話です。
 それは私がずいぶん以前に勤めていた病院でのこと。
 病院の周りを縄張りにする、大きくて強そうで、とても目付きの悪いブチ猫がいました。

 とても警戒心が強く、近付くと逃げてしまう。
 病院の人たちにもとても評判が悪く、みんな「怖い怖い」とか、「いったいどこの猫だろう?」とか、ひそひそと言っていたのです。
 
 だけど猫好きで物好きの私は、その仔に出会う度にいつも「みゃ~お♪」と声を掛けていました。
 そういう私の奇行を、病院の人たちはどう見ていたのでしょう?

 それで、最初のうちは声を掛けても無視してさっと逃げていたのですが、だんだんと私の呼びかけに反応するようになります。

 つまりそういう風に、会うたびに「みゃーお♪」と言っていると、その仔が口を動かしたり、しっぽを動かしたりしてリアクションを始めたのです。

 そしていつしか私は、その仔に「ミッキー」と名付けました。
 ちなみにミッキーという名は、ただ単に、白と黒がミッキーマウスみたいだったからという安直な理由からです。


 そんなミッキーとの日々が続き、それからしばらくして、その夜、病院で当直をしていると、病院の敷地内で猫のケンカの大声が聞こえてきました。

 わ~~わ~~という、物凄い声です。
 近所迷惑なほど、その声は響き渡っていました。

 それで私が行ってみると、そのミッキーと、それから別の長毛の猫が、う~う~と唸ってにらみ合っていました。
 ケンカでわ~~~~わ~~~~と、ひと暴れして、そして小康状態だったようです。

 そこで私はどうしたものかと思いましたが、それからとっさに、その長毛の猫の方に向かって威嚇するような姿勢を取り、私の十八番の猫真似で、その猫を威嚇するように、ひときわ大声で叫びました。

 夜中にそんな大声! 
 なんてはた迷惑な!

 いやいや、その前にプロの猫たちが大声でケンカをしていたのだから…
 そして私はあくまでも、そのケンカを止めさせるために、やむを得ず大声でそのケンカ相手の猫を威嚇したのだから、と、一応言い訳しておきます。


 それで、そのかいあって、けんか相手の猫は速攻で退散しました。
 それから私は、まだそこにいたミッキーに向かって、いつも私が言っていたように「みゃ~お♪」と言いました。

 そしたらミッキーは、それまで見せたこともないような、とても優しい顔になり、猫語で一言二言言ってから、私に体をこすりつけました。

 このいきさつ以来、私はだんだんと、ミッキーと友達になっていくのです。

  野良猫のミッキー



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