第17話 音楽療法?

文字数 1,332文字

 朝のFMで、「記憶喪失になった人が、ある日ラジオから流れてきた甲斐バンドの『翼あるもの』を聞いて、記憶を取り戻した」話をしていた。認知症にも音楽は効果があって、睡眠にも良い、という内容だった。
 確かに、好きな音楽を聴くと、何かヤル気になる時がある。昨日も、なぜかブルース・スプリングスティーンの「裏通り」が頭から離れず、「バックストリート、バックストリート」言いながら(口の中で小声で)銭湯までの片道30分、歩き続けた。ロックンロールは、特に何かヤル気にさせる。

 商店街で、ジョン・レノンの「ハッピークリスマス」が流れていると、気持ちが落ち着いた。力が抜けて、ああもうクリスマスか、そしてハッピーニューイヤーだ、と、コロナ禍の町の中、穏やかな気持ちで歩いた。
 ばんばひろふみが「ぼくのラジオ番組で、何もクリスマスシーズンだけクリスマスソングをかけなくてもいいんじゃないかと思って、真夏にかけたことがあるんですけど、局のお偉い方から怒られまして…」と話していたが、季節に関わらずイイ曲は流してほしいと思う。「ハッピークリスマス」なんて、歌詞もメロディーも最高ではないか。

 大滝詠一の曲を聴くと、全身が脱力する感覚を覚える。「クリスマス音頭」など、笑えるし、夏に聴いても、師走の町の雰囲気が懐かしく思い出され、郷愁感に誘われる。ギィーッ、バタン、と部屋のドアの開閉音から始まって、カレンダーをビリッと破く音から始まる「ロックンロールお年玉」も、いかにも一年の始まりという感じで、(ああもう半年も過ぎたんだ)と、しんみりする。

 ところで、今月のFMーCOCOLO(大阪の放送局)はユーミンの特集で、一日中よくユーミンがかかる。ベストアルバムが出たそうで、しかし本人は「自分にとってはぜんぶベストなので、選曲が難しかった」とか。
 中学生のリスナーからのリクエストもあったりして、年代を問わず、やはりユーミンは広く聴かれ続けるミュージシャンなんだなと思う。「恋人がサンタクロース」がよくかかったりする。

 ふいに中島みゆきの「空と君との間には」が流れると、あの「家なき子」を思い出してしまう。「同情するならカネをくれ」のドラマだ。みゆきさんとユーミンは「ニューミュージック」(古いネ)の中核のような人たちで、懐かしい。
 オフコースの「さよなら」も、そろそろふさわしい季節。紙ふうせんの「冬が来る前に」は、もう終わってしまったか。「チェリッシュ」とかいって、夫婦のデュエットチーム(?)もいた気がするが、今もそういう歌い手さんはいるのだろうか。

 美空ひばりを聞くと、特養のおばあちゃん達を思い出す。DVDがあって、よくかけていた。「ひばりちゃんも、若かったねえ」とかいうおばあちゃんもいて、何となくフロア全体が、あの天才歌手の歌声に優しく包まれる感じがした。一日、施設の中にいるのだから、もっと好きな音楽を聴かせてあげたかった。
 童謡(ゆきやこんことか)が大好きなおじいちゃんがいて、よく一緒に歌ったものだった。みんなで歌っていると、「仕事しなさい」みたいに、職員からよくイヤな顔で見られたものだった…
 イイ思い出もワルイ思い出も、音楽は想起させるけど、やっぱり、音楽はイイ。
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